MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-09-03 to 1 day

「異端の鳥」

ベルリン国際映画祭ノミネートポーランド作家コシンスキ「ペインティッド・バード」原作の映画 ホロコースト期ポーランドの孤児の話”Painted bird”カラスは白いアルビノの同胞がいれば年齢・性別・親族を問わず迫害するという… 発刊当初リアル過ぎて真偽の疑…

「オニチャ」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家幼年期の自伝的作品第二次大戦が終わりフランスからナイジェリアのオニチャで医師を勤める父の元へ航海し移住呪術的な社会への通過儀礼と近代文明の拒絶化美しい自然と利権を巡る政治対立…

「写字室の旅」

ポール=オースター著アメリカ作家“これは自伝なのか…?”著者らしき記憶の空白な老人”Mr.ブランク”写字室で著者の過去作登場人物が次々と登場繰り返されるモチーフ原稿等をヒントに真実を探る何故か過去キャラに追い詰められていく老人その理由とは?そして…

「闇の中の男」

ポール=オースター著アメリカ作家“もしも9.11同時多発テロが起きていかなったら…?”9.11テロが起きた世界=イラク戦争勃発9.11テロが起きなかった世界=アメリカ内戦勃発”闇の中の男”はパラレルワールドから現実に戻るため”ある任務”を遂行するが…?孫子の代…

「ケンブリッジ・クインテット」

ジョン=L=キャスティ著アメリカ作家“ケンブリッジ大学OB各分野の巨匠5人が当時もしAIを肴に晩餐会をしたら?“哲学者ヴィトゲンシュタインPC発明者チューリング物理学者シュレティンガー科学啓蒙家スノウ遺伝学者ホールディンPCと哲学の記号論争が面白かった

「コンスタンティノープル征服記」

ジョフロワ=ド=ヴィルアルドゥワン著フランス王国ヴァロワ朝シャンパーニュ伯マレシャル(家老)第4回十字軍のビザンツ帝国征服記フランス最古の散文詩参加人数不足の借金過多で計画外の占領と略奪を行い聖地にも到達せず王も騎士も目的もなく私利私欲で動い…

「パスクアル・ドゥアルテの家族」

カミロ=ホセ=セラ著ノーベル賞スペイン作家処女作にして「ドン・キホーテ」に次ぐ読者数のスペイン文学カミュ「異邦人」的な不条理に殺人衝動や激情を加味した”凄絶主義文学”の祖母と友を殺し妹を娶る手紙や獄中記で4人がパスクアルの人生と家族の崩壊を語…

「イスラーム医学」

9〜18世紀イスラーム医学史原典:ヒポクラテス+ガレノス翻訳:イスハーク→イブン・シーナー理論大成:ラーズィー外科:帝王切開・瀉血・傷口焼灼の発展衛生:麻酔(大麻)・防腐(水銀・アルコール)しかし当時の医学は中世のペストに無力ゆえ最終的に秘術信仰に傾倒…

「チューリングの妄想」

エドゥムンド=パス=ソルダン著ボリビア作家IT×暗号×転生×スリラー×ミステリ7主人公体制のIT攻防戦ホワイトハッカーvsボリビア独裁国家情報機関“PC発明の父”チューリングの魂が転生したハッカーは同志を集めてアメリカ資本主義の覇権転覆を目論む“妄想”の意…

「ジャックとその主人」

ミラン=クンデラ著チェコ亡命フランス作家「百科全書」も著したフランス劇作家ドニ・ディドロ「運命論者ジャックとその主人」のパロディジャック主人宿の女主人3人の恋愛をめぐるユーモラスな会話活劇滑稽と皮肉を音楽的文章に還元する本書執筆に至る著者の…

「自転車泥棒」

呉明益著台湾作家国際ブッカー賞候補作再読冒険的私小説×台湾自転車史×太平洋戦争×動植物大日本帝国領台湾盗まれた1つの自転車の通り道ビルマの象台湾の蝶マレーのオランウータン日本の動物園台湾の”鏡子の家”どこまでも続く川と森とアスファルトモダンとレ…

「パラダイス」

トニ=モリスン著ノーベル賞アメリカ作家故郷を追われた黒人が漂着して出来た自治共同村落ルビー同類だけのパラダイスだったはずの村は徐々に”異端者狩りの地獄”と化す性差・宗教・肌の濃淡・家系争い・貧富の格差…狭く小さい社会の深く悍ましい差別や迫害の…

「氷山へ」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家フランス放浪詩人アンリ・ミショーの詩作「イニジ(氷山)」評論反西洋文明で共鳴した2人フロイトの意識-無意識理論と同様に言葉も“氷山の一角”と捉える北極星(ポラリス)を軸に”北から南へ回…