MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-01-01 to 1 year

「1Q84 Book3 10-12月 後編」

村上春樹著タマルの覚悟と牛河の運命新たな教団とリトルピープルの行方NHK集金人の正体そして遂に邂逅する青豆と天吾再びいつかに見渡した”あの場所”へ9ヶ月間2つ月の世界に遺された羽化前の”空気さなぎ”シンフォニエッタの残響と澄み渡る年“1Q84”幻想世界の…

「1Q84 Book3 10-12月 前編」

村上春樹著教祖殺害を受け活発化する教団親が在籍した類似の宗教団体”さきがけ”に奪われた幼少期を想起する青豆不意の陣痛に”ある確信”を持つが…?父訃報を受け天吾も”ある確信”と遺品に黄昏れる牛河の悲しい過去と迫る魔手全ての謎は「空気さなぎ」に収斂し…

「1Q84 Book2 7-9月 後編」

村上春樹著ふかえりの奇行の末に”実態の伴わない奇妙な射精”をした天吾幼馴染の青豆と構想中の長編小説が脳裏をよぎるそんな中マダムとタマルの協力で教祖単身面会を果たす青豆暗殺の行方は…?単独尾行する牛河青豆と天吾の自宅を不気味なNHK集金人が執拗に2…

「1Q84 BOOK2 7-9月 前編」

村上春樹著ふかえり失踪に騒然の世間実は天吾が自宅で匿い彼女の代父が情報収集する傍ら父の危篤を受け”猫の街”へ通院胡散臭い醜男の牛河が予備校を彷徨く更に幼女貫通の儀式を行う教団を戒めるべく児童養護施設と組み教祖暗殺を目論む青豆夜に無音の雷鳴が…

「1Q84 BOOK1 4-6月 後編」

村上春樹著ヤナーチェク音楽に始まる物語の加速幻想的だがリアルな「空気さなぎ」の秘密とは?鍵を握る青豆と天吾とふかえりの争奪戦エステを営む裏で暗殺を行う青豆と快楽に浸る友人婦警一方ふかえりのマスコミ受けと代筆疑惑解消に忙殺する敏腕編集者の小…

「1Q84 BOOK1 4-6月 前編」

村上春樹著“1984年”オーウェルの小説名でありApple初代Macintosh販売開始の年そして青豆が首都高速の路傍で月を睨み世界を”1Q84”と名付けた年美少女”ふかえり”作「空気さなぎ」のゴーストライターになる数学予備校講師の天吾文学賞に沸く中で蠢き出す者の真…

「皇帝ハイレ・セラシエ」

リシャルト=カプシチンスキ著ポーランド作家・記者天皇より古い2000年の歴史を持つエチオピア王家最後の皇帝ハイレ・セラシエvs国家転覆軍人メンギスツ徹底した取材力でクーデター時の側近・民衆・王・暴動者・村人と多階層が見た”事変”を活写圧倒的な密度…

「万国お菓子物語」

みんな大好きお菓子の世界史101話南蛮貿易→鎖国→独自発展した南蛮菓子16世紀から歴史があるマカロンウィーン会議を機に開発されたザッハトルテ激甘トルコ蜂蜜菓子バクラバ茶道と共に発展した和菓子英国と米国で違うマフィンの定義和洋問わず飛び付き研究する…

「無料より安いものもある」

行動経済学なら人間の消費活動もお見通し特にカジノ・金融業・IT等はこれに長けている最近では元カジノオーナーが大統領にもなった(それも名前も”TRUMP”ときた!)YouTubeもアプリも“無料より安いもの”で釣る“無料なのに贅沢!”は行動経済学の掌で転がされて…

「砂漠と草原の遺宝 中央アジアの文化と歴史」

西トルキスタン&シルクロード史当時の騎馬は今の戦車並の兵器近代までの世界帝国の滅亡要因は遊牧民侵攻が殆ど遊牧民は定住地を持たないため遺跡も多くが埋もれてしまうイラン系→トルコ系→モンゴル系の順に興亡スキタイ〜ティムールの中央アジア史

「奇跡の大地」

ヤア=ジャシ著ガーナ作家7世代に渡るガーナ部族サーガ“奴隷海岸”での白人搾取と奴隷貿易部族分裂・抗争に加え南北アメリカに人身売買カカオ強制栽培で更に悪化する生活一方アメリカ黒人奴隷と末裔も悲惨な末路を辿る“奇跡の大地”で祖先に思いを馳せる大学院…

「デカメロン・プロジェクト」

短編29集世界最高の作家はコロナ禍をどう捉えたのか?NY Times企画の北米作家中心の”現代版「デカメロン」”アンソロジー新人賞総ナメの若手からノーベル賞候補まで豪華な布陣ロックダウンやマスク義務化などSFにエスニシティまで多彩な題材で世界各都市を舞…

「ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編」

村上春樹著初め無関係に見えた意外かつ怒涛の伏線回収妻失踪の真実を語る”クロニクル”甦るモンゴル兵”皮剥ボリス”の残虐性ナツメグとシナモンの手を借り野球バットを携え”鳥を刺す決戦”へ著者には珍しく”主人公の成長”と”裏社会の政治的圧力”もテーマ

「ねじまき鳥クロニクル 第2部 予言する鳥編」

村上春樹著 “朝顔の蔓の絡まりの音はねじまき鳥に聞こえる”謎の予言通りに進む日常妻の行方を追う中で”隠蔽された政治史”が浮上戦争の記憶と妻の一族との関係とは?“来る者拒まず去る者追わず”全ては歴代居住者が悲運を遂げる”宮脇屋敷”に収斂しゆく

「ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編」

村上春樹著頬にアザと怪体験が出現する平凡無職者トオル妻クミコと猫の失踪心身に傷を持つ少女メイ謎の露出美女姉妹マルタ&クレタ妻の兄で経済学者畑の気鋭政治家ノボル帰還軍人の間宮井戸の先の不思議な世界走馬灯する日中戦争の意味とは…?

「ホワイトティース 下」

ゼイディー=スミス著 ジャマイカ系イギリス作家戦後ロンドン移民街50年の変遷を描く大戦を経験した勤勉な親世代ドラッグや非行に暮れる子世代科学技術やヴィーガンに目醒める孫世代宗教・民族・食・環境問題・歴史・科学インド大反乱からジャマイカ地震まで…

「ホワイトティース 上」

ゼイディー=スミス著ジャマイカ系イギリス作家人は髪も肌も眼も色が違うでも”白い歯”は共通カオス&コミカルな下町ロンドン移民サーガ•ジャマイカ移民エホバ信者•パキスタン移民ムスリム•ユダヤ富豪家(親)帰還軍人世代↓(子)遺伝子工学徒+原理主義者+ヴィーガ…

「魔術師の谷」

カマール=アブドゥッラ著アゼルバイジャン作家テュルク叙事詩”デデコルクト”が軸の「オイディプス」+「マクベス」+ “スーフィズム”的復讐サーガアゼーリ族キジルバシュ建国のサファヴィー朝のシャーに仕える処刑人父を殺した母に復讐を誓い霊と魔術師の力を…

「狭き門」

アンドレ=ジッド著ノーベル賞フランス作家どうしてだろう?美しき従姉妹と愛し合い祝福に囲まれるきっとそれだけで幸せだったのにね恋して苦しんだ愛して傷付けた“狭き門を抜けるとそこは憂国だった”信仰と美徳に思い出が色褪せてしまう前に悲哀の慟哭は尚…

「十六の夢の物語」

ミロラド=パヴィッチ著セルビア作家・古典学者短編16集「ハザール辞典」で有名な著者旧ユーゴスラヴィア地域を中心に史実や民謡と夢を混ぜ込んだ物語集オスマン帝国時代から鉄のカーテンまで幅広く多彩な文化と東欧的な多民族・多宗教的混淆世界を描くどれ…

「儀式」

セース=ノーテボーム著オランダ作家“儀式”に没入する高等遊民の父子を第三者視点で描く第1部 序章第2部 時間と現代文明から徹底逃避するダース父第3部 東洋文化・楽焼・茶道を崇めるダース子高度経済成長で富裕化するオランダと対比させ不可逆的に喪失した”…

「ライオンの咆哮のとどろく夜の炉辺で」

ジェイコブ=アコル著南スーダン作家“世界一の高身長サバイバル民族”ディンカ族南スーダン説話集野牛を従え獅子狩を誇り駝鳥と足を競う教訓に富む豊かな自然と動植物の力強い童話イアソン宜しく獅子の鬣を抜く勇女や狡猾な狐に創世記と想像力豊かな短編 “世…

「黄金の馬」

ファン=ダヴィ=モルガン著パナマ作家2大洋を南北に分つパナマ地峡運河建設以前風土病と難工事に抗い”黄金の馬”鉄道でカリフォルニアの”黄金郷”を目指した男達マヤ遺跡発見者・苦力・原住民・米資本家…運河完成で一時廃線したが現在は貨物列車として復活し…

「ヴィという少女」

キム=チュイ著ベトナム系カナダ作家戦争でカナダに亡命したヴィ母国同様フランス語圏のケベックに育つ少女“鳥のような翼があれば”鳥類学者の青年ヴァンサンに惹かれると共にアイデンティティを求めて世界を流浪淡く繊細な言葉と微風のように過ぎ去る優美な…

「プラータナー」

ウティット=ヘーマムーン著タイ作家プラータナー”欲望”ヌード写真とAVは裸体美を欲望礼讃する西洋伝統美術の地位を貶めた異性愛・同性愛・自愛・幼児愛…性転換大国タイの若き芸術家混迷するタイ現代政治と重なる遍歴国家と身体類似するグロテスクな”憑依す…

「赤い十字」

サーシャ=フィリペンコ著ベラルーシ作家救済・火刑・十字軍・邪祓・磔刑・祈願…往々にして“十字”は架責を伴う例え“同志の敵”となろうともソ連の電報係として重宝され傍ら第二次大戦で捕虜となった夫と娘を捜索する妻希望は国際赤十字社の連絡のみ老女が語る…

「巨匠とマルガリータ 下」

ミハイル=ブルガーコフ著 ロシア作家 第2部 “原稿は燃えないものだ”美貌化するクリームを得て箒で空を舞うマルガリータ昇天する巨匠浪迷する詩人イワンピラトゥス救済?喋る黒猫不敵な魔術師驚天動地な幻想世界のオマージュはソ連への痛烈な批判無機質な巨…

「巨匠とマルガリータ 上」

ミハイル=ブルガーコフ著ロシア作家第1部 “私に続け読者よ”札束の雨に悪魔との契約謎の外国人の予言通りモスクワで頻発する怪事件鍵は薪に焚べたはずの”巨匠の小説内小説”ローマ帝国ユダヤ属州総督ピラトゥス迫るヨシュア(イエス)処刑現代と古代の融合する…

「そんな日の雨傘に」

ヴィルヘルム=ゲナツィーノ著ドイツ作家46歳・無職・嫁逃亡・性欲増大…自分はダメ人間なのか?若くは社会が退屈なのか?ドイツは勿論ヨーロッパはホームレスが多い世の虚無感と不条理が痛々しい程に伝わる弾く雨と跳ねた泥を容赦なく浴びるそんな日に雨傘が…

「インド史」

文庫で240Pとコンパクトなインド通史特に宗教・民族に詳しいラージプート諸王朝デリー=スルタン朝ムガル帝国と藩王国デカン高原が南北を政治経済言語文化的に分断この分断を利用し金で軍事保護国化→財政破綻にさせ地方服属2億人を僅か1000人の貿易会社の東…