MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-06-14 to 1 day

「死刑囚最後の日」

ヴィクトル=ユゴー著フランス文豪の初期作死刑制度廃止を訴える為に執筆した主人公の死刑囚に名も職も年齢も伏せて普遍的共感を呼ぶまた1日という短期間で迫る恐怖と緊張感を演出欧米は死刑制度ほぼ全廃を達成したが日米中は未実現だが遺族や治安の悪化と難…

「空気の名前」

アルベルト=ルイ=サンチェス著メキシコ作家舞台はモロッコ描写はイスラム主題は思春期少女の成長技法は魔術的リアリズム文体は散文詩エッサウィラ(旧モガドール)を訪れメキシコ文化の根底にスペイン=イスラム性を感じて書いた作品フランス詩に近い芳醇な…

「豊乳肥臀 下」

莫言著 中国ノーベル賞作家ドイツの膠州湾侵略日本鬼子侵略国共内戦アメリカ圧迫鳥男など幻想文学も交え大躍進政策下の農民の貧困・男尊女卑・賄賂・失政・一族主義を活写今も中国で発禁歴史的に中華王朝は農民反乱で滅びており共産党は民衆抑圧に躍起不思議…

「豊乳肥臀 上」

莫言著中国ノーベル賞作家中国魔術的リアリズム意味は“巨乳と巨尻”現代女性の巨乳化は著しい乳房と臀部は女性の生活水準を語る乳房偏愛症候群の主人公更に8姉妹を通じ現代中国女性の地位と共産党支配の変遷50年を描く“1P5乳”と言う位おっぱいがいっぱい出て…

「アメリカにいる きみ」

チママンダ=ンゴズィ=アディーチェ著ナイジェリア作家アメリカとアフリカの歴史文化的な違いを繊細に描く短編10集短編ながらのめり込むほど感情移入したビアフラ戦争や性差に言語問題まで細やかに精緻する収録短編「半分のぼった黄色い太陽」は長編化され…

「シェヘラザードの憂鬱」

ナギーブ=マフフーズ著ノーベル賞エジプト作家「千一夜物語」ヒロインのシェヘラザードとシャハリヤール王の後日譚王は過去の虐殺で心を病み彼女もそんな王を見て鬱屈そこにイフリート(悪霊)が解放され淫罪や殺人が横行アラジンやせむし男も再登場するが結…

「イワン=デニーソヴィチの1日」

アレクサンドル=ソルジェニーツィン著ソ連ノーベル賞作家ソ連期のラーゲリ(強制収容所)の囚人生活を描く構成は「死の家の記録」に近いが労働者が快活で極寒での餓死より重労働を楽しむともすれば集団に抑圧されがちな社会主義で強く美しい”個”の囚人の1日に…

「ロボット」

カレル=チャペック著チェコ劇作家ユダヤのゴーレムに肖りこの小説から“ロボット”の語は生まれた進化し過ぎたロボットが人間を不要とし滅亡を企てるむしろAI暴走やターミネーターに近い内容既にAI恋人も法的に可能となる中”ロボット”をどう定義するか?古典…

「ハルーンとお話の海」

サルマン=ラシュディ著インド作家壮大な世界観の「真夜中の子供たち」と異なり独特で緩いファンタジー童話語り部親子のハルーン中心にオハナシの国とボスのイッカンノオワリからの姫救出作戦に挑むヒンディー語と英語の混淆という類を見ない文体と自由すぎ…

「サンクト=ペテルブルク」

モスクワ以前の首都”ピーテル”ピョートル大帝がネヴァ川に築いた人工都市青銅の騎士像エルミタージュネフスキー通り血の上の救世主教会イサーク大聖堂ドストエフスキーやプーシキンはこの街を知らずして読めないソ連期に多くの教会が破壊されたが尚も美しい…

「オリクスとクレイク」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家マッドアダム3部作第1部近未来科学ディストピアウィルスで人類がほぼ全滅し生存者も一部エリートが多数のスラムを従属遺伝子工学の発展で歪む倫理感生きてきた世界が書き換えられていく恐怖現在と過去の交錯の果てに見…

「中国の歴史7 中国思想と宗教の奔流」

“科挙”の正式名称は”選挙(郷挙里選)”“科”は進士科など更に分化した名称それ程に文治主義が完成し安定した時代中国史上最小ながら初めて人口1億を超え思想・文化の礎を築いた宋紙幣・喫茶・陶磁・書道・火薬・印刷・農技術で江南が発達中国文化完成期を読む