MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-05-01 to 1 month

「花の子ども」

オイズル=アーヴァ=オウラヴスドッティル著アイスランド作家婚外子とジェンダー格差が世界最小のアイスランド全成人女性9割がデモを起こし女性の社会進出が成功した大学進学を諦め趣味の園芸で稼ぐ青年突然に子供ができ戸惑いながらも育児と家事をこなす静…

「霊山」

高行健著フランス亡命中国ノーベル賞作家・戯曲家・水墨画家誤診で癌と申告された著者の”霊山参拝”奇数章:”おまえ”の中国大陸横断記偶数章:”私”の情愛性愛記徐々に交わる”2人”江蘇省〜青海省の少数民族・伝統呪術的生活文化大革命を生きる男女の記録霊感の迸…

「疎外と叛逆」

“疎外=孤独の芸術的創造者”ガルシア=マルケス“叛逆=反権力地図の分析者“バルガス=リョサインタビュアー:エレナ=ポアトニウスカラテンアメリカ文学ノーベル賞作家2巨頭の対談「百年の孤独」「落葉」「緑の家」「都会と犬ども」制作秘話情熱と鋭い考察に満…

「盆栽/木々の私生活」

アレハンドロ=サンブラ著チリ作家・詩人2連作中編 徒然のまま針金に沿うまま思うがままに我儘のママ盆栽にして凡才の人生嗚呼これぞ木々の私生活なり 日本愛好家の著者の散文形式の叙情詩ネルーダとミストラルという2人ノーベル賞詩人を輩出した”詩人国家チ…

「マザリングサンデー」

グレアム=スウィフト著イギリス作家映画化原作第一次大戦後1924年“メイドが母や故郷に帰る日”マザリングサンデー親不在の孤児のメイドが富豪に処女を与えた日恋して本を読み階級に抗い小説家として成功する彼女の人生の年代記英国メイド版「女の一生」&「日…

「たんぽぽ」

川端康成著日本ノーベル賞作家未完の遺作たんぽぽ咲く長閑な田舎の精神科医通称”きちがい病院”好意を持つ者の身体が見えなくなる架空の病”人体欠視症”の娘その近親者の心理を深く探る実践的小説主人公が回想や夢でしか登場しないのが不気味自殺した著者の狂…

「子供時代」

リュドミラ=ウリツカヤ著ロシア作家6短編集著名画家の素敵なイラスト付き(短編用に作られていない)全編ソ連期の子供が主人公ベートーヴェン演奏禁止の話や子供のおつかい話が印象的“キャベツの奇跡”“蝋でできたカモ”“つぶやきおじいさん”“釘”“幸運なできご…

「氷の城」

タリアイ=ヴェーソス著ノルウェー作家転入直後に運命的な出会いを感じた2人の少女ウンとシス思春期の複雑な心情を胸に静かに繊細に惹かれ合うしかし滝麓の雪と清流の建築”氷の城”に囚われてしまうウン誓いを忘れず捜索を続けるシスと仲間たちだが…?美しき…

「澄みわたる大地」

カルロス=フエンテス著メキシコ作家実験的処女作にして傑作政治家軍人先住民市民斬新な技法で50もの職種や階級に語らせた”都市=主人公”の多声的都市小説現在は人口1500万と東京都以上の大都市メキシコシティ革命後の市街の喧騒と日常が鮮やかに描かれた”澄…

「生埋め」

サーデグ=ヘダーヤト著イラン(カージャール朝〜パフレヴィー朝)作家7短編集ヘダーヤト家は首相も輩出した文官名家三島やルシア・ベルリンを想起する”死”を意識したキレのある作風“幕屋の人形”“タフテ・アブーナスル”“深淵”“捨てられた妻”“S.G.L.L”“生埋め”“…

「V. 下」

トマス=ピンチョン著 アメリカ作家 著者25歳の驚異的デビュー作有象無象に縦横無尽に何モノでもあり何モノでもない”V”正義と悪虚像と実像戦争と平和富と困窮歴史と記録嘘と誠女と男破壊と創造滑稽と皮肉正統と異端宗教と科学文明と未開無限の想像力の“動く…

「V. 上」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家世界史上に暗躍する謎の女”V”とは?VenusVanessaVeniceVirtueVeronicaVallettaVolksVictoriaVellaアレクサンドリア英独スパイマルタ包囲爆撃ナミビア先住民迫害パリ舞踏劇フィレンツェ絵画泥棒NY下水道ヴェネツィア遊覧ロン…

「雲をつかむ話/ボルドーの義兄」

多和田葉子著ドイツ・日本作家2長編“雲をつかむ話”著者の実体験を基にハンブルグで出会った”犯罪人”と記憶の断章が導く言語サスペンス“ボルドーの義兄”約100字の反転漢字を章題に置いた連作短編式長編表意文字の漢字と表音文字の欧米語を駆使した”意識の流れ”

「青い脂」

ウラジーミル=ソローキン著ロシア作家7体のロシア文豪クローンが分泌する”青脂”争奪戦時空を超えてスターリンvsヒトラーの東西分割世界に届く”青脂”宇宙規模のエログロナンセンス蘊蓄2大独裁者の決戦は予測不能な結末へ個人的にも過去に読んだ全小説中で最…

「青い眼がほしい」

トニ=モリスン著ノーベル賞アメリカ作家 青い眼がほしいあなたが思わず見惚れる様な 青い眼がほしい溢れる涙を吸い込む深い海の様な 青い眼がほしい黒人には見えない様な 青い眼がほしい母が街中に自慢できる様な 青い眼がほしい自由を讃える青空の様な 美…

「ある島の可能性」

ミシェル=ウェルベック著フランス作家蝕むだけの人間という家畜が1匹残らず駆逐された未来の地球“2000年後の君から”届くクローンの静かな叫び老い・愛・永遠…人が欲求し失い続ける肉体との闘争を現代と未来の2話交錯で描く国際競争と僕の戦争息苦しい世に求…

「薔薇とハナムグリ」

アルベルト=モラヴィア著イタリア作家15短編集自身の才能は勿論3度の結婚の内2人はノーベル賞候補級の作家エルサ・モランテとダーチャ・マライーニという遍歴絵画的日常を切り取ったシュールで繊細な描写とオチ更に肉体・性・近親・愛人と自身の遍歴と同じ”…

「ヴァインランド」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家カリフォルニアのヤク漬け生活保護男麻薬捜査官が掻き乱す日常に思い出すは妻子の遍歴ニクソン傍観レーガン暴漢フェフ姉さんのRock 'n' roll共和国独立☆東京”くノ一館”にお色気のろけ♡ベガスで賭け負けシャブSEX?人生Gambl…

「ヨーロッパ覇権以前 下」

マムルーク朝覇権とペスト禍北インド中継貿易南インド季節風貿易香辛料貿易の蜜を逃すインド東南アジア港市国家の盛衰日本の元寇撃退宋〜元代人口比率の変化(河北1:江南9)モンゴル帝国”世界の一体化”ティムール帝国の破壊ポルトガル新航路発見暗黒の中世の夜…

「ヨーロッパ覇権以前 上」

ヨーロッパ覇権以前の近代世界システムを分析ジェノヴァ黒海奴隷貿易と大航海への序章ヴェネツィア東方貿易の遺産と限界シャンパーニュ定期市ササン朝の銀行システムフランドル絹織物の世界進出銀本位制のヨーロッパ金本位制のイスラーム銅銭の宋兌換紙幣の…

「ウォーターダンサー」

タナハシ=コーツ著アメリカ作家南部奴隷制社会“水の踊り子”の母と白人の下に生まれ記憶力抜群ながら母の記憶だけ喪失した黒人奴隷逃亡と収監の後タブマン率いる黒人奴隷解放結社”地下鉄道”の幹部へ静かに波紋する日常と檄流の如き地獄水瓶と涙に濡れた母の…

「東方綺譚」

マルグリット=ユルスナール著ベルギー作家9短編集古代中世期バルカン〜中国の東洋史の伝説・伝承譚“老絵師の行方”“マルコの微笑”“死者の乳”“源氏の君の最後の恋”“ネーレイデスに恋した男”“燕の聖母”“寡婦アフロディシア”“斬首されたカーリ神”“コルネリウス…

「エミリーに薔薇を」

ウィリアム=フォークナー著ノーベル賞アメリカ作家8短編集全作ヨクナパトーファサーガのスピンオフ血生臭いアメリカンドリームの裏側の南部史を語る“赤い葉”“あの夕陽”“女王ありき”“エミリーに薔薇を”“過去”“ウォッシュ”“デルタの秋”“中上健次 フォークナー…

「ウダイ・プラカーシ選集」

ウダイ=プラカーシ著インド作家3短編集インド歴代偉人への言及が多いのが特徴“ティリチ”毒トカゲ伝承にまつわる騒乱“ポール・ゴームラーのスクーター”インテリが乗るスクーター越しに見るインド伝統村社会“そして最後に祈りを”今も息づく宗教や文化の斜陽を…

「スロー・ラーナー」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家6短編集海軍・科学・スパイなど来歴や後の作風に直結するテーマが続々魅力的なダメ男や変人も多数登場“イントロダクション”“スモール・レイン”“ロウ・ランド”“エントロピー”“アンダー・ザ・ローズ”“シークレット・インテグ…

「私はゼブラ」

アザリーン=ヴァンデアフリートオルーミ著イラン系アメリカ作家“私はゼブラ!現代の女流文学騎士ドン・キホーテ!”イラン革命→米国亡命の逆を辿るピカレスク小説独学+反権力+無神論で”文学のみを愛せよ!”と父に教わる少女イタリア文学者との肉欲と情愛の虚…

「食べられる女」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家主体客体を使い分けマリッジブルーの女性を鋭く描く(1部)1人称→ (2部)3人称→ (3部)1人称街を見れば広告は男女とも消費対象であると痛感する現代資本主義社会女性の生理・キャリア・心理の葛藤に焦点を当て”食べられる女…

「路上の陽光」

ラシャムジャ著中国チベット自治区作家短編8集チベットの伝統・自然と近代化するラサを描く「ケサル王物語」等の土着神話も題材に扱う“路上の陽光”“眠れる川”“風に託す”“西の空のひとつ星”“川のほとりの一本の木”“四十男の二十歳の恋”“最後の羊飼い”“遥かな…

「わが人生の小説」

レオナルド=パドゥーラ著キューバ作家<1980年代>詩人サークル”皮肉屋たち”の仲間の誰かに追放された文学者<1830年代>独立期フリーメイソンに裏切られた若き詩人エレディア2時代を巡る”歴史×詩人×政治ミステリ”回想録が記す裏切り者とは?おお!わが人生の小…

「さびしい宝石」

パトリック=モディアノ著ノーベル賞フランス作家少女の前をすれ違った死んだはずのママン追い掛ける程にママンが塗り固めた嘘の経歴が暴かれていく思い出し知る程に少女の宝石の様な感性は煌めいていくセピア色の写真に写る“かわいい宝石”妄想と夢に希望を…