MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

「ビラブド」

トニ=モリスン著
ノーベル賞アメリカ作家
南北戦争直後の南部
飢えの果ての嬰児殺し
悔やむ元黒人奴隷女は逃避した屋敷で赤子の霊に魘される
漸く祓った家族の前に嬰児と同じ名の謎の少女ビラブドが現れる
世界史上最大の非道を美しき口承文化で謳い甦らせる
“同胞6000万人に捧ぐ鎮魂歌”

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構造も技法も登場人物も言葉も語りも全て精緻に計算され配置された最高傑作
寧ろ個別の挿入エピソードが本筋を打ち消す程に残酷

今日当然の様に享受する人権
それがどれ程の重みと闘争の歴史を潜り抜けた奇跡的な権利かを思い知る

考えてみれば世界史の教科書で初の黒人偉人登場は第一次大戦後だった