MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-02-15 to 1 day

「ローズは泣いた」

#一日一編12作目ウィリアム=トレヴァー著アイルランド作家短編版のサガン「悲しみよ こんにちは」子供と大人の狭間に立つ少女心の三角関係を会話でなく風景と表情だけで読ませる絶技作中ほぼ唯一の行動”泣いた”の中に友達4人・先生・親から孤絶した思春期の…

「同時に」

#一日一編11作目インゲボルク=バッハマン著オーストリア作家・詩人“もし複数言語話者の同時通訳同士が想いを伝え合ったら…?”多言語・多文化・多地域のカオス会話になるのは必然欧州言語やアジアは勿論ガボンまで登場異文化理解の難しさと散文詩的文体が磁…

「きみは赤ちゃん」

川上未映子著芥川賞カップル35歳初めての子育て妊活〜出産〜1歳までの赤裸々体験回顧録元より感情も比喩も社会問題提起も抜群に上手い未映子さん喜怒哀楽爆発の笑って泣ける素敵なエッセイ女性の方は壮絶な日々へ共感と懐古を男性の方は未知体験に驚嘆と理解…

「発光地帯」

川上未映子著作家の日常を親近感ある大阪弁で綴ったエッセイ集様々な日常を切り取って言葉にすると自然発光して見えてくる食・生活・言葉・詩・音楽・育児・家族・弟・母・先輩・編集・受賞・執筆…日常生活を細部まで観察して独自な発見を追求し続ける作風の…

「すべて真夜中の恋人たち」

川上未映子著奥手の恋本能の恋初老の恋嫉妬の恋羨望の恋最初の恋最後の恋“真夜中は恋人たちの時間”仕事と太陽の喧騒が包む昼が終わり静かな夜が待つ孤独と過去と夢と向き合う校正と同じ果てなき間違い探し“ずっと真夜中でいいのに”そう思いながらまた朝が来る

「犬」

#一日一編10作目フリードリヒ=デュレンマット著スイス劇作家黒い犬は世界各国で死や不吉の象徴これを説話+ホラー+不条理にして上手く利用した短編老衰で生死の狭間を彷徨う富豪男と回復を願う親族や知人結末がリアル且つ最悪のシチュエーションで”本当にあ…

「あずまや」

#一日一編9作目ロジェ=グルニエ著フランス作家“芸術は究極的に音楽に収束する”「クロイツェル・ソナタ」ベートーベン第9番イ長調47作品及び音楽の狂騒性を揶揄したトルストイの小説名旅客機墜落地で初恋の女の楽器の残骸を見つけた男苦い記憶と音楽の官能を…

「乳と卵」

川上未映子著1中編1短編芥川受賞作“乳と卵”成程”生理”とは確かに”生”の”理”豊胸手術に固執する姉と母と妹3人各々の独白ながら生理・出産で視点共有させる生理描写の痛みと重みの隠喩が上手い“あなたたちの恋愛は瀕死”恋愛文学の基本は”死”だが一歩手前の”瀕…

「X町での一夜」

#一日一編8作目ハインリヒ=ベル著ノーベル賞ドイツ作家短い夜に人生が凝縮される事がある短編において実質その必要十分条件を満たす過去の回想を上手く利用した作品町の女と出兵前夜の青年の”某町の一夜”そこに垣間見える戦争の最前線の緊張を50年後の現在…

「自殺」

#一日一編7作目チェーザレ=パヴェーゼ著イタリア作家男:夏目漱石「こころ」の”先生”女:フローベール「ボヴァリー夫人」の”エンマ・ボヴァリー”“この2人がもし若き男女として出会ったら?”という地獄のシチュエーションを再現した様な短編鬱蒼な雰囲気がリア…

「ウィステリアと3人の女たち」

川上未映子著4中短編集全て女性主人公が日常の些細な出来事から記憶を辿り思い耽る作品クィアと見せかけて…と思いきやそれも違うと見せかけて…実は…?と展開が上手い“彼女と彼女の記憶について”“シャンデリア”“マリーの愛の証明”“ウィステリアと3人の女たち”

「終わらなかった旅」

シヴァ=スリニブサ=ナイポール著トリニダード・トバゴ作家1中編6エッセイ集40歳で逝去したノーベル賞作家ナイポールの弟“終わらなかった旅”スリランカを放浪する青年そこで目にする”第一世界vs第三世界”の文化経済的な差別の現実名著「なまこの眼」著者の…