MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-01-01 to 1 month

「同調者」

アルベルト=モラヴィア著イタリア作家“同調”は恐ろしい“圧力”が加われば尚更だ少年編:13歳で銃殺青年編:”同調”を装い世渡り中年編:秘密警察となりパリで妻を持ちながら暗殺計画と諜報活動戦後編:”敗戦国の残党スパイ”の末路とは…?ピカレスク小説ながら人間…

「波との生活」

#一日一編2作目オクタビオ=パス著ノーベル賞メキシコ詩人・作家・評論家“女の波”に恋した”人間の男”のシュールレアリズム擬人化した”波の女”の描写がfemme fataleで美しく妖艶”人間の男”は波に群がる魚への嫉妬が無邪気で可愛らしい自然描写は少ないが不思…

「南部高速道路」

#一日一編1作目フリオ=コルタサル著アルゼンチン作家再読有名な短編パリ行き高速道路で大渋滞それが何ヶ月にも及ぶというマジックリアリズム途中で食糧・物資配給の共同体が自然発生交際→結婚→出産死者と弔問交代制仮眠数多の出来事が渋滞中に起こり最後は…

「話の終わり」

リディア=デイヴィス著アメリカ作家“話の終わり”それは作家にとって”作品の誕生日”一杯の紅茶が呼び覚ます記憶を辿る旅プルースト「失われた時を求めて」と同形式12歳下の男性への恋と嫉妬を風景心象まで精細に再現アニー・エルノー「嫉妬」と同じ粗筋“短編…

#一日一編

本日より#一日一編で「池澤夏樹 世界文学全集 短編コレクションI & II」の世界各国40短編を読み進めていく 「コレクションI」:南北中米・アジア・アフリカ「コレクションII」:ヨーロッパ 有名な短編も多く懐かしい再読作もある既知の作家=37人既読の短編=9作…

「古代エジプトの日常生活」

“エジプトはナイルの賜物”規則正しい氾濫で大量収穫を見込め砂漠と海の天然の要塞で外敵も来ない故にほぼ3000年間固有の文化を維持し且つ現存する驚異の古代文明その日常生活を小説形式で王家や神官の儀式から庶民の宴会まで幅広い年間行事を種蒔き〜収穫に…

「首里の馬」

高山羽根子著芥川賞受賞作世界中の孤独者を相手にクイズ交流で精神的ケアを図る仕事“問読(トイヨミ)”沖縄の支援もない孤独な地元の個人郷土資料館2つの仕事を通じて”記録”と”記憶”という文化芸術維持の大切さを痛感する少女人間が風化させる小さな文化の意義…

「パン屋再襲撃」

村上春樹著6短編集お馴染みの渡辺昇が登場「ねじまき鳥クロニクル」原形作も収録“パン屋再襲撃”“象の消滅”“ファミリー・アフェア”“双子と沈んだ夜”“ローマ帝国の崩壊・1881年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界”“ねじまき鳥と…

「世界の音」

楽器の歴史は音楽文化の歩み世界各国の楽器と音楽理論史紹介故国の楽器を英国に封印された黒人奴隷が米国廃棄物のオイルタンクで作ったトリニダードのスチールドラム音楽は呪術的起源を持ち儀式と宗教の歴史と不可分学問・理論的なヨーロッパ音楽食器・呪術…

「ハワーズ・エンド」

エドワード=モーガン=フォースター著イギリス作家ロンドンの邸宅街が一角”ハワーズ・エンド”商魂巧みなドイツ系上流階級の青年文芸豊かなイギリス系中流階級の娘価値観の違いゆえ惹かれ合う2人はその壁を乗り越えて婚姻できるのか?触れ合いやすれ違いの機…

「浅草紅団・浅草祭」

川端康成著日本ノーベル賞作家2連作中編浅草ブーム嚆矢作新宿・渋谷・池袋など西東京開発以前の”若者の街”だった浅草嫋やかな遊女古き良き祭囃子“浅草紅団”著者自身が語り手となり浅草に意気揚々と闊歩した叙景詩“浅草祭”続編前作で十分に描けなかった下町を…

「女殺人者」

アレクサンドロス=パパディアマンティス著ギリシア作家“スパルタ教育”古代ギリシア都市国家スパルタでは貧弱な新生児を谷へ落とす習慣があったごく普通の老女の正体は無辜な少女の大量殺人者インド同様に莫大な花嫁持参金が必要な文化圏や貧困社会で”その禁…

「マリーナ30番目の恋」

ウラジーミル=ソローキン著ロシア作家ソ連期モスクワ初体験は父性欲覚醒は幼稚園時代政権を愚痴るレズ音楽教師の破天荒な堕落的生活と”経験人数30人達の遍歴”そんな彼女が人生30番目の恋で優等作業員に覚醒していくそして訪れる”あの日”…!今は亡き貴重なソ…

「アレクシェーヴィッチとの対話〜小さき人々の声を求めて〜」

スヴェトラーナ=アレクシェーヴィッチ著ノーベル賞ベラルーシ作家“赤い帝国”ソ連とは何だったのか?“耳の作家”の語る「ユートピア5部作」創作裏訴訟も国外追放も監禁も経た現在“チェルノブイリの再来”福島原発事故被災地訪問も収録

「キリストは再び十字架にかけられる」

ニコス=カザンザキス著ギリシア作家聖書・民族主義文学・難民問題・方言をユーモラスに描く傑作オスマン帝国ギリシア人村イエス復活祭再現劇の役者を募る地元教会トルコvsユダvsイエス受胎→受容→受難→受刑イエス役美少年に待つ”茨の道(Via Dolorosa” 如何に…

「したい気分」

エルフリーデ=イェリネク著ノーベル賞オーストリア作家歴史的に男性の”したい気分”に翻弄され続けてきた女性の声を皮肉ポルノ文体で解放音楽的文体・韻文・多声性(女性)・隠喩・反復・固定拍子これだけで既に過去最高度の技巧個人的に弦楽多重奏狂詩曲(ラプ…

「犬が尻尾で吠える場所」

エステル=サラ=ビュル著ベルギー+グァドループ系フランス作家2出自3人姉妹の”クレオール語”家族語り休暇に訪れる故郷の過去のコラージュ旅行噺クレオール化したフランス人フランス化したクレオール人文法も時代も国境も越えていく新しい世界“犬が尻尾で吠…

「十一月の嵐」

ボフミル=フラバル著チェコ作家10短編集プラハの春〜ビロード革命の苦悩の日々を綴った半自伝“魔笛”“沈める寺院”“公開自殺”“幾つかのセンテンス”“競馬の競走路での三本足の馬”“グレイハウンド・ストーリー”“ホワイト・ホース”“十一月の嵐”“人間の鎖”“ぎりぎ…

「グリーン・ロード」

アン=エンライト著アイルランド作家“我が家を売る”その言葉で始まる家族総勢25年ぶりの帰国&クリスマス地味な亡き父感情的な未亡人の母兄:NYのゲイ詩人弟:マリで慈善活動姉:4児の幸せママ妹:出産で女優休業中多くの挫折と少しの成功ぎこちなくも暖かく交わ…

「ホワイトノイズ」

ドン=デリーロ著アメリカ作家全米図書賞受賞作周波数の均等な心地良い雑音”ホワイトノイズ”メディア操作・陰謀論・環境汚染・疫災・優生学・薬物乱用・信仰・オカルト・セックス・大量消費社会…多様な恐怖が死に収束しゆくヒトラー学権威とその家族崩壊を描…

「花びらとその他の不穏な物語」

グアダルーペ=ネッテル著メキシコ作家6短編集“眼瞼下垂”瞼偏愛症の奇行“ブラインド越しに”覗き魔の思考“盆栽”自身を盆栽と思い込む(村上春樹的)“桟橋の向こう側”本物の孤独探し“花びら”嗅覚ストーカー“ベゾアール石”似た者同士なのにすれ違う恋人

#名刺代りの作家

リョサパムクアトウッドカダレマルケスクッツェール•クレジオ莫言イシグロピンチョン三島マフフーズアディーチェラシュディ閻連科マンロープラムディヤボラーニョフォークナー呉明益マンモディアノドストエフスキーサラマーゴ

「文学は予言する」

私見だが予言・分析・芸術の不足した文学は文学と認めたくない“文学は予言する”故に三島も芥川も太宰も予感した地獄が訪れる前に自殺した・ディストピア・シスターフッド・生まれつき翻訳翻訳家目線で3点から世界文学を追求する試み現代日本の言論の自由迫害…

「ブルックリン・フォリーズ」

ポール=オースター著アメリカ作家NYで最も多様な人種が日々すれ違うブルックリン地区元保険屋の男は老境で離婚し古本屋に携わるながら愛しい街の人々(Follies)を描く小説「人間愚行の書」執筆を開始2001.9.11までの”Bell Epoch”を描く生き生きとした悲喜劇…

「純粋な人間たち」

モハメド=ムブガル=サール著セネガル作家“純粋な人間たち”ほど始末が悪いイスラーム回帰を目指すセネガルでLGBTQ排除運動勃興折しもランボーと同性愛だったヴェルレーヌの詩を研究する若き教授にも飛び火し大学から迫害を受けるマイノリティに注目した途上…

「樵るー激情」

トーマス=ベルンハルト著オーストリア作家世紀末退廃文化に辟易し長年を田舎で過ごし芸術家晩餐会に招かれウィーンに帰還した小説家独白形式で毒舌と呪詛を連ねていく著者自身と重なる激情の”意識の流れ”過去と現在が猥雑に交錯する中で木樵が最高という結…

「そば学大全」

病気と寒冷に強く成長も早いヘルシー食品の非常食の歴史が長いそば伝統的日本食と思われがちだが世界各地にそば文化は存在する“そば粉グレープ”ガレット(フランス)“そば粥”カーシャ(ロシア)“雲南そば”ヘイロ(中国)“パスタ風そば”ピッツオッケリ(イタリア)“キ…

三島由紀夫全60読破記念総書評

森鴎外の硬派な美文谷崎潤一郎のサド気質川端康成の詩的感性法学的二項対立の文章構造古典・芸術・歴史・文化の博識ボディビルで鍛えた肉体過激な政治行動完璧すぎる純文学鋭い戯曲と批評国際色豊かなエンタメ文学享年45歳活動期間23年自殺まで60冊を残した …

「戦後日記」

三島由紀夫著昭和30〜40年昭和と共に歳を取った”戦後日記”「鏡子の家」執筆の記録ボディビル日記川端康成などの文豪との交流妻と子との思い出戦争の記録と政治闘争新聞・雑誌・長編の連載記録文学論オペラ鑑賞国内外旅行記マメな文豪の不安や諦念の声がリア…

「繁花 下」

金宇澄著 中国作家歴史地区”外灘”年寄りの愚痴子供の笑い声地元メシの屋台商売の喧騒路地裏の娼婦怪しい取引かつて世界中のスパイとアジア最高峰の金融機関が犇き貧富の格差と売春が蔓延った上海の”繁花街”人口も増え最新の高層建築が空を覆う最富裕層の街眩…