MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

「ひとり日和」

青山七恵著 1長編1短編 芥川賞受賞作 “ひとりではあっても孤独ではない” 20歳の平凡なフリーター女性は中国に転勤する48歳の母から遠戚の71歳の元気なおばあちゃんの元に居候を勧められる 各々が恋を経験し”ひとり”とは何か考える 題名で分かる通り文体も音楽的 バランス良い優等生作品

「ワシプンゴ」

ホルヘ=イカサ著 エクアドル作家・医者 先住民文化復興を主張したインディヘニスモ文学の金字塔 医業の傍らで憤り社会告発した作品 ケチュア語で”出入口”を意味する言葉 エクアドルでは先住民の奴隷労働分与地も意味に含む 油田発見で動員された先住民が更に地主に搾取される様を描く

「赤頭巾ちゃん気を付けて」

庄司薫芥川賞受賞作 半自伝 都立日比谷高校男子生徒の庄司薫 東大紛争で受験中止となり社会と自身を改めて見つめ直すことに… いざ勉強を取り上げられれば乳房も女生徒も社会も経済も古代史も純文学も左翼も電話も未来も童話も気になるお年頃 立ち止まった青春のひと時

「佐川君からの手紙」

唐十郎芥川賞受賞作 書簡体小説 パリ人肉食事件で話題を呼んだノンフィクション作品 オランダ女性殺害の日本人である犯人”佐川君”から手紙を受け取り渡仏して真相を追った著者 パリの裏路地を歩き幻想的な風景と記憶を操る文章はフランスのノーベル賞作家モディアノを想起する

「蹴りたい背中」

綿谷りさ著 芥川賞受賞作(最年少19歳) 孤独な女子高生は同じく友達のいないドルオタの男子校生に惹かれる 学校は孤独を許さず適応を求め同調で洗脳し妥協を強いる “このもの哀しく丸まった無防備な背中を蹴りたい” サガン悲しみよこんにちは」や欅坂46の楽曲がシンクロする気がした

「ペスト」

アルベール=カミュノーベル賞フランス作家 再読(前回は岩波) アルジェリア第2の都市オラン 突然のペスト流行に発狂する人々の不条理を描く代表作 都市封鎖・フェイクニュース・終末論・科学の敗北 小さな牌の醜い奪い合いと短絡的思考 複雑な文明が単細胞の前にかくも脆く崩れ去る皮肉

「北アフリカ・イスラーム主義運動の歴史」

共和国のチュニジア 民主人民共和国のアルジェリア 王国のモロッコ マグリブ3国の近代イスラーム主義運動史概観 観光地化vsアラブの春 西洋派vs原理主義派 世俗vs聖俗 メッカから最も遠く元来ムラービト(修道士)やムワッヒド(唯一神信仰)が国家形成してきた