MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-10-26 to 1 day

「チェゲムのサンドロおじさん」

ファジリ=イスカンデル著アブハジア作家7短編集グルジアの隣にある少数民族の伝承を語り継ぐ“アブハジアのガルシア=マルケス”大法螺吹きで豪放磊落なサンドロおじさんのピカレスクとも騎士道物語とも言える冒険譚アブハジアの歴史文化を愉快かつ皮肉に鋭く…

「死体展覧会」

ハサン=ブラーシム著イラク作家14短編集母国で発禁処分され北欧に逃亡し英語圏で読者を獲得した著者いずれもイラクやイラク移民の残忍で暴力的な現実や悲痛な境遇を扱った作品アメリカによる侵略で国土が荒廃したイラクやアフガニスタンイスラム国台頭の元…

「失踪者」

フランツ=カフカ著ユダヤ系チェコ作家失踪した甥がモデルで短編「火夫」続編で別名「アメリカ」未完の3大長編新訳プラハを追われNYの叔父の下へ渡る17歳の青年揉まれに揉まれ嬲られに嬲られ…所謂”窓際族”の短期間の転落日記カフカにしては珍しくコンラッド…

「カッサンドラ」

クリスタ=ヴォルフ著東ドイツ作家神話において女性は常に脇役アキレウス等の男性と戦争が主人公の神話「トロイア戦争」これを卜占者で陵辱された女性カッサンドラ目線でリライト運命の翻弄にも負けない逞しさが眩しい東ドイツで弱者だった自身と下流労働者…

「タール・ベイビー」

トニ=モリスン著ノーベル賞アメリカ作家アフリカ系アメリカ人の民間伝承”タール・ベイビー”を大西洋の小島を舞台に寓話化白人大富豪下の黒人奴隷男とパリで学んだ高学歴黒人女性の”境遇違いの黒人同士の恋”の行方アメリカ黒人マイノリティ社会の”黒歴史”に…

「命売ります」

三島由紀夫著オカルト×裏社会×ハードボイルド自殺に失敗した男の新聞広告”どんな仕事でも引き受けて命も売る”依頼人繋がりで美女と戯れスパイ合戦に巻き込まれ麻薬にハイになりと意外と満喫一度こそ死を覚悟するも生の実感を得て死にたくないと思い始める過…

「お嬢さん」

三島由紀夫著大企業のご令嬢で恵まれた家庭の引く手数多な箱入り娘そんな彼女が惹かれ夫に選んだのは”裏の顔を持つ”プレイボーイだった…!女性の起伏の激しい細やかな感情恋を経験する中で結婚観も”盲目”から”晴眼”に変わっていく両親や友人の反対・説得・お…