MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-01-20 to 1 day

「十六夜橋」

石牟礼道子著故郷”伝統家屋と廓の街”熊本対岸にある”異国の窓口”長崎死者の淡い想い出を方言や土着の文物を用いた優しい走馬灯はマジックリアリズム風でもある詩的で美しい自然描写が魅力で特に植物名と伝統工芸品に詳しい死者の幻想生者の夢想三途を隔て彼…

「臨海楼奇譚(新アラビア夜話2部)」

ロバート=ルイス=スティーブンソン著イギリス作家4短編集同著者「新アラビア夜話」続編「千一夜物語」の舞台をロンドンの街と住人に置き換えた作品“南海楼奇譚”“その夜の宿”“マレトロワの殿の扉”“天意とギター”情動的作風で静物的なボルヘス等とは好対照

「肉の家」

#一日一編6作目ユースフ=イドリース著エジプト作家現代イスラム社会の禁忌”性欲”を小説で初めて真向から捉えた反体制派の先鋒恋愛婚でなく見合婚で盲の婿を用意される娘ぎこちない生活と西洋的社会が忘れた道徳的退廃一夫多妻制など伝統社会に置き去りの伝…

「イザベルにーある曼荼羅」

アントニオ=タブッキ著イタリア作家サラザール独裁下ポルトガル獄中で死んだというイザベルだが彼女の遺体は見つからなかった男は数少ない消息情報を元に世界各国を放浪し9人の多職な証言者に出会うスイスイタリア香港インド曼荼羅を彷徨う果ての結末や如何…

「色・戒」

#一日一編5作目張愛玲著アメリカ亡命香港作家映画化原作長編「傾城の恋」で有名日露戦争全権大使の李鴻章の曾孫上海と香港の租界に蠢く日中戦争期スパイ恋・陰謀・腐敗・革命・サバイバル…日本人や印僑も登場する国際都市の静かな”もう1つの戦争”を描く短編…

「アルジャーノンに花束を」

ダニエル=キイス著アメリカ作家“ぼくあたまわりいからしじつで天才になる”32歳無知から全能へ天才となり初めて知る愛と孤独 愛を込めて花束を大袈裟だけど受け取って理由なんて聞かないでね今だけ全て忘れて笑わないで受け止めて本当の私をいつまでも側にい…

「タルパ」

#一日一編4作目ファン=ルルフォ著メキシコ作家「ペドロ・パラモ」著者の描く猥雑な母国皮膚が膿んで爛れた家族を神の”宗教的奇跡”に縋り必死で恢復を祈る呪術的な髑髏や死者の祭で有名な国メキシコその描写がリアルで著者が経験してきた大衆の生活と同じだ…

「欠落ある写本」

カマル=アブドゥッラ著アゼルバイジャン古典学者・作家15世紀テュルク英雄叙事詩「デデ・コルクトの書」冒頭と結末が不鮮明な発掘写本を著者が想像補完サファヴィー朝イスマーイール1世がチャルディラーンで戦死し王の影武者が君臨(史実では生存)スパイ探索…

「エバ・ルーナのお話」

イサベル=アジェンデ著チリ作家23連作短編集同著者長編作「エバ・ルーナ」のスピンオフ短編ながら数十年の期間を扱い著者得意のマジックリアリズムと相性が抜群エバの話の形もキャラも「千一夜物語」のシェヘラザードを踏襲南米社会の奇跡から日常まで多彩…

「白痴が先」

#一日一編3作目バーナード=マラマッド著ユダヤ系アメリカ作家39歳の白痴の息子をカリフォルニアの伯父の元へ送る旅その為に残る持金と命の灯火を振り絞り奔走する貧しい老父残酷な現実と微かな希望を絶妙なタイミングで交代進行させるのが上手い謎の人物登…

「同調者」

アルベルト=モラヴィア著イタリア作家“同調”は恐ろしい“圧力”が加われば尚更だ少年編:13歳で銃殺青年編:”同調”を装い世渡り中年編:秘密警察となりパリで妻を持ちながら暗殺計画と諜報活動戦後編:”敗戦国の残党スパイ”の末路とは…?ピカレスク小説ながら人間…

「波との生活」

#一日一編2作目オクタビオ=パス著ノーベル賞メキシコ詩人・作家・評論家“女の波”に恋した”人間の男”のシュールレアリズム擬人化した”波の女”の描写がfemme fataleで美しく妖艶”人間の男”は波に群がる魚への嫉妬が無邪気で可愛らしい自然描写は少ないが不思…

「南部高速道路」

#一日一編1作目フリオ=コルタサル著アルゼンチン作家再読有名な短編パリ行き高速道路で大渋滞それが何ヶ月にも及ぶというマジックリアリズム途中で食糧・物資配給の共同体が自然発生交際→結婚→出産死者と弔問交代制仮眠数多の出来事が渋滞中に起こり最後は…

「話の終わり」

リディア=デイヴィス著アメリカ作家“話の終わり”それは作家にとって”作品の誕生日”一杯の紅茶が呼び覚ます記憶を辿る旅プルースト「失われた時を求めて」と同形式12歳下の男性への恋と嫉妬を風景心象まで精細に再現アニー・エルノー「嫉妬」と同じ粗筋“短編…

#一日一編

本日より#一日一編で「池澤夏樹 世界文学全集 短編コレクションI & II」の世界各国40短編を読み進めていく 「コレクションI」:南北中米・アジア・アフリカ「コレクションII」:ヨーロッパ 有名な短編も多く懐かしい再読作もある既知の作家=37人既読の短編=9作…

「古代エジプトの日常生活」

“エジプトはナイルの賜物”規則正しい氾濫で大量収穫を見込め砂漠と海の天然の要塞で外敵も来ない故にほぼ3000年間固有の文化を維持し且つ現存する驚異の古代文明その日常生活を小説形式で王家や神官の儀式から庶民の宴会まで幅広い年間行事を種蒔き〜収穫に…