MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-06-06 to 1 day

「洪水はわが魂に及び 下」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家 現代日本に”ノアの洪水”迫る自由航海団と手を組む勇魚少女や”縮む男”も加わり機動隊の銃撃戦にもつれ込むが…?あさま山荘事件や全共闘を想起する国家vs市民の戦い独特の近未来設定で反核や若者礼讃を軸に社会から孤立する者…

「洪水はわが魂に及び 上」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“人類が絶滅したら生き延びるのは樹と鯨だろう…”終末感いやます東京核避難所に隠棲する子供”ジン”と庇護者”勇魚”ジンは鳥鳴を分別する能力を持ち勇魚は樹と鯨へのテレパス能力を持つ噂を聞いた”自由航海団”に語学講師を頼まれ…

「治療塔惑星」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“治療塔”で結ばれた”選ばれた者”と”残留者”の間に生まれた畸形児エイリアン世界宗教宇宙ミドリ蟹予戒地球酸素1/4供給機構テロ自閉症原発介護問題核兵器搾取経済例え舞台が宇宙でもいや宇宙だからこそ遠近的に人類と文明の是非…

「治療塔」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家近未来SF環境汚染の果て”新しい地球”に移住した選ばれた者の宇宙船団一方で残留者はHIVなど病原菌が蔓延り“治療塔”で恢復を目指す特殊相対性理論により若い状態で帰還した船団員と残留者の心身が再び結ばれ合うまでの物語イェ…

「M/Tと森のフシギの物語」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家記号抽象的で難解すぎると指摘された「同時代ゲーム」を読み易くリライト(以下変更点)・男性視点(著者)→女性視点(祖母)・著者長男登場・”フシギの森”章深堀り・神話的役割を明確化(Trick star等)・欧米語的関係代名詞節→です…

「同時代ゲーム」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家メキシコ在住の歴史家が双生児の妹に送る6通の手紙四国の歴史を“村=国=家=小宇宙”と見立て開国〜現代の”ある一族”個人を神話化大日本帝国vs村=国=家壊す人アポ爺ペリ爺オシコメシリメ木から降りん人これだけ壮大な設定ながら…

「定義集」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家2010年代後半の著者による朝日新聞連載記事の徒然日記文学・憲法・政治・家庭・仕事・社会的弱者・祖先・息子…遍く人々に最後まで寄り添う優しさ本当に偉人だと思うグラス・リョサ・パムク・莫言など大江さんも私と同じ作家が…

「二百年の子供」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家著者唯一の児童向け作品登場人物は半自伝「ナルニア国物語」的ファンタジー1864年 幕末1944年 戦前戦後2064年 虚な未来四国の森を舞台に過去〜現在〜未来をタイムトラベルできる“時をかける少年少女3人組”憲法・自然・障害者…

「三大陸周遊記」

イブン=バットゥータ著マリーン朝モロッコ旅行家 トゥグルク朝デリー法官 正式名称は「都会の珍奇さと旅路の異聞に興味を持つ人々への贈り物」 モロッコ〜北京まで30年に及ぶ見聞録当時のイスラム世界のほぼ全地域+中国まで歩いた食・職・風俗・文化・経済…

「吹雪」

ウラジーミル=ソローキン著ロシア作家ゾンビ化ウィルス疫災下の近未来ロシア某村吹雪の中ワクチンを届けんとする医者と50の馬と雇われ御者当初の正義感を忘れ小人・艶女との情事・麻薬・虐待に走る医者瀕死の医者の前に略奪者の如く現れる”ある巨人民族”と…

個人編纂=世界文学全集

感慨深すぎて池澤夏樹を真似た”酒界文学全集”40冊を選んでみる どれも傑作であると保証しますので宜しければ手に取ってみて下さい笑 ※1作家1冊のみ選出※池澤夏樹が既に選んだ作品は除外(作家はアリ)※地域や国は出来るだけ重複しないようにした(メキシコとス…

「パワー」

ナオミ=オルダーマン著イギリス作家少女のみに突如発現した放電能力”パワー”男性優位は一変し女性が軍事・政治・経済を支配それに抗う男孤児→聖母モルドヴァ大統領夫人→?米国市長→?市長娘→?マフィア娘→世界最強パワー使用者→?男性記者→?6主人公体制デ…

「アヴィニョン五重奏」完奏の感想

エキゾチックさと文章の耽美さは正直「四重奏」の方が勝るしかし個人的にスリルや面白さは「五重奏」の方が上だと思う何より女性の強さと戦争の愚かさを炙り出している物語も右往左往するが人生は小説のように単純には進まない…人間の脆さと儚さを描き出す名…