MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-06-01 to 1 month

「若い小説家に宛てた手紙」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家小説家志望の全ての若者に送る小説技巧集文体・話法・人称・時空間視点小説の技巧に無限の可能性があると改めて示したリョサ直伝の文学解剖講座私自身も来年から少しずつ小説の執筆を始める予定なので読み返…

「神秘な指圧師」

ヴィディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家覇権言語の英語の現地スラングを広島弁で訳したポストコロニアル文学教師→指圧師→神秘家→議員→大英帝国勲爵士と出世するインド系主人公が滑稽かつユニークなトリニダード…

中公新書「物語〇〇の世界史」シリーズ 遂に全40冊(現時点)制覇

特に目指していた訳ではないのですが読破していた、、笑通史を新書で!しかも高いレベルで!書いてあるので海外旅行では行く国のシリーズをよく携帯していました!今後アフリカや中東の国も出て欲しい

「聊斎志異」

蒲松齢著清初怪奇幻想奇譚集怪・仙・幽・恋・妖・夢出身地の山東省を中心に人間動物幽霊に都市農村商店と幅広い世界観の43短編蠱毒や闘虫と独特の文化も散見科挙落伍者ゆえ科挙の話が多い酒に浸り詩を吟じ料理に舌鼓する女性の存在感も高く同時代のヨーロッ…

「黄金の少年 エメラルドの少女」

イーユン=リー著中国系アメリカ女性作家中国独特の一族・集団概念を題材に描く短編集“金童玉女”お似合いカップルの意味纏足や一人っ子政策など中国女性を軸に難しい中国の恋愛文化を儚くも美しく描く代理母問題や黒孩子に超年の差婚など家族観の根底を問う…

「行動経済学」

心理学+経済学=行動経済学要点のみ教科書的な入門書少し見慣れない用語もあるがこれぞ科学的データに基づく”ビジネス書”損得勘定を可視化した”期待効用理論”選択を誘導する“ナッジ”固定観念を促す“確証バイアス”日々のランチに国家規模の財政政策までマクロ…

「アッシャー家の崩壊/黄金虫」

エドガー=アラン=ポー著アメリカ作家 怪奇小説始祖江戸川乱歩が憧れたミステリの始祖文学で最も難しいのは生理反応にまで訴えかける”恐怖”の創出名探偵オーギュスト=デュパンも登場自然・推理・ホラー・SFどれをとっても面白い短編集“アッシャー家の崩壊”…

「わが悲しき娼婦たちの思い出」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著ノーベル賞コロンビア作家“90歳の誕生日に処女を抱く”川端康成「眠れる美女」がモデル目を疑うテーマながら淫靡でも下衆でもなく純愛で描き切る著者の力量は流石肉体的衰退を齎す”老い”と対極の若さを儚さと美しさで包み込…

「ロヒンギャ危機」

4ヵ月で100万人の難民ミャンマー連邦共和国ラカイン州ロヒンギャ族ムガル帝国の後押しでイスラム系ムラウー朝が成立インド帝国併合以後ヤンゴンは印僑華僑の富裕層が増えて反外国的スーチーに国防権はなくクーデターの方がより政難を招く丁度1週間前に勃発著…

「物語 ビルマの歴史」

上座部仏教化で政教一致しこれがロヒンギャ問題の元凶になる1〜3次の英緬戦争後インド帝国の食糧・資源庫として搾取日本軍の強制労働を”泰緬鉄道建設の負の遺産”として世界遺産申請検討アウンサンスーチーが「仮面の告白」を読めるほど日本語通ビルマ史の複…

「文学会議/試練」

セサル=アイラ著アルゼンチン作家中編2作を収録“文学会議”マッドサイエンティストが文学会議に参加しカルロス=フエンテスのクローン製造を試みるが…?“試練”スーパーを襲う3人のパンク少女行動原理は謎でも愛と本気が伝わるヒッピーに微笑む非現実的設定な…

「中心の発見」

ヴィディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家トリニダード生活〜作家までの自叙伝とコートジボワール紀行文の2本立て列強植民地の苦悩と脱却から生まれたポストコロニアル文学その審美眼で自身の印僑文化と西アフリカ…

「誘拐」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著 ノーベル賞コロンビア作家総資産7兆円”メデジン麻薬王”パブロ=エスコバルvsガビリア大統領汚職政治家の親族を誘拐し交渉する一方で貧民は救済麻薬王は”英雄”であり”悪魔”ジャーナリズムに徹し加被害者双方の視点で描く現…

「若きウェルテルの悩み」

ヨハン=ヴォルフガング=フォン=ゲーテ著 ドイツ作家“ウェルテル効果”報われない恋に絶望し自殺・自傷に走る行為発行当時ヨーロッパで若者の自殺を大量に招いた”古典の失恋ソング”内容は夏目漱石「こころ」にほぼ同じ国民的文豪はやはり愛を描いてなんぼ自…

「鰐」

フョードル=ミハイロヴィチ=ドストエフスキー著 ロシア作家初期〜中期の4短編集“9通の手紙からなる小説”“他人の妻とベッドの下の夫”“いまわしい話”“鰐”直接的な皮肉を孕む4大長編とは違い間接的な風刺に留まる印象一方で深い心理描写と登場人物の我が強い…

「パリとセーヌ川」

“パリ語りてセーヌあり”バルビゾン派も印象派も「椿姫」も「レ=ミゼラブル」もパリとセーヌ川はその歴史を共にしている滝のように急峻な日本の河川網に運河は少ないが大陸はとにかく水運橋の商売人や芸人に橋上のアパート文学と美術を中心に”花の都”パリの…

「夢宮殿」

イスマイル=カダレ著アルバニア作家国家が国民の夢を支配する”夢宮殿”選別室・解釈室・筆生室・監禁室・文書保存所オスマン帝国アルバニア州の名門キョプリュリュ家の新人は採用直後に出世徐々に判明する宮殿の全貌と陰謀無限の夢幻有限の幽玄ホジャ共産独…

「星界の報告」

ガリレオ=ガリレイ著 イタリア物理学者 午前2時パドヴァ大に望遠鏡を担いでった手元に結んだ振り子雨は降らないらしい 割とこんな感じで楽しそう天体望遠鏡を発明し黒点・月・土星・衛星など1日ごとに観測彼の記録や計算という地道な方法は後に科学の常識と…

「1421」

新大陸発見は中国人が成した10世紀アイスランド人の北米発見は既に史実1421年に明は南北中米や豪州に南極まで発見していた?明の科学と世界の1/4の財力があれば十分可能実際に鄭和の大遠征も実施皇帝や王朝の交代で公文書破棄も多い中国だから記録がないのか…

「酒呑童子の誕生」

鬼滅ネバーランドONE PIECE(鬼ヶ島編)鬼ブームの昨今我がアカ名にして大江山の疫病神泥酔鬼天狗こと”酒呑童子”貴婦人志向でもなく井戸端会議もしない鬼の王天然痘の化身?水神?斉天大聖と同じ発音?頼公と坂田金時の退治の真相は?最も身近な日本文化”鬼”の…

「私は英国王に給仕した」

ボフミル=フラバル著チェコ作家“これからする話を聞いてほしいんだ”英国王ではなくエチオピア王に給仕オーストリア支配期にホテル見習→ユダヤ資産悪用→ナチス戦争成金→ソ連占領で強制収容所→ビロード革命で没落大国と時代が翻弄するチェコ人は数奇な人生に…

「青淵論叢」

渋沢栄一著(現代訳版)来期大河ドラマ「青天を衝け」主人公にして新一万円札肖像の渋沢栄一3大財閥等ほぼ全ての明治初期の大企業の設立に関わった男の経営論経済道徳合一を説き当時既に貧富の格差是正やマネーゲームを危惧経済の意義が問われる今このテーマを…

「10の感染症からよむ世界史」

黒死病黄熱病梅毒天然痘結核インフルエンザマラリアチフス赤痢エイズコレラ新大陸先住民90%と中近世エジプト50%は感染症が死因人類が根絶できたのは天然痘のみウィルスは寄生する無生物のため殺せないコロナにしてもマスコミより科学や歴史を参考にしたい

「忘却についての一般論」

ジョゼ=エドゥアルド=アグアルーザ著アンゴラ作家ブッカー賞最終候補1975年アンゴラ内戦市民vs政府内戦と強姦妊娠と家族の侮蔑から高層ビルと心を閉し自給自足する女壁と床を”家の本”にし生きた証を記す市民は闘い女は堪える作中詩と市民の逞しさに感動必…

「影たち」

チェンジェライ=ホーヴェ著ジンバブエ作家黒人差別を脱し独立後に白人を迫害するムガベ始まるジンバブエ内戦ハイパーインフレや過剰灌漑の旱害忍び寄る”影たち”死と語り合う虚実の中では影だけが現実内戦は愛を家族を富を分裂牛飼いは光を待つ纏わりつく死…

「フランクリン=ローズヴェルト」

満期2選史上唯一4選の大統領世界恐慌と世界大戦を制し戦後の覇権を獲得炉辺談話マンハッタン計画善隣外交ニューディール政策3R政策武器貸与法小児麻痺元大統領の叔父セオドア日系移民強制収容所毎日9〜18時の勤務でリーダーシップを執り頼れる側近を活用

「津波の霊たち」

世界1有名な日本語は”TSUNAMI”という東日本大震災観測史上世界4番目の巨大地震震災前に魘された人々震災後に憑依された人々大川小学校生徒の遺族達へ心霊体験の数々をルポ原発ばかり話題だが津波の犠牲と恐怖を忘れてやしないか?救えた命は必ずある今コロナ…

「永遠の夫」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著ピュアな題名は皮肉に過ぎず妻の浮気に泣きつく”NTR亭主”愛と幻想に浸る哀れな”永遠の夫”挙句に妻の愛人や娘も登場するが意外な展開を見せる今は亡き”社交界”に取り憑く虚しい亡霊の様な夫と家庭に縛られ愛…

「泣くな わが子よ」

グギ=ワ=ジオンゴ著ケニア作家ノーベル賞有力候補のデビュー作1960年 アフリカの年戦後アフリカは東南アジアより有望だった学問を志し夢見る少年少女マウマウ戦争の最中“建国の英雄”ジョモ=ケニアッタ凱旋英雄から独裁者へ白人vs黒人祖国の”わが子”を待つ…

「人形の家」

ヘンリク=イプセン著ノルウェー劇作家“妻であり母である前に人間”フェミニズム的だが”女”でなく”人間”な点で反近代的仕事も社会も家族も機械化した近代は”人形の家”病の夫のため借金した妻を強請る銀行家妻の借金を恥じ怒る夫に対する妻の選択とは?150年経…