MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-04-17 to 1 day

「猛スピードで母は」

長嶋有著 2中編 “サイドカーに犬” 父の愛人に好意を持ち母に距離を感じる娘 3人の女が邂逅した修羅場の結末は…? “猛スピードで母は” 芥川賞受賞作 貧乏でも真っ直ぐで強くて格好いい破天荒ママに魅了される ドライブ感のある文体との相性が絶妙 2作とも母の…

「赤い子馬」

ジョン=スタインベック著 ノーベル賞アメリカ作家 故郷サリーナスを描く少年期の半自伝 馬のことなら何でもプロの叔父さん 10歳にして赤い子馬の出産を目にし新たな生命と死別を経験する 田舎ならではの残酷さと強さ 厳しく美しい牧歌的自然風景と瑞々しい…

「ファルメライヤー駅長」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 ヨーゼフ=ロート著 ウクライナ出身フランス亡命オーストリア作家 鉄道官僚出世道と幸福な家庭を持つ若き駅長 だが戦争勃発で中尉となり愛人を得て”戦争がいつまでも続いて欲しい”と望み始める 戦時の愛が願いにも呪いにもな…

「その名にちなんで」

ジュンパ=ラヒリ著 インド系アメリカ作家 ベンガル移民2世のアメリカ人ながらロシア文豪に肖り”ゴーゴリ”と名付けられた少年 アメリカ文化への違和感と迎合 ベンガル人家族との交流 「外套」等のロシア文学 複雑な文化的背景を持つ家庭をあくまで日常に絞り…

「ある夢の記憶」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 リヒャルト=ベーア=ホフマン著 「ゲオルクの死」で知られるユダヤ系でアメリカに亡命し死後に再評価された印象主義のシオニスト作家 感情や感覚が森羅万象に喩えられている点が詩人的 粗筋以上に繊細で鬱屈した比喩表現が特…

「落花生」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 シュテファン=ツヴァイク著 ナチに抗いアメリカとブラジルに亡命した詩人上がりの歴史小説作家 学級で馬鹿にされる繊細なティーンの少年 しかし教師の冷笑に奮発し殴り合いとなって教室を脱出し”15の夜”の解放感を得る この…

「すみれの君」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 アルフレッド=ポルガー著 伯爵vs男爵 伝説のトランプ勝負 決闘に香水好きにワルツの達人に最後の騎士の名を持つ借金まみれの伝説的伯爵 だが第一次大戦後のオーストリア解体に伴う共和国で貴族は身分剥奪を受け没落 貴族すら…

「楽天家と不平家の対話」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 カール=クラウス著 楽天家vs不平家の舌戦勝負! 繁栄と虚無を同時享受した世紀末ウィーンの頂上決戦 過激な内容は第一次世界大戦後こそ笑われたが現実となった フランツ・ヨーゼフ2世の没後にファシズム傾斜とオーストリア併…

「越境」

コーマック=マッカーシー著 アメリカ作家 国境3部作第2章 野生狼と出会い村を出て放浪する少年 ドストエフスキーの形而上学性 フォークナーの暴力性と野生性 コンラッドのロード・ノベル性 マンや中国義侠のピカレスク性 “計算された偶然性”を繰り広げる展…

「余はいかにして司会者となりしか」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 アントン=カーク著 司会者になりたいって? ならまず冷笑だ…! そして上級国民だと見せつけるのだ! 次に間の取り方だ…! 沈黙を統べる者は場を統べる! 間違っても滑らないようにな! どうだ! 正にヒトラーみたいだろう…?

「説得」

ジェイン=オースティン著 イギリス作家 8年ぶりに再開した若き上流階級の男女 かつての恋人同士が再び結ばれるロマンチックな展開だが丁寧ゆえ地味な描写も多い 「高慢と偏見」とは異なり”誤解からの印象改善”ではなく”かつての諦念からの説得”で結ばれる流…

「文学動物大百科(抄)」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 フランツ=ブライ著 作家を動物生態に喩え紹介 アインシュタイン ヴェーズキント カスナー カフカ クラウス シャオカル シュニッツラー ツヴァイク ブライ ホフマン ヘッセ ホフマンスタール マラルメ マン兄弟 ムージル ユイ…

「オーストリア気質」

一日一編 ウィーン世紀末文学選 エゴン=フリーデル著 俳優・エッセイスト・パロディストにして貴族 第二次世界大戦で亡命を拒んで自殺した オーストリア気質についてフランクフルト新聞に寄稿するフリーデル氏 ヒトラーを感銘させた無能なルエーガー市長の…