MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-07-01 to 1 month

「僕が本当に若かった頃」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家9短編集海外公演や講師生活すら小説にしてしまう作家の本領“火をめぐらす鳥”“涙を流す人の楡”“宇宙大の雨の木”“夢の師匠”“治療塔”“ベラックヮの十年”“マルゴ公妃のかくしつきスカート”“僕が本当に若かった頃”“茱萸の木の教え…

「同時代としての戦後」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家12エッセイ集“何も語れなかった者”から”語り継ぐ者”へ戦前戦後で文学の在り方は激変したその同時代12の戦後作家を大江が語る原民喜埴谷雄高野間宏島尾敏雄三島由紀夫大岡昇平森有正椎名麟三長谷川四郎木下順二堀田善衛武田泰淳

「日常生活の冒険」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家日常が冒険になれば楽しい青春をナセル主義に捧げるべくモラリストとなる斎木犀吉(=伊丹十三)の半生を僕(大江)が語るボクサー:金泰軽犯罪者:卑弥呼社長令(隷?)嬢:鷹子踊り子:テリイホラー映画監督:ロイヨーロッパ〜アフリカ…

「新しい人よ眼ざめよ」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家7連作短編集ブレイク「預言詩」に沿い父と障害児の共生の在り方を模索する知的障害児の性の目覚めを伴う通過儀礼の思春期は想像を絶する受難見守る父母と兄弟は時に怯懦しながらも喜怒哀楽を共にし真剣に向き合う愛と絆に満ち…

「沖縄ノート」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家返還前に数度の沖縄訪問を行い本書を執筆大日本帝国軍が沖縄に集団自決を迫ったと主張国はその事実を否定し岩波書店と大江を提訴所謂”集団自決裁判”長き裁判の結果2011年に大江側が勝訴だが安倍政権が教科書から上記の記述を…

「読む人間」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家生涯3年間1冊の本を原著と各国語で読む習慣を続けた”読む人間”の読書案内トウェイン「ハックルベリー・フィンの冒険」ダンテ「神曲」セン「不平等の経済学」サイード「文化と帝国主義」ブレイク「預言詩」多重引用の自著「”お…

「最後の小説」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家1戯曲 5エッセイ集著名小説家の”最後の小説”の在り方を分析女性主人公版「河馬に噛まれる」テイストの戯曲も収録“最後の小説”“国外で日本人作家たること”“僕自身のなかの死”“「明暗」渡辺一夫”“日本の戦後を生きてきた者より”…

「万延元年のフットボール」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家1860年(万延元年) 架空の一揆・遣米使節1960年 日米安保闘争100年の時空で接続した二項対立の寓話根所家(蜜三郎・鷹四・S次)妻の菜採子と障害児スーパーマーケットの天皇隠遁者ギー近代と現代の超克想像の創造が奔流する樹海…

「遅れてきた青年」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“天皇のために命を捧ぐ”と教わりながら戦後を迎え死に時を喪失した”遅れてきた青年”上京後に大政治家の懐に入り社会的地位を得るだが戦前戦後と双方の極端な”洗脳”の狭間で心理的には葛藤と渇望が尚残る自意識過剰で繊細な戦…

「大江健三郎とその時代」

1958〜1999年は大江健三郎の時代“戦後民主主義”を自任し性・政治・宗教・文明・非核・障害者を最前線で訴えた「宙返り」までの夥しい文体変遷歴と世界的にも多作かつ複雑な作品世界を短編1つまで精彩に読み解く古今東西の書物を読み引用した”戦後に選ばれた…

「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家5中編海外詩句を軸にした狂気に囚われた受難者の生き様と死に様を描く家族と四国の森を扱う後の長編の思索実験ブレイクとオーデンに端をなす2篇殺伐の中に滑稽と哄笑を見出す人間が平静から狂気に至る過程の描写がリアル 収録…

「言い難き嘆きもて」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家ノーベル賞受賞〜プリンストン大学&ベルリン自由大学講師〜晩年の仕事の葛藤大岡昇平武満徹のエラボレーション埴谷雄高「死靈」30年目の「沖縄ノート」「水滸伝」プルースト嫌いディケンズ贔屓ジョン・ナッシュとトニ・モリス…

「晩年様式集(イン・レイト・スタイル)」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家東日本大震災後に月1で連載し実際の時事問題も随時盛り込んだ半分小説半分日記の”最後の小説”自身主導の”さようなら原発1000万人デモ”初の妻・妹・娘の”3人の女”の語り親族と盟友の死そして自身の老衰死への意識9条の会

「鯨の死滅する日」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家エッセイ集“地球最大の海洋生物である鯨が死滅する日が来るならその方舟に人間は乗ることはできぬだろう”「沖縄ノート」取材裏側エリオットアップダイクミラーエラスムス安部公房白鳥政宗ドストエフスキーアメリカ旅行者の夢…

「美しいアナベル・リイ」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“﨟たしアナベル・リイ総毛立ちつみまかりつ”ポー「アナベル・リイ」が下地のナボコフ「ロリータ」を更に下地にした映画”M計画”当時は幼児ポルノ懸念から断念したが老境で再始動時を超えたエロティックな”無削除版”放映の反応…

「小説の経験」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家評論集第1部:文学再入門(古典など世界文学)第2部:文藝時評(芥川賞など日本文学)プロットよりも1文を具に吟味する評論ドストエフスキーやマンに漱石から村上春樹まで小川洋子や多和田葉子など現在最前線で活躍する作家の若手時…

「暴力に逆らって書く」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家世界各国各分野の知識人11人と交わす贅沢な往復書簡文通相手はノーベル賞作家を始めとした旧来の友人も多く本音トークも多い共通点は”国家と権力の暴力に逆らって意見する勇気ある知識人”であること深く鋭い洞察と行動派作家…

「大江健三郎と”晩年の仕事(レイトワーク)”」

ノーベル賞受賞後に作風を180°変えた 或いは”変えることが出来た”作家は大江健三郎だけだ文学人生を総括した“晩年の仕事”6作に絞って解説<6作の共通項>女性が立つおかしな2人組み家族と音楽自己批評古典引用による原点回帰若さへの訣別と老いの受容

「宙返り 下」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家ギー兄さん亡き後に四国の森に戻った師匠は焼身儀式を図る再建の集会を開く教団篤信女性・技師団・音楽家・画家…聖痕の受容と永遠に向けた各々の千年王国神とは?教祖とは?人間とは?天皇とは?戦後民主主義の祈りを込めた”…

「宙返り 上」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家オウム真理教事件に触発されバブル崩壊で魂の行き場を失いカルト化した日本と自作品の融合した集大成的作品新興宗教団体の師匠と案内人は教義を”宙返り”して隠居するー10年後ー画家と少女の出会いが<反キリスト>新生教団結成…

「鎖国してはならない」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家公演集世界文学の読み手にして日本民俗学を軸にした作品群を書く作家の”精神・文化的な鎖国への警鐘”歴史教科書改竄や国歌斉唱強制など超国家主義回帰に憤る戦時の丸山眞男が福沢諭吉を読んだように大江も”新しい人”に戦時体…

「大江健三郎の”義”」

大江文学における柳田國男の民俗学と島崎藤村「夜明け前」社会作品ごとに転生を繰り返す”ギー兄さん”「万延元年のフットボール」と「同時代ゲーム」を軸に迫る”義”の謎とレゾンデートル(存在意”義”)西洋文学を吸収しながら独自の日本民俗を作品舞台にした”la…

「ピンチランナー調書」

大江健三郎著日本ノーベル賞受作家核の危機を憂いて宇宙から派遣された”転換”を経たピンチランナー2人組の原発技師”森・父”と障害者”光・父”敵対する”親方(パトロン)革命派半革命派Trickster(道化)やクンデラ流の”嗤い”を取り入れた原発建造と反政府運動を巡…

「あいまいな日本の私」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家ノーベル賞受賞公演”あいまいな日本の私”を含む公演集川端康成のノーベル賞受賞公演”美しい日本の私”に準え”異化の作家”としての半生を語るトルストイは世界文学ドストエフスキーはロシア文学Local/Global/Glocalに分けた世界…

「恢復する家族」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家大江家5人の実名を出しながら語るエッセイ集自身は作家挿絵は妻ゆかりさん長男で作曲家の光さん義父と義兄弟は映画監督上智大学司書の妹さん芸術的才能に恵まれた大江家成城の自宅・軽井沢別荘・四国・家族海外旅行とオフの日…

「人生の親戚」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“悲しみよこんにちは”人生は喜怒哀楽を共にする親戚だ先天/後天的に障害者の兄弟を自殺で失ったオコナー研究者の母その半生を小説に書く同じく障害者の長男を持つ作家K(=大江)理不尽な運命に翻弄される”女の一生”の強さと脆さ…

「個人的な体験」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家半自伝新生児が障害を持つ可能性を知り酒と情事とアフリカ移住に現実逃避する青年”鳥(バード)”コネで得た塾講の仕事も馘首される中でカフカとブレイクの言葉を機に現実と向き合い始めていく閉塞社会糾弾から現実の受容と挑戦…

「みずから我が涙をぬぐいたまう日」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家2中編<あの人=父=純粋天皇>を問う2作“みずから我が涙をぬぐいたまう日”満州な出兵した父を晦渋な文体で回顧拘泥の中で血と涙を拭う少年“月の男”アポロ計画脱走者のブラックユーモア物語“鯨+木+鳥”=環境と自虐と神話を想起 漱…

「見るまえに跳べ」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家10短編集・人間の家畜化・後の長編の雛形話・性的人間の孤独・闇バイト・現実逃避・femme fatale・高等教育の欺瞞“奇妙な仕事”“動物倉庫”“運搬”“鳩”“見るまえに跳べ”“鳥”“ここより他の場所”“上機嫌”“後退青年研究所”“下降生活…

「性的人間」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家3中編集“性的人間”<痴漢が主題の嵐のような詩>を夢見る若者と彼に心酔する”性的人間”の痴漢同盟の末路“セヴンティーン”17歳で右翼化した政治的人間の末路(続編の第2部もあるが脅迫で50年後に書籍化)“共同生活”監視に怯えなが…