MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-06-01 to 1 month

「空の怪物アグイー」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家7短編集“空の怪物アグイー”生まれた畸形児を間引き殺した事で幻覚や怪物に怯懦する男が破滅する様を描く大江の実体験(障害を持つ長男の光氏)を元に書かれた初の作品長編「個人的な体験」以後もこの問題に真摯に向き合い生涯の…

「燃え上がる緑の木 第3部 大いなる日に」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家新ギー兄さんの癲癇に幻滅し教会を去ったサッチャンが帰還した2人は農場経営を手放すが信者巡礼と左翼の再襲撃は収まらず過激化教会は幹部離散で分裂し解散宗教の勃興〜組織化〜破滅大いなる日に主の復活を!Rejoice!

「燃え上がる緑の木 第2部 揺れ動く(ヴァシレーション)」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家”燃え上がる緑の木教会”結成父”総領事”の死転換で両性具有化したサッチャンへの射精当初こそ疑われた”治癒の奇跡”が現実となり新ギー兄さんの信者も急増燃えろ肉のペニス!浸れ魂のヴァギナ!Rejoice!

「燃え上がる緑の木 第1部 “救い主”が殴られるまで」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“神は死んだ”時代の大江版キリスト伝「懐かしい年への手紙」の先代ギー兄さん死後オーバー(大婆)から次期後継指名を受けた新ギー兄さんの受難劇“世なき救い主は救世主たりえん!”殴れ!嬲れ!嘆け!Rejoice!

「懐かしい年への手紙」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家半自伝の書簡体(手紙)小説“永遠の夢の時=懐かしい年”作家K(=大江=イェーツ傾倒)ギー兄さん(=義兄=ダンテ研究者=K分身=千里眼=口頭伝承後継)自他の批評と作風再現で全作品を振り返る集大成<地獄篇> &<煉獄篇>を廻る”大江版ダン…

「新年の挨拶」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家常に最新の情報を得て作品に投影していく作家の世紀末エッセイノーベル賞受賞後に各界著名人や読者と交わす新年の”炉辺談話”反原発やノーベル賞受賞の裏側書けなくなったスランプ時代家族と自分言葉と行動芸樹と音楽障害を持…

「静かな生活」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家鬱で母を連れて海外で療養する大作家K(=大江)兄(オーちゃん)と妹(マーちゃん)だけで介護する障害者の長男(イーヨー) 長男の痴漢冤罪や弱者迫害に憤る兄妹だが水泳・音楽・親戚の愛で絆を深め徐々に恢復していく妹目線で描く大…

「持続する志」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家30代の網羅的エッセイ集戦争体験沖縄占領〜返還広島訪問日本文豪文学論出世作「万延元年のフットボール」誕生秘話半分は時事問題に割かれておりノーベル賞受賞理由の”現代人の苦悩”を常に分析していたことが伝わる後世の作品…

「河馬に噛まれる」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家8連作短編集浅間山荘事件がモデルベトナム反戦運動の最中ウガンダで河馬に噛まれた連合赤軍左翼の元革命党青年その仲間割れの行動原理を河馬の生態に絡めて迫る意欲作青年の家族と大江の家族が交錯するエッセイ風私小説過剰資…

「死者の奢り・飼育」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家6短編集“死者の奢り”処女作芥川賞候補死者と生者の対比(死体処理)“他人の足”脊髄カリエス“飼育”芥川賞受賞作(23才)子供による黒人捕虜の飼育“不意の啞”米兵vs通訳vs村長“人間の羊”占領下の人権剥奪“戦いの今日”欧米人と街娼の…

「伝える言葉プラス」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家大江さんの嫌いな言葉は「〇〇力」/「美しい国」/「凛とした」等だそうで強く共感新聞連載のエッセイながら時事中心で深く考えさせる内容教育法改正(安倍政権の”改悪”と断言)憲法9条の会沖縄占領状態からの脱却長男光さん(作…

「壊れものとしての人間」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家5エッセイ集エッセイの始祖モンテーニュ曰く”随筆(エセー)は古典引用と自分との対話”だから大江文学は引用が多いレヴィナス曰く”人間は壊れもの”西洋古典に脈する矜持を一貫し”作家の社会正義”を自問読書と執筆で心奥の闇を掘…

「大江健三郎 作家自身を語る」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“最後の小説”を書き終えた著者が小説全作を初期から振り返る聞き役は15年も大江の文芸記者を務め文学論出版&全集監修も務めた尾崎真理子鮮烈な処女作と神技的初期短編徐々に”われら”や”個人的”が題名に付く想像力を駆使した私…

大江健三郎「”おかしな2人組”3部作」総書評

虚実ない混ぜで語る壮大な大江家族史自作・古典・批判の引用と語り直しで彩る”晩年の仕事”幻の”同時代巨匠ゲーム”vs三島由紀夫エリオット光さん伊丹十三世界の著名作家老いと若さ自己批評思えば誰かと常に”おかしな2人組”を組んだ大江作家生活50年の集大成

「さようなら 私の本よ!」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“おかしな2人組”3部作3章“老人の知恵より愚行を聞け!”病床での世界的建築家との再会“老人の愚行”で青年とテロ画策(初期作想起)ミシマ問題ロバンソン小説詩人ブレイク老たる日本の会ナボコフが唆す終幕喜劇“さようなら私の本…

「憂い顔の童子」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“おかしな2人組”3部作2章古義人研究者と共に故郷の森に帰る古義人“憂い顔の童子”セルバンテス義兄に続く母の死と群がるマスコミから逃れ”老境の探検”に専念する古義人“最後の小説”に向かい「ドン・キホーテ」的な滑稽譚の果て…

「取り替え子(チェンジリング)」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“おかしな2人組”3部作1章世界的作家の長江古義人(我思う=大江)に届く美形俳優・映画監督の義兄の(=伊丹十三)自殺の訃報ヤクザ襲来米兵との悶着多感な青年期取り替え子伝承性と愛の記録虚実混交で迫る義兄追悼と大江文学史概観

「”自分の木”の下で」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家読書と執筆を毎日の習慣とする作家による人生論“子供と木と神話と痛み”五感の滾る表現による“人類共通の課題を導かんとする森林神話の形成”四国の辺境で生まれた世界文学灯台下ならぬ“自分の木の下”の暗がりと光を絶えず感受…

「キルプの軍団」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家刑事の伯父に倣い英文でディケンズを読む少年ディケンズ「骨董屋」登場人物キルプとネルドストエフスキー「貧しき人々」登場人物ネリー著者の息子と弟と叔父も登場し徐々に小説の様な事件に巻き込まれ…?19世紀で一度完成した…

「”雨の木(レインツリー)”を聴く女たち」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家5連作短編集ラウリー「火山の下」がモデル枝葉が水を溜め地と根を潤すレインツリーを有象無象の男女の人生に喩えた群像劇初期:性(大衆)中期:反核(社会)後期:私小説(家族)晩年:Rewrite(自作引用)主題変遷を凝縮した作品 以下収…

「文学の淵を語る」

大江健三郎(日本ノーベル賞作家)&古井由吉(ドイツ文学者・日本作家)共著100年の日本名作短編を語る純文学における”明確な複雑さ”翻訳の限界と邦訳の可能性詩の読み方と味わい方若い時の作品との向き合い方文学の伝承と将来100年目の夏目漱石巨匠同士での現在…

「”新しい人”の方へ」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家やはり観察力と表現力が鋭い長編「新しい人よ目覚めよ」の通り時代は常に”革新者”と”目覚め”を必要とする若者と未来に向けた人生と習慣への提言いじめ撲滅学問の重視反核運動生涯を読書と執筆の習慣に捧げた”新しい人”の優し…

「小説のたくらみ 知の楽しみ」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“たくらみのある小説”は真に”知の楽しみ”を教えてくれるヴォガネットラウリーエリアーデケルアックブレイクお気に入りの作家を定期再読で取り入り自作の引用で自分とも対峙普遍性と一時性の双方を逃さない嗅覚と努力と才能の賜

「水死」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家国際ブッカー賞最終候補非常に高度な”小説内演劇自伝小説”世界的作家の幼年に水死した父の遺品”赤革のトランク”それは作家本願の”水死小説”の鍵演劇団体「穴居人」が長江古義人(=大江)が女優と演劇作製の過程で人生と全著作を…

「芽むしり仔撃ち」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家23歳の処女長編“若芽は毟れ仔畜は肉撃て”戦争疎開で疫病で村民が避難し見捨てられた感化院少年たち夢に見た平和と愛に満ちた共同体建設脱走し束の間の自由を謳歌するが村長が帰還し一転迫害へ理不尽な国家による強権的な大人…

「われらの時代」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家戦中は天皇のために自殺が許されたしかし自殺に理由を求めてはいけなくなった戦後”われらの時代”虚無な性生活に疲れ天皇爆殺を試みるが…?ウェルベックやサリンジャーの描く閉塞感を遥かに先取し戦後の若者の心情をも浮き彫り…

「叫び声」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家戦後日本版”過激派”「オン・ザ・ロード」黒人ハーフ”虎”朝鮮ハーフ”呉鷹男”米人怯懦者”ダリウス”日本人仏文学生”僕”理想郷を目指した4人の逃避行殺人・強姦・銃殺・渡仏…“黄金の青春の時”から“性の狂気”への転落それは”叫び声…

「新しい文学のために」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家読む=書く=作品観批評家が主導する時代に小説家としても批評家としても50年以上も最前線にいた大江健三郎若き小説家と日本文学の未来に対し論ずる引用作家の矜持グラスオーデンバフチンドストエフスキートルストイバルザック…

「私という小説家の作り方」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家全集刊行の月報を集めて書籍化自分をモデルとする私小説は本来スケールが小さいだが想像力を駆使すれば国家史や宇宙まで拡大できる世界の文学人から学び自作品からも引用人称とナラティブを作品ごとに試してきた著者の方法論…

「洪水はわが魂に及び 下」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家 現代日本に”ノアの洪水”迫る自由航海団と手を組む勇魚少女や”縮む男”も加わり機動隊の銃撃戦にもつれ込むが…?あさま山荘事件や全共闘を想起する国家vs市民の戦い独特の近未来設定で反核や若者礼讃を軸に社会から孤立する者…