MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-06-01 to 1 month

「街と犬たち」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家27歳の半自伝処女作にしてラテンアメリカ文学ブームの嚆矢“軍校教官と生徒=犬”の壮絶な腐敗官能作家”文屋”虐待児”奴隷”巨漢”ジャガー”中尉”ガンボア”娼婦”金足姫”試験盗難に始まる密告と暴力と規律崩壊が導く…

プラムディヤ=アナンタ=トゥール全8冊読破記念総書評

インドネシア写実主義の文豪勾留先ブル島で資料0から書き上げた3000Pもの大著「ブル島4部作」第一次&第二次大戦に翻弄される植民地の祖国を支配者と被支配者の双視点で緻密に分析更に西欧文明の野蛮性を批判しインドネシア伝統文化を礼賛する

「日本軍に捨てられた少女たち インドネシアの従軍慰安婦悲話」

プラムディヤ=アナンタ=トゥール著インドネシア作家日本政府の圧力で発刊妨害を受けた本ノーベル賞候補作家が訴える日本軍の従軍慰安婦ルポ名を変えた少女毎日10人に犯された少女“被爆国”を宣う前に”戦争犯罪”も忘れてはならない

「ブル島4部作」読破記念総書評

ブル島流刑勾留中の年間に書き上げた計3000Pの大著「ブル島4部作」島嶼国ゆえ各島の部族制が強く国民国家形成が難航したインドネシア400年のオランダ支配から民族運動の覚醒〜反乱を2主人公体制で描く現地人・外国人・女性・多階級・多文化と時空間共に壮大…

「ガラスの家」

プラムディヤ=アナンタ=トゥール著インドネシア作家ブル島4部作4章前作までは独立の英雄譚今作は英雄の宿敵”植民地秘密警察”の道を選んだ現地人幼き日に袂を分けた2人同じ過去違う未来透明な劈開面に亀裂が走る”ガラスの家”“オランダ領東インド”が”インド…

「足跡」

プラムディヤ=アナンタ=トゥール著インドネシア作家ブル島4部作3章第2の妻も失い医学生となる青年日露戦争の日本勝利による革命組織の萌芽第3の妻と民族誌発刊に成功し宗主国政府に警戒され始める青年“民族主義の母”イスラーム商業同盟結成国民国家形成の”…

「すべての民族の子 下」

プラムディヤ=アナンタ=トゥール著インドネシア作家正妻の息子で”ボーア戦争の英雄”が海軍として赴任一触即発のオランダ人vs現地人(プリブミ)ディポネゴロの乱アチェ戦争島嶼と方言の垣根をイスラームが結集へ導く独立と革命運動に目覚め胎動する”すべての…

「すべての民族の子 上」

プラムディヤ=アナンタ=トゥール著インドネシア作家ブル島4部作2章連行された妻の訃報義母と協力しオランダ語ではなくマライ語運動を開始した青年製糖工場の搾取本国正妻によるニャイ(現地妻)の全財産剥奪清朝華僑革命家との邂逅めでたく“第2の妻”となる姪…

「人間の大地 下」

プラムディヤ=アナンタ=トゥール著インドネシア作家農場経営で成功したニャイ(現地妻)だが植民地制度に家族を蝕まれる主人公青年:白人嫉妬で学業迫害妻:農場剥奪・愛人強制美人娘:オランダ連行息子:娼館勧誘→薬物中毒死踏み締める”人間の大地”踏み躙られる…

「人間の大地 上」

プラムディヤ=アナンタ=トゥール著インドネシア作家ブル島4部作1章1898年オランダ領インドネシア(東インド)ジャワ島ジャカルタ強制栽培制度で疲弊する国民オランダ人現地妻の娘である混血美女国の次席ながら白人社会で理不尽に差別されるジャワ人エリート…

「ゲリラの家族」

プラムディヤ=アナンタ=トゥール著インドネシア作家第二次大戦後ジャワ島ジャカルタ大日本帝国の侵略を退けオランダからの独立宣言をしたインドネシア親オランダ派vs反オランダ派vs反政府派4人兄弟と家族の分裂悲痛なゲリラを戦った者達が語る現代インドネ…

「国民とは何か」

エルネスト=ルナン著フランス歴史家・政治史家・古典研究家本文40P+解説40P“国民とは何か?”“ナショナリズムとは何か?”近代黎明期の”フランスのフィヒテ”東洋蔑視も見られるが総じて鋭い国民国家論“ローマ〜フランク王国〜諸国民の春”の政体変遷史は現代日…

「ティンブクトゥ」

ポール=オースター著アメリカ作家主人公は…飼い犬!?余命わずかな売れない詩人の主人の元で冷静に”犬目線”で人間観察する犬のユーモラスな語り“犬だって人類と生きるのは大変さ!”犬にとっての桃源郷中世アフリカ西部マリ帝国”黄金の都”ティンブクトゥは何…

「ボタン穴から見た戦争」

スヴェトラーナ=アレクシェーヴィッチ著ノーベル賞ベラルーシ作家101短編集人口の1/4が死んだ第二次世界大戦期ベラルーシ当時15歳以下だった子供たちの証言集圧倒的暴力の前に”ボタン穴から覗くことしか出来なかった子供たち”戦争とは何か?1つの答えを教え…

「モディアノ中毒」

“モディアノ中毒”を引き起こす“現代のプルースト”ユダヤ系フランス作家(親戚に画家モディリアーニ)ノーベル賞受賞理由:”占領下生活の記憶の芸術”感情や心理を排した最小限の絵画的文体類似テーマと自伝の再使用パリと喪失と青春と若者謎が想像を膨らませるミ…

「呼び出し」

ヘルタ=ミュラー著ノーベル賞ドイツ亡命ルーマニア作家共産党独裁チャウシェスク政権期ルーマニア市民を描く“呼び出し”を受けて路面電車乗車中に密告の狂気と恐怖に怯え”ヒト”が”モノ”に見えてくる主人公通り過ぎる数多の不自然な通行人も異常が日常と化し…

トマス=ピンチョン全9作品(13冊)読破記念総書評

もはや読了自体が自慢の“蘊蓄と博学の総力戦”ポップ文化・伝統・ヒッピー最先端応用科学・IT・軍事・発明戦争・革命・陰謀論・麻薬霊能・冒険・ギャグ植民地化前後の世界各国地理歴史あらゆる分野の学問を1冊にまとめ脱線と統合を愉しめる物語群 以下は個人…

「ブリーディング・エッジ」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家ドットコムバブル期NY大富豪の巨額な中東マネーの行方を追うママドル不正監査士ヒロイン暗躍するテロリスト9.11テロの前触れ…?金融界とサイバー・IT業界の癒着独占資本の醜い拝金主義個人情報管理社会現代社会を直接間接で…

「逆光」総書評

トマス=ピンチョン著 アメリカ作家計1700P「重力の虹」以上の大作無政府主義者たちの”逆行”新時代応用科学技術の”逆光”空想科学冒険少年スパイ探偵SM陰謀ミステリ歴史幻想美少女数学ギャグ労働史恋愛ポルノ革命テロ家族小説(何でもアリ笑)各国各人物が収束…

「楽園への道」

マリオ=バルガス=リョサ著 ノーベル賞ペルー作家祖母の女性&労組解放運動家トリスタン孫の脱西洋画を目指す画家ゴーギャン時代場所職は違えど生き様が同じ2人を2章立てで交互に生〜死まで描くマルクスやゴッホも登場実話に基づくが小説は事実より奇なりさ…

「逆光 下」

トマス=ピンチョン著 アメリカ作家1893年 シカゴ万博オックスフォード大学の闘い四元数論争エーテル論争ニコラ・テスラの発明マヨネーズ工場搾取錬金術師地球空洞化光学と写真の発展メキシコ革命ヴェネツィアとロシアでの交戦時空・次元・超能力で復讐と植…

「逆光 上」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家労働者側で暗躍する爆破テロリスト”珪藻土キット”暗殺計画を企む資本家暗殺後に世界各国でスパイとなり復讐する4兄妹南極〜5大陸を睥睨する飛行船”不都号”世界各国の応用科学発展と労使関係改善を目論み中央アジアの桃源郷”…

「灰と土」

アティーク=ラヒーミー著アフガニスタン作家ソ連の侵攻で飢餓に陥ったアフガニスタンの炭鉱都市灰に汚れた身体土に塗れたリンゴイスラム的価値観の名誉や倫理と戦争が屈辱に変わる心境を独白とフラッシュバックの連続で炙り出すウクライナ同様に大国の犠牲…

「世界鉄道文化史」

鉄道誕生〜技術・サービス・経営・快適性の進化史蒸気→ディーゼル→電気→新幹線→リニアの変遷明治期の日本鉄道網誕生と拡大トマスクック社やJTBによる旅行大衆化満鉄を巡る政治的陰謀7カ国語話者駅員と「オリエント急行殺人事件」今や世界の幹線2/3の”鉄道大…

「大丈夫な人」

カン=ファギル著韓国作家短編9集“女性の日常はスリラー”断片的情景を心配→不安→恐怖に持ち込むサスペンス特化の心理描写版マンロー“湖―別の人”“ニコラ幼稚園―貴い人”“大丈夫な人”“虫たち”“あなたに似た歌”“部屋”“雪だるま”“グル・マリクが記憶していること”…

「ル・クレジオ 文学と書物への愛を語る」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家中国各大学での講演集古今東西の文学を嗜み自身も世界各国が舞台の小説を書く著者中国語訳者や莫言との絆中国と欧米を比較検証し文学と書物の意義を語る索引に便利な別冊人命小事典つき 著…

「シャギー・ベイン」

ダグラス=スチュアート著スコットランド作家ブッカー賞受賞作半自伝+処女作=傑作酒+男癖が強い美人母アグネス男色で虐めに遭う息子シャギー醜男だが狡猾で好色な父シャグサッチャーの脱英国病政策で高失業率の炭鉱街グラスゴー宗教・性差・貧困と闘う母子の…

「重力の虹」総書評

トマス=ピンチョン著 アメリカ作家世界各国の多分野かつ徹底的な深い博識を1冊の本にまとめた奇跡的な小説元ボーイング社(世界的な米宇宙機器航空製造企業)勤務の著者だけあり凄まじい科学用語の量加えて世界史上の駆け引きや魅力的なキャラとても読み解け…

「重力の虹 下」

トマス=ピンチョン著 アメリカ作家 重力の虹にかかるV2の軌道の行方は?ロケット工学航空工学材料力学音楽流体力学文学歴史学各国史数学解析学統計学論理学量子力学制御工学有機合成化学神経生理学薬理学認知心理学精神分析精神医学社会経済宗教現代史陰謀…

「重力の虹 上」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家鍵は”勃起”登場人物400の5大陸に跨る“ロケット爆弾V2開発の世界史”キルギス実験科学者イギリス軍人と霊媒師ナチ党ドイツ+化学財閥クルップ社研究員アルゼンチン革命家大日本帝国海軍少佐ナミビア通信事業者アメリカ軍事機関…