MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-05-01 to 1 month

「世界史の哲学4 イスラーム篇」

商人の預言者 神との契約論 一神教信仰 法学至上主義 文明の交差点 最先端科学萌芽地 “最も資本主義経済発生要素が強い”はずのイスラーム文明がなぜ今現在も適合困難なのか? 異教徒徴奴隷による世襲抑制などイスラーム独自の仕組みから中印欧文明と比較した…

「ファティマ」

レイラ=セバール著 アルジェリア系フランス作家 パリ郊外移民街集合団地の辻公園 そこでは日々アルジェリア移民女たちの多種多様な話題で井戸端会議が尽きない 儀礼・DV・割礼・ハマム・レイプ・愚痴・殺人・重労働・礼拝… フランス人でもアルジェリア人で…

「ケマル・アタテュルク」

軍人・読書人・ギリシア出身・酒豪・民族主義者・再々婚・独裁者・虐殺者… 神話化の反動が現エルドアン政権イスラム回帰の背景 対列強侵略戦争指揮 ガリポリの戦いで唯一連合軍(チャーチル)に圧勝し英雄へ 熾烈な権力闘争 政教分離とオスマン帝国終幕 福祉・…

「理由のない場所」

イーユン=リー著 中国系アメリカ作家 華々しい作家歴の裏で長男を自殺で失った著者 自身もその悲しみから自殺未遂し漸く持ち直した 想像を絶する絶望の中で筆をとり亡き我が子へ語りかけることで心を埋めようとする 過去・現在・未来もない時間の止まった”…

「マグレブ/フランス周縁からの文学」

フランスは植民地に直接統治で自国文化を強制した 結果フランス語圏文学は英語圏より豊穣で密接となった マグレブ出身のフランス語話者4作家を軸に紹介しマグレブ文学史を概観 タハール・ベン・ジェルーン アシア・ジェバール レイラ・セバール ヤミナ・ベン…

「ハルビン」

キム=フン著 韓国ジャーナリスト・作家 “ウラー!(ロシア語:万歳)”という言葉と共に銃声が響いた 1909年10月16日 ロシア蔵省ココツェフとの会談に向かう途中ハルビン駅にて伊藤博文銃殺 犯人は30歳カトリック教徒”自称無職・煙草屋・猟師”安重根 神話化され…

「神聖ローマ帝国」

寿命850年の“神聖でもローマでも帝国でもない”国家 オットー朝:帝国教会政策 ザリエル朝:聖職叙任権闘争 ルクセンブルク朝:十字軍/金印勅書/東方植民 ハプスブルク朝:宗教改革/対オスマン帝国/世襲化/継承戦争/三十年戦争/ライン同盟/ナポレオン戦争 EU原点…

「プロット・アゲンスト・アメリカ」

フィリップ=ロス著 アメリカ作家 もしも大統領が連合軍の味方ルーズヴェルトではなく反ユダヤ親ナチ英雄飛行家リンドバーグだったら? ユダヤ迫害に堕ちる超大国と膨張する枢軸国をあくまで家族史の枠内に留めながら少年視点で描いていく様が史実かと思う程…

「戦後フランス思想」

サルトル:実存主義 カミュ:不条理 ボーヴォワール:女性解放 メルロ・ポンティ:知覚芸術 バタイユ:内的体験 文学と哲学と政治的社会参加(アンガジュマン)を融合した構造主義台頭までの総合知識人の時代 ノーベル文学賞受賞者最多18人輩出の”文化の国”が牽引し…

「おらおらでひとりいぐも」

若竹千佐子著 芥川賞受賞作 専業主婦人生を全うした74歳 夫も先立ち子供も自立して自分の人生の意味と今を生きる理由を考え直す”第2の人生”の旅へ! 1人称:東北弁 3人称:標準語 老境と人称と多声を駆使した巧みなプロットが上手い “若くて新しい高齢者の文学”

「共喰い」

田中慎弥著 2中編 戦争で分かる通り人間の本質は本能の趨いた暴力性だ 従い”暴力”と”性”を的確に描く作品は良作と言える “共喰い” 芥川賞受賞作 典型的オイディプスコンプレックス作品 しかし展開とテンポが上手く面白い “第三紀層の魚” 一転して曾祖父と祖…

「カルタゴ興亡史」

3度に及ぶシケリア戦争とポエニ戦争 レバノン本国ティルスからの自立 ヌミディア人の統率 ギリシア植民市シラクサ科学者アルキメデスと王ゲロンとの対立とハミルカルの勝利 スペイン建国 ローマとハンニバルの覇権抗争 スキピオによる殲滅作戦 グラックスと…

「イブン・バットゥータの世界大旅行」

実は黒海沿岸もベトナムも中国も行ってない? マリーン朝モロッコ稀代の旅人 「諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物」 別名「大旅行記」完訳者の研究書 メッカ巡礼とアラブ放浪 インドとモルディブ法官時代 晩年のアンダルシア聖戦とマリ…