MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-02-01 to 1 month

「黄色い家」

川上未映子著善悪美醜貧富男女違う出自の似た者同士家出少女3人”黄色い家”での歪な共同生活少女は純粋に強く賢く育つ純粋に悪に身を委ねていくたっぷりの淡い青春はノンストップの犯罪と表裏一体ピカレスクにしてビルドゥングスロマン多義的ながらエンタメ性…

「魔法飛行」

川上未映子著他のエッセイより詩が多く含まれていた印象特に他のブログより「すべて真夜中の恋人たち」と「夏物語」と「黄色い家」の小ネタや裏設定が多くてずっと前から書きたいテーマだったんだと感じたそれにしても食のエッセイとして引き受けたはずなの…

「愛の夢とか」

川上未映子著7短編集リズミカルな文で1テーマを追う“アイスクリーム熱”ラブリー“愛の夢とか”エロティック“いちご畑が永遠につづいてゆくのだから”ファンシー“日曜日はどこへ”ノスタルジック“三月の毛糸”シュール“お花畑自身”メタフィジカル“十三月怪談”ホラ…

「日の暮れた村」

#一日一編18作目カズオ=イシグロ著ノーベル賞イギリス作家語られない謎が余韻を残す短編版「充されざる者」縁の街を再訪した男贖罪の旅?葛藤の顔?歓迎の街?若者の支持?虐めの回顧?案内係失踪?情報を与え過ぎず奪い過ぎず…信頼できる”信頼出来ない語り…

「春のこわいもの」

川上未映子著6短編集“青かける青”“あなたの鼻がもう少し高ければ”“花瓶”“淋しくなったら電話をかけて”“ブルー・インク”“娘について”青春ってこわいマタニティブルーってこわい穏やかってこわいコロナってこわい地獄ってこわい死に目ってこわい“春のこわいも…

「無料のラジオ」

#一日一編17作目サルマン=ラシュディ著インド作家貧しい村に当時高価な夢の”無料ラジオ放送”設置に奔走する優しい美少年だが人口抑制政策を進める政府の交換条件は精巣切除…宗教上不要ゆえの自己去勢それでも幸福な顔で俳優の道を駆ける青年と嘆く老人の対…

「芝居小屋」

#一日一編16作目アントニオ=タブッキ著イタリア作家ポルトガル大詩人ペソア研究者の作家という異例な経歴から生まれた作品ポルトガル植民地モザンビークの芝居小屋なぜ有名俳優は「リア王」を王と道化の2役を”観客1人”のために演じるのか?演劇の深みと愛と…

「夏物語」

川上未映子著「乳と卵」+後日譚を軸に過去作をMIXし”生と性を問う”形で展延豊胸手術人工授精セックス生殖倫理男女性差別不妊治療精子提供子供の幸福東京と地方の格差親子の絆貧困と医療思春期の葛藤小説家の日常…上記全てを多角的かつ緻密に更にテンポ良い文…

「安心毛布」

川上未映子著1日の1/3〜1/4を占める睡眠の質は毛布の安心感に直結する育児や料理など引き続き日常の些細な雑事の記録ホットケーキの詩を書いてたのはこの時にハマったかららしい笑Twitterに貼る用の画像検索で”安心毛布”と入力したら芸能人とグラドルの抱き…

「水瓶」

川上未映子著9詩集詩には珍しく全作改行なし“意識の流れ”を散文で実験しているが日常感ゆえ庶民的“戦争花嫁”“治療…家の名はコスモス”“バナナフィッシュにうってつけだった日”“いざ最低の方へ”“星星峡”“冬の扉”“誰もがすべてを解決できると思っていた日”“わた…

「そり返った断崖」

#一日一編15作目アントニア=スーザン=バイアット著イギリス作家著名作家ドラブルの実姉ヴィクトリア朝大詩人ブラウニングの私生活や世間話を描くだけだが高度な学術知識と適度な庶民感と当時の歴史観を適度に混ぜるのがミソ隠喩or直喩のWミーニング問わず…

「あこがれ」

川上未映子著子供版「ノルウェイの森」片親がいない幼馴染”僕”麦くんと”わたし”ヘガティー前半:”僕”視点(小学2年生)後半:”わたし”視点(小学6年生)親と友達と家族と自分と君と子供なりの自分探しはみずみずしくてきらめいていて思春期前の最後の子供時代複雑…

「希望の海 復讐の帆」

#一日一編14作目ジェイムズ=グレアム=バラード著イギリス作家砂漠が大洋に変わり大洋が大空に変わりヨットで久々に故郷に帰省するという架空のSF世界鱏が空を泳ぎ狩りをする一方で絵画史や神話など現実文化の世間話をしていて謎の親近感と思いきや復讐もあ…

「世界クッキー」

川上未映子著新聞・週刊誌・ネット記事に掲載されたエッセイ集焼きたてホクホク出来たてサクサククッキーって意外とカラフルだったりしますよねそんな新鮮な言葉と日常を少しずつ頬張るちょっとの贅沢と思いきや激動の芥川賞受賞式の話も出たり作家の忙しな…

「先端で さすわ さされるわ そらええわ」

川上未映子著7詩集中原中也賞受賞作出産を除いて人間最大の痛みは指の先端の切断らしい“先端”は繊細で敏感で痛点が詰まっている刺したり刺されたり傷んだり感じたりやな感じでええ感じやったりそんな心と体の両方に鋭くて直球な言葉を散りばめた詩編

「先端で さすわ さされるわ そらええわ」

川上未映子著7詩集中原中也賞受賞作出産を除いて人間最大の痛みは指の先端の切断らしい“先端”は繊細で敏感で痛点が詰まっている刺したり刺されたり傷んだり感じたりやな感じでええ感じやったりそんな心と体の両方に鋭くて直球な言葉を散りばめた詩編

「オモロマンティック・ボム!」

川上未映子著週刊新潮連載コラム集オモロイ!ロマンティック!ボカーン!と爆発してる!何でもありのエッセイ(もはや書く事ないと呟いているレベル)思い出や事件を面白おかしく話すのだが地味に著者の作品を読んでいてデジャヴを感じることがあるのが嬉しい…

「略奪結婚 あるいはエンドゥール人の謎」

#一日一編13作目ファジリ=イスカンデル著アブハジア作家再読“アブハジアのガルシア=マルケス”連作短編より破天荒おじさんの愉快なディアスポラ結婚生活1部:民話的異文化略奪婚(友とWカップル駆け落ち)2部:陰謀論的民族主義風刺(50年後ソ連社会主義)

「ローズは泣いた」

#一日一編12作目ウィリアム=トレヴァー著アイルランド作家短編版のサガン「悲しみよ こんにちは」子供と大人の狭間に立つ少女心の三角関係を会話でなく風景と表情だけで読ませる絶技作中ほぼ唯一の行動”泣いた”の中に友達4人・先生・親から孤絶した思春期の…

「同時に」

#一日一編11作目インゲボルク=バッハマン著オーストリア作家・詩人“もし複数言語話者の同時通訳同士が想いを伝え合ったら…?”多言語・多文化・多地域のカオス会話になるのは必然欧州言語やアジアは勿論ガボンまで登場異文化理解の難しさと散文詩的文体が磁…

「きみは赤ちゃん」

川上未映子著芥川賞カップル35歳初めての子育て妊活〜出産〜1歳までの赤裸々体験回顧録元より感情も比喩も社会問題提起も抜群に上手い未映子さん喜怒哀楽爆発の笑って泣ける素敵なエッセイ女性の方は壮絶な日々へ共感と懐古を男性の方は未知体験に驚嘆と理解…

「発光地帯」

川上未映子著作家の日常を親近感ある大阪弁で綴ったエッセイ集様々な日常を切り取って言葉にすると自然発光して見えてくる食・生活・言葉・詩・音楽・育児・家族・弟・母・先輩・編集・受賞・執筆…日常生活を細部まで観察して独自な発見を追求し続ける作風の…

「すべて真夜中の恋人たち」

川上未映子著奥手の恋本能の恋初老の恋嫉妬の恋羨望の恋最初の恋最後の恋“真夜中は恋人たちの時間”仕事と太陽の喧騒が包む昼が終わり静かな夜が待つ孤独と過去と夢と向き合う校正と同じ果てなき間違い探し“ずっと真夜中でいいのに”そう思いながらまた朝が来る

「犬」

#一日一編10作目フリードリヒ=デュレンマット著スイス劇作家黒い犬は世界各国で死や不吉の象徴これを説話+ホラー+不条理にして上手く利用した短編老衰で生死の狭間を彷徨う富豪男と回復を願う親族や知人結末がリアル且つ最悪のシチュエーションで”本当にあ…

「あずまや」

#一日一編9作目ロジェ=グルニエ著フランス作家“芸術は究極的に音楽に収束する”「クロイツェル・ソナタ」ベートーベン第9番イ長調47作品及び音楽の狂騒性を揶揄したトルストイの小説名旅客機墜落地で初恋の女の楽器の残骸を見つけた男苦い記憶と音楽の官能を…

「乳と卵」

川上未映子著1中編1短編芥川受賞作“乳と卵”成程”生理”とは確かに”生”の”理”豊胸手術に固執する姉と母と妹3人各々の独白ながら生理・出産で視点共有させる生理描写の痛みと重みの隠喩が上手い“あなたたちの恋愛は瀕死”恋愛文学の基本は”死”だが一歩手前の”瀕…

「X町での一夜」

#一日一編8作目ハインリヒ=ベル著ノーベル賞ドイツ作家短い夜に人生が凝縮される事がある短編において実質その必要十分条件を満たす過去の回想を上手く利用した作品町の女と出兵前夜の青年の”某町の一夜”そこに垣間見える戦争の最前線の緊張を50年後の現在…

「自殺」

#一日一編7作目チェーザレ=パヴェーゼ著イタリア作家男:夏目漱石「こころ」の”先生”女:フローベール「ボヴァリー夫人」の”エンマ・ボヴァリー”“この2人がもし若き男女として出会ったら?”という地獄のシチュエーションを再現した様な短編鬱蒼な雰囲気がリア…

「ウィステリアと3人の女たち」

川上未映子著4中短編集全て女性主人公が日常の些細な出来事から記憶を辿り思い耽る作品クィアと見せかけて…と思いきやそれも違うと見せかけて…実は…?と展開が上手い“彼女と彼女の記憶について”“シャンデリア”“マリーの愛の証明”“ウィステリアと3人の女たち”

「終わらなかった旅」

シヴァ=スリニブサ=ナイポール著トリニダード・トバゴ作家1中編6エッセイ集40歳で逝去したノーベル賞作家ナイポールの弟“終わらなかった旅”スリランカを放浪する青年そこで目にする”第一世界vs第三世界”の文化経済的な差別の現実名著「なまこの眼」著者の…