MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-06-01 to 1 month

「ワインの科学」

ワインを作る葡萄は実質1種類のみその1種をどう育てるかがワインの全てコルク・酵母・気候・蒸留・イエスの血・酸素濃度・PHこの化学反応がワインを醸造マスカットはレーズンとワイン用の葡萄本を肴に松坂牛BARで30分¥600樽ワイン飲み放題&アヒージョ最高♡(…

「世界史の叡智 悪役・名脇役編」

現行の世界史教科書は”西洋が覇権を制した理由”に詳しい200年後の教科書には”西洋の覇権はなぜ100年しか持たなかったのか?”となっているだろう特に世界史は時代や国で評価が変わる映画監督や皇帝に修道女まで賛否両論の評価を持つ”世界史の叡智”51人を簡潔…

「龍の起源」

東洋では神獣西洋では悪魔古今東西の伝説で最高位の存在”龍”既に殷(前1400年)の甲骨文字に”龍”の字を確認可能リヴァイアサン八岐大蛇(大和大蛇)ウラエウスケツァルコアトルナーガ青龍ヴリトラヨルムンガルドウロボロスワイバーン龍=蛇行する川神洪水伝説の…

「死刑囚最後の日」

ヴィクトル=ユゴー著フランス文豪の初期作死刑制度廃止を訴える為に執筆した主人公の死刑囚に名も職も年齢も伏せて普遍的共感を呼ぶまた1日という短期間で迫る恐怖と緊張感を演出欧米は死刑制度ほぼ全廃を達成したが日米中は未実現だが遺族や治安の悪化と難…

「空気の名前」

アルベルト=ルイ=サンチェス著メキシコ作家舞台はモロッコ描写はイスラム主題は思春期少女の成長技法は魔術的リアリズム文体は散文詩エッサウィラ(旧モガドール)を訪れメキシコ文化の根底にスペイン=イスラム性を感じて書いた作品フランス詩に近い芳醇な…

「豊乳肥臀 下」

莫言著 中国ノーベル賞作家ドイツの膠州湾侵略日本鬼子侵略国共内戦アメリカ圧迫鳥男など幻想文学も交え大躍進政策下の農民の貧困・男尊女卑・賄賂・失政・一族主義を活写今も中国で発禁歴史的に中華王朝は農民反乱で滅びており共産党は民衆抑圧に躍起不思議…

「豊乳肥臀 上」

莫言著中国ノーベル賞作家中国魔術的リアリズム意味は“巨乳と巨尻”現代女性の巨乳化は著しい乳房と臀部は女性の生活水準を語る乳房偏愛症候群の主人公更に8姉妹を通じ現代中国女性の地位と共産党支配の変遷50年を描く“1P5乳”と言う位おっぱいがいっぱい出て…

「アメリカにいる きみ」

チママンダ=ンゴズィ=アディーチェ著ナイジェリア作家アメリカとアフリカの歴史文化的な違いを繊細に描く短編10集短編ながらのめり込むほど感情移入したビアフラ戦争や性差に言語問題まで細やかに精緻する収録短編「半分のぼった黄色い太陽」は長編化され…

「シェヘラザードの憂鬱」

ナギーブ=マフフーズ著ノーベル賞エジプト作家「千一夜物語」ヒロインのシェヘラザードとシャハリヤール王の後日譚王は過去の虐殺で心を病み彼女もそんな王を見て鬱屈そこにイフリート(悪霊)が解放され淫罪や殺人が横行アラジンやせむし男も再登場するが結…

「イワン=デニーソヴィチの1日」

アレクサンドル=ソルジェニーツィン著ソ連ノーベル賞作家ソ連期のラーゲリ(強制収容所)の囚人生活を描く構成は「死の家の記録」に近いが労働者が快活で極寒での餓死より重労働を楽しむともすれば集団に抑圧されがちな社会主義で強く美しい”個”の囚人の1日に…

「ロボット」

カレル=チャペック著チェコ劇作家ユダヤのゴーレムに肖りこの小説から“ロボット”の語は生まれた進化し過ぎたロボットが人間を不要とし滅亡を企てるむしろAI暴走やターミネーターに近い内容既にAI恋人も法的に可能となる中”ロボット”をどう定義するか?古典…

「ハルーンとお話の海」

サルマン=ラシュディ著インド作家壮大な世界観の「真夜中の子供たち」と異なり独特で緩いファンタジー童話語り部親子のハルーン中心にオハナシの国とボスのイッカンノオワリからの姫救出作戦に挑むヒンディー語と英語の混淆という類を見ない文体と自由すぎ…

「サンクト=ペテルブルク」

モスクワ以前の首都”ピーテル”ピョートル大帝がネヴァ川に築いた人工都市青銅の騎士像エルミタージュネフスキー通り血の上の救世主教会イサーク大聖堂ドストエフスキーやプーシキンはこの街を知らずして読めないソ連期に多くの教会が破壊されたが尚も美しい…

「オリクスとクレイク」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家マッドアダム3部作第1部近未来科学ディストピアウィルスで人類がほぼ全滅し生存者も一部エリートが多数のスラムを従属遺伝子工学の発展で歪む倫理感生きてきた世界が書き換えられていく恐怖現在と過去の交錯の果てに見…

「中国の歴史7 中国思想と宗教の奔流」

“科挙”の正式名称は”選挙(郷挙里選)”“科”は進士科など更に分化した名称それ程に文治主義が完成し安定した時代中国史上最小ながら初めて人口1億を超え思想・文化の礎を築いた宋紙幣・喫茶・陶磁・書道・火薬・印刷・農技術で江南が発達中国文化完成期を読む

「19世紀イタリア怪奇幻想短編集」

知られざる19世紀イタリアの怪奇幻想作家9短編集田舎の農民のホラー話から近未来の世界国家独裁者が君臨するSFまで幅広いテーマと世界観を堪能ポーやロマン派の影響も大きいブッツァーティやカルヴィーノ等の現代幻想文学の巨匠達にも連なる粒揃いの新鮮な古…

「イスタンブール」

オルハン=パムク著 ノーベル賞トルコ作家“エステンボリン(その街へ)”即ちイスタンブール少年は画家に憧れ筆を取る500Pで多数の写真と共に半自叙伝を語る西洋化で日毎に喪失さるオスマン帝国の遺産その葛藤と誇りを糧にするパムク文学の神髄青年は作家を決意…

「なぜ古典を読むのか」

イタロ=カルヴィーノ著イタリア作家 幻想作家の古典書評古典の価値は以下の通り•純粋に面白い•だからこそ読み継がれている•読むこと自体が教養•過去を擬似体験可能•海外文学なら地理文化言語も含む•温故知新がある•逆に人間の普遍性に気付かされる古典お勧…

「崩壊」

オラシオ=カステジャーノス=モヤ著エルサルバドル作家外の”崩”内の”壊”頽れる”崩壊”3部構成で時代と語り手が変わる1部:家庭崩壊(縁戚関係の難しさ)2部:サッカー戦争(隣国・大国関係の難しさ)3部:使用人(職場関係の難しさ)名門一族の”崩壊”を疾走感ある文体…

「ぼくはスピーチをするために来たのではありません」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著ノーベル賞コロンビア作家スピーチ嫌いな彼の僅か22のスピーチ集ノーベル賞授賞式の名演説”ラテンアメリカの孤独”熱気と貧困と孤独が南米幻想文学を生むとは納得コルタサルとフエンテスとのチェコ旅行も唆る

「塩の世界史 下」

島国の日本は塩田だが世界では岩塩や塩湖が非常に多い鱈と鰊の塩漬けで大航海や北海貿易を活発化させたオランダ塩税ガベルから革命が起きたフランス“塩の行進”で大英帝国を震撼させたガンディーシェフでもある著者のレシピ付き人類の舐めてきた塩辛い歴史を…

「塩の世界史 上」

soldiersalarysalesalad全て塩が語源人類が唯一食する鉱物塩化ナトリウム(Nacl)通貨・調味料・保存・美容・栄養・税目・魔除け・雪溶黄帝は都江堰を築き塩害を排して名声を得た穀物に塩分はなく死海が最古のメソポタミア文明付近なのは偶然ではない塩の世界…

「東方見聞録」

マルコ=ポーロ著 イタリア紀行家中国の文献に記述がなく現在は存在自体が疑問視されるマルコそれでも中世人は本書に魅せられ大航海へ乗り出した“黄金のジパング”を西洋へ初めて記載したヴェネツィア〜タブリーズ〜ウイグル〜北京〜雲南〜インド海岸制度・文…

「神曲 天国篇」

ダンテ=アリギエーリ著 イタリア詩人ベアトリーチェが導く先は天国9つの天使や太陽系に見立てた天界を渡り歩き聖人や神学論争を織り混ぜダンテの理想的な宗教・政治世界を反映ギリシア・ローマや中世の偉人達を秤にかける神たち自身を政界から追放したフィ…

「神曲 煉獄篇」

ダンテ=アリギエーリ著 イタリア詩人古来より人類は死後の天国と地獄を崇め畏怖し芸術の対象としてきたダンテは新たに罪の浄化の場として”煉獄”を創造した(今もカトリック等では不承認)亡者は煉獄で七つの大罪を償い天国を目指す引導はヴェルギリウスから現…

「神曲 地獄篇」

ダンテ=アリギエーリ著イタリア詩人TIME誌で世界文学史上最高傑作に戴く全ルネサンスの嚆矢驚異の想像力で地獄を組み立てるイスラムでは悪書西洋では聖書に次ぐ聖典案内役はヴェルギリウスダンテの偏見で地獄に送られたムハンマドやブルートゥスが荼毘を纏…

「白痴4」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家著者がどうしても描きたかった結末難解な精神分析と幾通りもの読み方賭博・不倫・放蕩・流刑・強制労働と壮絶な人生を送った”白痴”の著者と重なる凶悪と報道される現代の犯罪者にも彼等なりの博…

「白痴3」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家第3巻はイッポリートの告白と狂気じみたキリスト教やロシア史の闇が間接的に4人を抉る真に美しさとは残酷なのだろうか?これまでの明るいコメディタッチから急転ホラーへ善意が不和に恋慕が嫉妬…

「白痴2」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家1巻はペテルブルクへ帰還したムイシキン公爵がエバンチン家とイヴォルギン家の美少女三姉妹と邂逅し閉幕2巻は著者お得意の4主人公並列で惚れた腫れたの愛憎劇へ遺産を相続した公爵とロゴージン…

「白痴1」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ろしあ4大長編の一角にして最難関に感じたフランス心理・恋愛文学の側面とロシア残酷文学が同居“白痴(痴れ者)”は癲癇持ちの著者の半自叙伝聖書の隠喩が多く文脈に無関係で謎な文も散見トランスやゾーン状…