MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-07-07 to 1 day

「人生の親戚」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家“悲しみよこんにちは”人生は喜怒哀楽を共にする親戚だ先天/後天的に障害者の兄弟を自殺で失ったオコナー研究者の母その半生を小説に書く同じく障害者の長男を持つ作家K(=大江)理不尽な運命に翻弄される”女の一生”の強さと脆さ…

「個人的な体験」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家半自伝新生児が障害を持つ可能性を知り酒と情事とアフリカ移住に現実逃避する青年”鳥(バード)”コネで得た塾講の仕事も馘首される中でカフカとブレイクの言葉を機に現実と向き合い始めていく閉塞社会糾弾から現実の受容と挑戦…

「みずから我が涙をぬぐいたまう日」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家2中編<あの人=父=純粋天皇>を問う2作“みずから我が涙をぬぐいたまう日”満州な出兵した父を晦渋な文体で回顧拘泥の中で血と涙を拭う少年“月の男”アポロ計画脱走者のブラックユーモア物語“鯨+木+鳥”=環境と自虐と神話を想起 漱…

「見るまえに跳べ」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家10短編集・人間の家畜化・後の長編の雛形話・性的人間の孤独・闇バイト・現実逃避・femme fatale・高等教育の欺瞞“奇妙な仕事”“動物倉庫”“運搬”“鳩”“見るまえに跳べ”“鳥”“ここより他の場所”“上機嫌”“後退青年研究所”“下降生活…

「性的人間」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家3中編集“性的人間”<痴漢が主題の嵐のような詩>を夢見る若者と彼に心酔する”性的人間”の痴漢同盟の末路“セヴンティーン”17歳で右翼化した政治的人間の末路(続編の第2部もあるが脅迫で50年後に書籍化)“共同生活”監視に怯えなが…

「日本語と日本人の心」

大江健三郎(日本ノーベル賞作家)&谷川俊太郎(日本詩人)&河合隼雄(日本心理学者)共著小樽ファンタジー賞創設に伴う対談集日本語とドイツ語とフランス語と英語の分野も違う達人の”言葉をめぐる心の在り方”文化と思想が言葉を生み国民を緩やかに形成するその豊…

「ヒロシマ・ノート」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家中期作品の主題”核戦争”を見出した若き天才作家の原点原水爆禁止世界大会下の広島見聞録アレクシェーヴィチ級のルポは勿論その文学思想における”人間的悲惨”の救済に至る求道の決意原爆病患者と被曝者の怒りと悲しみを世界に…

「”話して考える(シンクトーク)”と”書いて考える(シンクライト)”」

大江健三郎著日本ノーベル賞作家公演集挨拶一言程度の公演すら念入りに原稿を推敲する大江さん(閣僚よ見習え…)小説も新聞もSNSも学術書でさえも口語文体が一般化して論理性が不十分な文が増えたと嘆く活字文化の重要性を再認識