MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-05-19 to 1 day

「テント」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家35短編集“瓶”+”瓶II”+”声”=アポロンとクマエの愛の物語3部作がメインギリシア神話シェイクスピア欧米+北米の各国史ワイルドグリム童話イソップ物語お伽噺を現代を舞台にアレンジ絵画的でキレのある描写と博学な著者の散…

「かか」

宇佐見りん著サイン本1中編1短編“かか”劣等生の次女うーちゃん不倫で父逃亡後に発狂した母”かか”と冷たい祖母手術する母の痛みに呼応して痛む心と体(現代の孤独)SNS+田舎(伝統的孤独)オイディプス・コンプレックス双論を多角的に描く解説:町田康”三十一日”犬…

「バートルビーと仲間たち」

エンリーケ=ビラ=マタス著スペイン作家“バートルビー症候群”メルヴィル「書記バートルビー」に因むスランプに陥った著名作家(スペイン語圏中心)僅か4冊しか書けなかったサリンジャーフローベールに師事し成功するも発狂したモーパッサン文豪の苦悩と向き合…

「メイスン&ディクスン 下」

トマス=ピンチョン著 アメリカ作家重税と従属に抗い高まるアメリカ独立運動前夜英国→ケープ植民地→東部13植民地世界測量航海の後半善悪・人種・民族・奴隷・文化・宗教・歴史・自然・経済…全てを秩序づける”近代国境制度”を深く突き付ける喜怒哀楽を共にし…

「メイスン&ディクスン 上」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家“新大陸の地形を策定せよ!”イギリス王立協会の命で派遣された天文学者チャールズ・メイスンと測量師ジェレマイア・ディクスンの航海日誌南北戦争の発端”メイスン=ディクスン線”誕生秘話古英語調の幻獣・神話・科学の奇想…

「女王ロアーナ 神秘の炎 下」

ウンベルト=エーコ著 イタリア作家歴史と著者自身の過去を辿る旅も終盤へ神秘の炎に包まれた在りし日の女性画像”女王ロアーナ”ムッソリーニ体制に子供ながら感じた違和感と共感栄光のローマ帝国文化と”未回収のイタリア”を巡る動乱小説としても面白いが歴史…

「女王ロアーナ 神秘の炎 上」

ウンベルト=エーコ著イタリア作家・記号学者・メディア学者事故で逆行性健忘症となった患者を主人公にファシズム期イタリアを研学の著者の回想とを重ねた半自伝イタリア以外の国も含めカラー版で漫画・ポスター・風刺画・新聞・広告・風景写真・パッケージ…

「ラブアゲイン」

ドリス=レッシング著ノーベル賞イギリス作家“人は恋して愛されないと生きられないものなのよ”愛することで恋したことを忘れようとした恋することで愛したことを思い出そうとする子や孫の年齢の男に恋焦がれる劇場支配人の未亡人老女老いの心境と仕事への情…

「運命ではなく」

ケルテース=イムレ著ノーベル賞ハンガリー作家著者のホロコースト体験記同種の小説は多いが初めから”ナチ=悪”とせず少年の語彙力に合わせ善悪を判断する場面を再現アーレント「全体主義の起源」に近い広義の”ファシズム小説”弾圧〜収監〜強制労働〜開放ビネ…

「花の子ども」

オイズル=アーヴァ=オウラヴスドッティル著アイスランド作家婚外子とジェンダー格差が世界最小のアイスランド全成人女性9割がデモを起こし女性の社会進出が成功した大学進学を諦め趣味の園芸で稼ぐ青年突然に子供ができ戸惑いながらも育児と家事をこなす静…

「霊山」

高行健著フランス亡命中国ノーベル賞作家・戯曲家・水墨画家誤診で癌と申告された著者の”霊山参拝”奇数章:”おまえ”の中国大陸横断記偶数章:”私”の情愛性愛記徐々に交わる”2人”江蘇省〜青海省の少数民族・伝統呪術的生活文化大革命を生きる男女の記録霊感の迸…

「疎外と叛逆」

“疎外=孤独の芸術的創造者”ガルシア=マルケス“叛逆=反権力地図の分析者“バルガス=リョサインタビュアー:エレナ=ポアトニウスカラテンアメリカ文学ノーベル賞作家2巨頭の対談「百年の孤独」「落葉」「緑の家」「都会と犬ども」制作秘話情熱と鋭い考察に満…

「盆栽/木々の私生活」

アレハンドロ=サンブラ著チリ作家・詩人2連作中編 徒然のまま針金に沿うまま思うがままに我儘のママ盆栽にして凡才の人生嗚呼これぞ木々の私生活なり 日本愛好家の著者の散文形式の叙情詩ネルーダとミストラルという2人ノーベル賞詩人を輩出した”詩人国家チ…

「マザリングサンデー」

グレアム=スウィフト著イギリス作家映画化原作第一次大戦後1924年“メイドが母や故郷に帰る日”マザリングサンデー親不在の孤児のメイドが富豪に処女を与えた日恋して本を読み階級に抗い小説家として成功する彼女の人生の年代記英国メイド版「女の一生」&「日…

「たんぽぽ」

川端康成著日本ノーベル賞作家未完の遺作たんぽぽ咲く長閑な田舎の精神科医通称”きちがい病院”好意を持つ者の身体が見えなくなる架空の病”人体欠視症”の娘その近親者の心理を深く探る実践的小説主人公が回想や夢でしか登場しないのが不気味自殺した著者の狂…

「子供時代」

リュドミラ=ウリツカヤ著ロシア作家6短編集著名画家の素敵なイラスト付き(短編用に作られていない)全編ソ連期の子供が主人公ベートーヴェン演奏禁止の話や子供のおつかい話が印象的“キャベツの奇跡”“蝋でできたカモ”“つぶやきおじいさん”“釘”“幸運なできご…

「氷の城」

タリアイ=ヴェーソス著ノルウェー作家転入直後に運命的な出会いを感じた2人の少女ウンとシス思春期の複雑な心情を胸に静かに繊細に惹かれ合うしかし滝麓の雪と清流の建築”氷の城”に囚われてしまうウン誓いを忘れず捜索を続けるシスと仲間たちだが…?美しき…

「澄みわたる大地」

カルロス=フエンテス著メキシコ作家実験的処女作にして傑作政治家軍人先住民市民斬新な技法で50もの職種や階級に語らせた”都市=主人公”の多声的都市小説現在は人口1500万と東京都以上の大都市メキシコシティ革命後の市街の喧騒と日常が鮮やかに描かれた”澄…

「生埋め」

サーデグ=ヘダーヤト著イラン(カージャール朝〜パフレヴィー朝)作家7短編集ヘダーヤト家は首相も輩出した文官名家三島やルシア・ベルリンを想起する”死”を意識したキレのある作風“幕屋の人形”“タフテ・アブーナスル”“深淵”“捨てられた妻”“S.G.L.L”“生埋め”“…