MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-04-01 to 1 month

名刺代わりの10冊

🇹🇳歴史序説/イブン=ハルドゥーン🇳🇬アメリカーナ/アディーチェ🇵🇪チボの饗宴/バルガス=リョサ🇨🇴百年の孤独/ガルシア=マルケス🕋千一夜物語🇮🇳真夜中の子供たち/ラシュディ🇦🇱死者の軍隊の将軍/カダレ🇷🇺悪霊/ドストエフスキー🇹🇷僕の違和感/パムク🇨🇦昏き目の暗殺者/アトウッド

「オラクル・ナイト」

ポール=オースター著アメリカ作家主人公主人公執筆の小説小説内人物の読む本”オラクル・ナイト”“小説内小説内小説”+作者の4重構造複雑ながら音楽的文章で読み易い心情・表現・設定青いノートに書き連ねた“神託の夜”の幻想語り手たちが透明な絲で紡ぐ四重奏(…

「凍」

トーマス=ベルンハルト著オーストリア作家寒村に住む狂気の老画家に張り付き健診した若い医師による27日間の散文型の手記少しずつ小説世界が凍傷に蝕まれ薄ら寒さを感じるベケット・カフカ的不条理世界95%=画家の悪口5%=医師の応答事件もなく淡々と進む日常…

「ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前」

多和田葉子著ドイツ・日本作家9短編集言葉・日常の表裏を鋭く突く“ヒナギクのお茶の場合”“枕木”“雲を拾う女”“あやめびと/むかしびと/わたりびと/ほかひびと”“所有者のパスワード”“海に落とした名前”“時差”“U.S.+S.R. 極東欧のサウナ”“土木計画”

「自由の樹のオオコウモリ」

アルバート=ウェント著サモア独立国作家9短編集西サモア(東側はアメリカ領サモア)の自然・文化を凝縮した作品群“自由の樹のオオコウモリ”“山の末裔”“墨の十字架”“フル大佐”“サラブレッドに乗った小悪魔”“復活”“ホワイトマンの到来”“独立宣言”“バージンワイ…

「アレクサンドレ・カズベギ作品選」

アレクサンドレ=カズベギ著グルジア作家4短編集“ぼくが羊飼いだった頃の話”グルジア牧農社会を描く“ツィコ”伝統社会で駆け落ちした男女の末路“ニノ”コーカサス山脈の自然に生きる家族“長老ゴチャ”長老と息子の村の掟を巡る”オイディプス王”的な部族紛争

「ケンジントン公園」

ロドリゴ=フレサン著アルゼンチン作家「ピーター・パン」作者J•M•バリー秘話×著者の生きた1960年代ロンドン=永遠の子供が棲む”ケンジントン公園”フック船長とイギリス文壇バリー兄弟とウェンディ虚実×現実の奇作交錯する2話を時間自転車が紡ぐ”約束のネバー…

「剃髪式」

ボフミル=フラバル著チェコ作家“今は短さが流行なんだ!”何もかも短くする”剃髪式”に意気込むビール工場労働者と爛漫な娘(両親がモデル)犬の尻尾も労働時間も足も髪も椅子も短い方がいい!グロテスクにチャーミングにクレイジーにハッピーにボヘミアの風景…

「イヴォンヌの香り」

パトリック=モディアノ著ノーベル賞フランス作家映画化原作“あれほど愛した人なのに思い出すこともできない”スイスで出会った映画女優”イヴォンヌ”街の名士の子彼女を愛し伯爵を偽る僕優雅で徒然な日常の突然の終わり幾年が経とうとまた思い出そうとしてし…

「クオ・ワディス 下」

ヘンリク=シェンキェーヴィッチ著ノーベル賞ポーランド作家 “全ての道はローマに通ず”アッピア街道に現れたイエス典雅の審判者ペトロニウスとネロの心理戦の結末コロッセオで火と猛獣の刑を受難する大量のキリスト教徒に主は訪れるのか…?初代教皇ペテロの…

「クオ・ワディス 中」

ヘンリク=シェンキェーヴィッチ著ノーベル賞ポーランド作家 “S•P•Q•R”64年ローマ大火ネロによる帝都の炎上(現在の学説では否定)暴君ネロ大詩人ペトロニウス魚の伝道者パウロ殉教者ペテロ側近セネカ巨人ウルスス美女教徒リギア軍人ウィニキウス堕落する富裕…

「クオ・ワディス 上」

ヘンリク=シェンキェーヴィッチ著ノーベル賞ポーランド作家“Quo vadis?”“汝どこへ行くのか?”第5代ローマ皇帝ネロに迫害されるキリスト教徒を彷徨う祖国なきポーランド人の運命と重ねた歴史小説徹底的な歴史文献の参考に加え波瀾万丈な物語自体も魅力主イエ…

「サワーハート」

ジェニー=ザン著中国系アメリカ作家7短編集華僑移民&女&貧困版「ライ麦畑でつかまえて」“We love you Crispina ““空っぽ 空っぽ 空っぽ”“母以前の母たち”“弟の進化”“私の恐怖の日々”“なんであの子たちはレンガを投げていたんだっけ?”“川に落ちたあんたを私…

「人類 対 自然」

ダイアン=クック著アメリカ作家12連作短編集人類総不平等社会のダークディストピア“前に進む”“最後の日々の過ごし方”“だれかの赤ちゃん”“ガール・オン・ガール”“人類 対 自然”“上昇婚”“やつが来る”“気象学者デイヴ・サンタナ”“漂流物”“おたずね者”“豊作年”“…

「良い骨たち+簡単な殺人」

マーガレット=アトウッド著 カナダ作家35短編集著者曰く”Candy box”的ショートショートのカラフルでコミカルな作品群短編で平明と見せかけて奥深いダブルミーニングでメタフィクショナルな作品が多い個人・国家・自然・動物・寓話と多様な切り口因みに絶版…

「コンラッド短編集」

ジョゼフ=コンラッド著ポーランド系イギリス作家5短編集航海上の話がメイン陰謀・革命・スパイと冒険推理小説の趣きながら慧眼な西欧文明批評を併せ持つ西欧には著者自身も人生を狂わされた“文明の前哨地点”“秘密の同居人”“密告者”“ローマン・プリンス”“あ…

「地球に散りばめられて」

多和田葉子著日本・ドイツ作家4主人公体制 3部作1章留学中に祖国が消滅した少女言語学専攻のデンマーク学生インド系トランスジェンダー鮨職人のグリーランド青年北欧国家共通で使える人工言語”パンスカ”を開発し母語話者探しの旅を巡る4人の物語“地球に散り…

「蛇と百合」

ニコス=カザンザキス著オスマン帝国クレタ州(現ギリシア)作家日記形式で愛する女へ綴る叙情詩トルコ独立期と重なるためギリシア神話やキリスト教の礼讃などナショナリズム色が強い“太陽は空を血に染め蛇が百合を喰らう”(イスラム=月が上で太陽が下)(キリス…

「少年」

川端康成著日本ノーベル賞作家文豪の知られざる遺作が没後50年で初文庫化「ベニスに死す」的な川端の独特な美少年愛が炸裂自身の高校〜大学時代の後輩との触れ合いや生活を瑞々しい文章で回顧基本的に川端文学のストーリーは変態的だが文章の淑やかさと情緒…

「LAヴァイス」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家映画化原作元カノがピンチでピンチョン!?大富豪と犯罪の温床!?仕方ない…… 行くかクソったれ!!娑婆でシャブってsun of a bitch!Hippie Happy Love&Peace⭐︎dragとdrankでtrapにdrop??麻薬中毒ラリ探偵??ハードボイルドにキメ…

「ギーターンジャリ」

ラビンドラナート=タゴール著ノーベル賞イギリス領インド帝国(欧米以外初)詩人・音楽家・教育者・作家インド・バングラデシュ共通国歌ギータ(歌)アンジャリ(捧げ物)詩に疎い人でも分かる美しく透明な言葉ベンガルの自然で彩る亡き家族に捧ぐ詩の餞詩人イエ…

「掃除婦のための手引き書」

ルシア=ベルリン著アメリカ作家24短編集マンローやサリンジャーの様に不条理に突如幕引きする作品が多いがオチはしっかり掬うアル中や多岐に渡る職務遍歴と壮絶な実体験を踏まえ鋭く言葉を現像する文才は勿論だが経験が文学を生むと思い知らされるそして超…

「ある男の聖書」

高行健著フランス亡命中国ノーベル賞作家・戯曲家・水墨画家母国では全作発禁奇数章:フランス亡命後(おまえ)偶数章:文化大革命期の農村(彼)文革で屈辱を味わい亡命するまでの散文式半自伝国内外での夥しい情事と中国人観毛沢東批判と狂気の同調圧力感“おまえ…

「浮かびあがる」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家徐々にベールを剥ぐ“信頼できない語り手”的ミステリ隣の超大国アメリカ文化と資本の流入カナダの農村も確実に変わりつつあった時代失踪した父の土地遺産に忍び寄るアメリカ人と性的価値観のヒッピー化した男“浮かびあが…

「水の墓碑銘」

パトリシア=ハイスミス著アメリカ作家映画化原作のサスペンス奔放で悪癖な美人妻に悩む誉れ高き地方名士浮気相手を排すため殺人を嘯いて威嚇し遂に本当に溺死を犯してしまう街中が名士の容疑を否定する中で事件を執拗に追う妻愛し合い憎み合う夫婦の心理戦…

「献灯使」

多和田葉子著日本・ドイツ作家全米図書賞受賞4中短編集全て東日本大震災後を揶揄“献灯使”傑作老人が健康で子供が病弱な鎖国ディストピア社会得意の言語遊びやホラーを絡めたSFで短いがリアルな世界“不死の鳥”続編“彼岸”続編“動物たちのバベル”人類絶滅後の動…

「リズムの生物学」

39億年前からDNAがほぼ全生物に宿る体内時計”サーカディアンリズム”人類の原始言語も”リズム+反復=音楽”に近いという潮の干満・天体運動・線虫的非線形運動・受精波・体節…規則正しい運動が生物を築く非線形的振動の化学反応“ベロウソフ・ジャボチンスキー反…

「アラブの春は終わらない」

タハール=ベン=ジェルーン著モロッコ作家チュニジア青年ムハンマド・ブアズィーズィーの焼身自殺Facebook革命に始まった”アラブの春”を国別視点で分析エジプトリビアアルジェリアモロッコチュニジア欧米は経済利権から独裁・人権侵害・貧富の格差を黙殺し…