MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-01-01 to 1 year

「文学動物大百科(抄)」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 フランツ=ブライ著 作家を動物生態に喩え紹介 アインシュタイン ヴェーズキント カスナー カフカ クラウス シャオカル シュニッツラー ツヴァイク ブライ ホフマン ヘッセ ホフマンスタール マラルメ マン兄弟 ムージル ユイ…

「オーストリア気質」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 エゴン=フリーデル著 俳優・エッセイスト・パロディストにして貴族 第二次世界大戦で亡命を拒んで自殺した オーストリア気質についてフランクフルト新聞に寄稿するフリーデル氏 ヒトラーを感銘させた無能なルエーガー市長の…

「イスラム幻想世界」

イスラムの怪物・英雄・魔術を紹介する本 (今度またイスラム世界に旅行するので予習読書) イスラム成立時のカリフやムハンマド一家 「千一夜物語」に登場する逸話やジン(精霊)にイフリート等の怪物 バイバルスやサラディン等の英雄 アラビア魔術と言われたエ…

「ダンディならびにその同義語に関するアンドレアス・フォン・バルテッサーの意見」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 リヒャルト=フォン=シャオカル著 ここで私”世紀末ダンディ”ことアンドレアス・フォン・バルテッサーの意見を述べさせて頂きます! ……………………………… まあ全て嘘ですけどね

「フーコーの振り子 下」

19世紀パリ市内パンテオンで行われた”フーコーの振り子実験” サンジェルマン伯爵本人登場? カバラ カタコンベ エクトプラズム クンダリニー蛇 賢者の石 黄道十二宮 セフィロト カニバリズム 数多の十字軍 暗号解読仲間失踪を機に”計画”が始まり舞台はブラジ…

「フーコーの振り子 上」

ウンベルト=エーコ著 イタリア作家・記号論学者 2000年王国を夢見て歴史に消えたテンプル騎士団 その野望を現代の出版者3名が知的暗号解読に挑む 薔薇十字軍 世界各国民族部族神話 オカルト(カリオストロ) 錬金術(フラメル) 秘密結社(フリーメイソン) 知の…

「シャイブスの町の第二木曜日」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 フィッツ=フォン=ヘルツマノフスキー=オルランド著 チェコ人父とイタリア人父を持つ画家・建築家・作家 存命中無名で死後評価 “木曜日の週2日制”提唱 地質学者が反対し世界の民族と異端者が集合 ある意味ミニチュア版「百…

「地獄のジュール・ヴェルヌ/天国のジュール・ヴェルヌ」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 ルートヴィヒ=へヴェジー著 ハンガリー出身でクリムトら画家のウィーン分離派を支援した ダンテ「神曲」の世界をお馴染みヴェルヌ小説風冒険譚で3003次元など突飛な世界を交えて地獄から天国まで旅をしていく

「めくるめく世界」

レイナルド=アレナス著 キューバ作家 投獄・戦争・迫害・社交・放浪・布教・夢想… 新大陸と欧州を往来する”メキシコのドン・キホーテ” メキシコ→スペイン→フランス→イタリア→ポルトガル→キューバ→フロリダ 亡命作家らしい人称切替と虚実混交の独特な修道士…

「千の輝く太陽」

カレード=ホッセイニ著 アメリカ亡命タジク系アフガニスタン作家・医者 歴代超大国に蹂躙され続けたゆえ部族内結束が強固で因習と偏見が残るアフガニスタン 共産主義期の男女平等がイスラム原理主義に奪われていく 聡明な2人の女性が踠き抗い自由と平和を希…

「絶望を希望に変える経済学」

“経済学は硬直的だ” インド系&女性+史上最年少ノーベル経済学賞受賞の夫婦タッグが贈る地道で愚直なデータ主義経済学 経済学者が盲信する自由主義経済 市民が無根拠に八当たる移民と国際貿易 流動性選好・貧困・経済成長・環境問題・税制… 希望を持つ為にま…

「バッソンピエール公爵譚」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 ヒューゴー=フォン=ホフマンスタール著 ゲーテ「ドイツ移民談話ー”フランス公爵バッソンピエール”」が下敷 後の元帥で後代ベルギー外交官も輩出する名家公爵 性に溺れペスト蔓延期パリを逃れブロワ城に逃れた先で体験する怪…

「言語が違えば世界も違って見えるわけ」

男女中性詞を持つゲルマン語国家は帰納法思考? ラテン語国家は演繹法的哲学思考? 単語に東西南北が明記されるグーグ・イミディル語? 言語で色の認識が変わる? 「オデュッセイア」に登場する“葡萄酒色の海”? 認知言語学研究の最先端を多言語構造比較で紹…

「小品6つ」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 ペーター=アルテンバーグ著 6ショートショート “公園” “11と9つ” “対話” “劇場” “ミッツィー” “ネズミ” 当時の男女価値観差・貧富の格差問題・子供の扱いと文化・社交事情が浮き彫りになるリアリズム作品 音楽の都らしく反復…

「ジャネット」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 ヘルマン=バール著 美男子パウルと彼に恋するfemme fataleのジャネット パリのような華麗さとウィーンのような耽美さが交わる官能的で歪んだ激しい恋 軽蔑・憤怒・邪淫・倦怠・悦楽・篭絡・鬱屈・冷笑… みなウィーン世紀末に…

「レコデンタの日記」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 アーサー=シュニッツラー著 美人妻を巡り決闘した大尉と男 その風変わりな結末が妻の日記を介して語られる 引用ではない入れ子構造短編&内的独白小説(フロイト輩出都市らしい)の先駆け (多分)世界初のオーストリア&オースト…

「海よ 海 下」

俳優であるがゆえ結婚を諦めそれでも想い続けた恋人との再会 だがそれは”息子かもしれない少年”との邂逅でもあった… シェイクスピア「テンペスト」や聖書をモチーフに流麗な”意識の流れ”が揺れる乳房の様に波となり打ち寄せる 少年の親は? 恋の行方は? ド…

「海よ 海 上」

アイリス=マードック著 アイルランド出身イギリス作家 ブッカー賞受賞作 老境に差し掛かり舞台俳優を降りて隠居生活を始めた男 海で毎日泳ぎながら静かな余生を楽しむはずだった しかし40年前の恋人との邂逅が漣の音が打ち寄せる白波が在りし日の思い出と心…

「サヴィルの青春」

デヴィッド=ストーリー著 イギリス作家 ブッカー賞受賞作 “炭鉱夫の父が無職になった” 産業革命成功最大要因の石炭 炭鉱労働者街の苦境を少年視点の学校生活と世界大戦を軸に描く 後に歴代最低支持率に悩むサッチャーはマルビナス紛争に乗じ炭鉱労組民営化…

「マーガレット・アトウッド”侍女の物語”を読む」

「侍女の物語」+「請願」の論文集 新自由主義(=帝国主義)の齎す格差と管理社会 それは全体主義ディストピアの予兆 発刊34年後のベストセラーとその続編を類書やドラマ版から考察 “人類史上前例のない事象は書かない作家”の代表作から未来社会への警鐘

「コスタリカ伝説集」

エリアス=セレドン編 コスタリカ歴史学者 122短編集 山脈も地峡も平野都市も乏しいコスタリカ しかし故にスペイン侵略を最も免れ0.2%の陸地に全世界5%の生物種が生息 エコツーリズムも盛ん 第1部:土地の伝承 第2部:宗教伝説 第3部:怪異譚 豊かな動植物と先…

「マジシャン」

コルム=トビーン著 アイルランド作家 ドイツ史上最大の芸術作家トーマス・マンの全生涯を描いた小説 火災保険経営社長の父 作家の兄 女優の妹(自殺) 資産家の義父 社交界花形の娘と息子 ノーベル賞受賞後ナチに抗い渡米 世界大戦の米独パイプ役からスイス永…

「空腹の技法」

ポール=オースター著 アメリカ作家 イメージよりリズム 論理より偶然 広く浅くより狭く深く 詩人的本質を持つ作家のフランス詩翻訳家時代の寄稿文を収録 ハムスン ベケット ペルス パス ペレック アポリネール シュルレアリスム ダダイズム 詩人から作家に…

「20世紀ラテンアメリカ短編選」総書評

ノーベル賞作家 4人を含むジャンル別でバランス良い傑作揃い且つ入門書でもある作品群 植民地期被支配性 ラプラタ幻想文学性 カリブ多国籍多人種性 アンデス密林マチズモ性 詩的マジックリアリズム性 ラテンアメリカ文学ブームは起こるべくして起きたものと…

「水の底で」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 アドルフォ=ビオイ=カサーレス著 アルゼンチン作家 NTR変態SF版「人魚姫」 “若返る為に鮭になる手術を受けなければならない…” 鮭になった恋敵 鮭になると言う恋人 鮭になれなかった自分 鮭にさせようとする叔父 水の…

「リナーレス夫妻に会うまで」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 アルフレード=ブライス=エチュニケ著 ペルー作家 聞いてくれ…精神科医の先生… 変な夢を見るんだ…悪夢じゃない…断片的な夢だ… “精神科医の先生”か”リナーレス夫妻に会うまで”… 短編の題名どちらが良い?…精神科医の先…

「死んでから俺にはいろんなことがあった」

リカルド=アドルフォ著 日本移住ポルトガル移住アンゴラ作家 母国では堂々と生活していたが移民先の島では”社会的に死んだ”不法滞在の無職男 それでも妻と子供を養う必要がある 批判されがちな移民も背景は様々 マイノリティが陥りやすい苦悩をリアルに描く

「目をつぶって」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 レイナルド=アレナス著 アメリカ亡命キューバ作家 目を瞑ると何も見えない だが想像が視覚を補い何でも見える気がしてくる そうして歩行中の8歳の少年はトラックに轢かれてしまう 豊かな感性を限定的な語彙で語りキュ…

「化学の歴史」

アイザック=アシモフ著 ロシア系アメリカ作家 SFの巨匠が語る化学の歴史 古代ギリシア自然科学〜中世アラビア錬金術〜現代化学 やはり新元素発見ラッシュ〜周期表〜同位体&原子核発見のドラマが面白い 人類が物質をどの様に捉えてきたかの変遷は物質観と文…

「時間」

一日一編 20世紀ラテンアメリカ短編選 アンドレス=オメロ=アタナシウ著 ギリシア系アルゼンチン作家 人生における不条理シーンを断片的に並べ繋げた走馬灯 同じ南米文学でもマルケスの様な熱帯よりボルヘス的なラプラタ幻想文学に近い 短編にしては時空間…