MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

「大江健三郎を読む」

戦後民主主義を自認した大江健三郎 常に”同時代としての戦後”を意識するその文学を読むためには歴史と文学の双方の視点が必要となる 文学者と歴史学者が手を組み読み解く複眼的視点の解釈 アメリカに占領して出発し米ソ冷戦に向かった戦後とアジア・アフリカ第三世界の独立を俯瞰

「商人たちの共和国」

世界最古の商店街アレッポ 固定価格ではなく変動価格 専門職化ではなく掛持前提 シリア経済の半分を占めるという把握困難なスーク経済圏の実態を実地調査 活発な”裏イスラーム経済圏”を近代資本主義の前提である”金”ではなく”人”から見渡す 暴走する資本主義経済への警鐘となる本

「交易の世界史 下」

地中海をオスマン帝国に締め出されたヨーロッパは大航海時代へ飛翔 オランダで簿記・海上保険・株式会社・中央銀行・利子・議会・法律・金融の合理的システムが発達 アジアの植民地化進行 奴隷貿易で新大陸に渡った労働者が砂糖・綿・資源・農作物・家畜を安価に輸出し西欧近代化

「交易の世界史 上」

文明誕生時点から交易は存在した シュメール粘土版には既に農作物や家畜と引き換えにインドやアナトリアから金属や樹木の交換の記録が見られる ローマと漢に始まる東西交易はイスラーム拡大で世界化 駱駝と海峡の重要性が高まり香料と金銀が行き交い陸海でバグダード〜広東を繋ぐ

「海の人類学」

“海は文明の母” 海と水から見た人類の歴史 カナート・運河・漁労・気候変動・コロンブス交換・水車・灌漑・海洋酸性化・海洋熱波・奴隷貿易・プランテーション・湖水・氷河期 “人新世”から”海新世”へ 海の世界史や世界各国の水管理システムに至るまで陸中心の歴史観を穿った角度で分析

「祭りの場・ギャマンビードロ」

林京子著 1中編1連作短編集 “祭りの場” 芥川賞受賞作 直前まで上海で過ごし帰国直後に長崎で被爆した著者の半自伝 “ギャマンビードロ” 半自伝 終戦33年後も未だ原爆症に苦しむ人々を追う 学徒動員・慰安婦・被曝遺伝・被曝差別・被曝後遺症… 被曝者の言葉はかくも重い

「私という群島」

圧政あるところ文学あり 人類史上最悪の歴史の1つ”奴隷貿易”の主戦場だったカリブ海群島は小国だが世界的な作家と傑作文学を多出してきた カリブから見た歪んだ世界史と地理を橋頭堡に文明論・文学論・文化論・文献論を書き連ねる 大国より小国の歴史を辿る方が歴史構造を俯瞰できる