MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-02-16 to 1 day

「脳にはバグがひそんでる」

生物の脳はパターン化に強く適応力に富む 一方で初見の事例への対処は苦手 しかし類人猿はミラーニューロンと器用な手でそれを克服してきた 特に人類は情報革命で科学的分析とその伝授が可能になった しかし一方で情報過多で認知バイアスを拗らせたバグな判…

「出会い」

一日一編 東欧怪談集 フランチシェク=シヴァントネル著 スロヴァキア作家 兵役中の許嫁が消息不明なため別の男と結婚した未亡人 だが監獄から戻った元許嫁が新婚直後の2人の前に現れる… 血塗れで肩に噛み付き血を舐めるトラウマシーンがあるが3人の誰が誰に…

「生まれそこなった命」

一日一編 東欧怪談集 エダ=クリセオヴァー著 チェコ作家・ジャーナリスト 共産党政権時代に国内出版禁止→ビロード革命→ハヴェル大統領顧問 流産してしまった若い女性 物件探し中に死の強迫観念を感じ”生まれそこなった命”が胎内から訴えかける 死番虫が蠢く…

「不吉なマドンナ」

一日一編 東欧怪談集 イジー=カラーセク=ゼ=ルヴォヴィツ著 チェコ作家・詩人・批評家・絵画蒐集家 絵画をモチーフにした正統派オカルトのデカダン的作品 イエスを抱くマドンナの描かれた悍ましい絵画 モデルは間引した母親と聞き何故か身近な話のように…

「大いなる魂の詩 下」

ロシア文学への深い造詣を持つ2人の対談は後半へ ペレストロイカの裏側と文学の果たした役割を語る 美しい言葉と情景を浮かび上がらせるアイトマートフ文学の裏側を上手く引き出せていて面白い ※内容無関係ですが個人的に創価学会の母体である公明党は政教分…

「大いなる魂の詩 上」

チンギス=アイトマートフ著 キルギス作家 ソヴィエト連邦書記長ゴルバチョフ側近アイトマートフと創価学会名誉会長池田大作の対談 (池田大作は2023年11月死去) 聖教文庫が創価学会お抱えの出版なのは承知だがアイトマートフは言わずもがな池田が文学や芸術…

「トラスト」

エルナン=ディアズ著 アメリカ作家 ブッカー賞候補 ピュリッツァー賞受賞作 世界恐慌前NYを支配した帝王が居た 「絆」:大富豪モデルの小説 「わが人生」:大富豪自身の自伝 「追憶の記」:大富豪秘書の回想録 「未来」:大富豪妻の闘病記 著しく異なる4篇の断…

「ガリレオの生涯」

ベルトルト=ブレヒト著 ドイツ劇作家 “それでも地球は回っている” 時代に辛酸を舐めた天才のピサ大学→パドヴァ大学→尋問→軟禁までを戯曲化 時代は違うがガリレオはアインシュタインの人生と共通・反省する要素が多い 当時の反ナチ思想を汲み取り反原発・半…

「スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス」

ポール=オースター著 アメリカ作家 2脚本 映画「スモーク」と「ブルー・イン・ザ・フェイス」の原作脚本とインタビューを収録 猥雑混沌NYの喧騒を煙に巻く”スモーク” 単行本”オーギー・レンのクリスマス・ストーリー”(”ブルー・イン・ザ・フェイス”で別刊)

「サピエンス全史 下」

”ヒトがウィルスに耐性を持つよう進化した”より”ウィルスがヒトに耐性を持たせて進化させた”が今日は主流となっている 家畜も然り環境も然り しかし生化学・遺伝子学・量子物理学は”不自然を自然”に変える神の力を授けた “現代のプロメテウスの火”を授けられ…

「サピエンス全史 上」

人類の過去・現在・未来を生物学と社会学に絞って概論 例えば手が器用になれば握力は落ちる 進化と退化は表裏一体であり生物普遍の法則は”変化”のみだったが“虚構”の想像が人類の物理的制限を臨界突破した 個々の学説は深堀が足らず新しい点もないが通史に設…

「サピエンス全史 上」

人類の過去・現在・未来を生物学と社会学に絞って概論 例えば手が器用になれば握力は落ちる 進化と退化は表裏一体であり生物普遍の法則は”変化”のみだったが“虚構”の想像が人類の物理的制限を臨界突破した 個々の学説は深堀が足らず新しい点もないが通史に設…

「死者の子供たち」

エルフリーデ=イェリネク著 ノーベル賞オーストリア作家 第二次世界大戦でナチに国民投票で併合され”加害国の被害者”として振る舞い各国もそう認めてきたオーストリア 著者はそれを否定し批判する 有象無象の死者の声を甦らせた清濁を飲み込む”イメージの洪…

「ルブリンの魔術師」

アイザック=バシェヴィス=シンガー著 ノーベル賞ユダヤ系アメリカ亡命ポーランド作家 19世紀末ロシア支配下ポーランド “ルブリンの魔術師”と呼ばれる曲芸師 女誑しの道化なら人生の綱渡りも上手也 だがそんな彼にも人生の転機が訪れる… 童話の様な教訓と社…

「足跡」

一日一編 東欧怪談集 カレル=チャペック著 チェコ作家・ジャーナリスト “ロボット”という言葉は別著の作品「R•U•R」に登場する機会に因む 途中で途切れている足跡を発見した警官 不思議に思い事情調査していくが…? オーストリア独立前と独立後の戦間期チェ…

「ブルックリン」

コルム=トビーン著 アイルランド作家 1950年代 祖国アイルランドから単身NY留学した少女 ブルックリンで出会う勉強・バイト・恋・初夜の刺激的な毎日 身内の死で一時帰国するがそこでNYの恋人に劣らず魅力的に育った幼馴染が待っていた… 日常の機微とノスタ…

「ハリケーンの季節」

フェルナンダ=メルチョール著 メキシコ作家 国際ブッカー賞最終候補 “魔女”と呼ばれる老女が死んだ 黒魔術・遺産・暴力・売春・麻薬… 様々な憶測が飛ぶ中で5人の視点を通して死の真相が語られる ハリケーンの様な怒涛の文体と罵詈雑言が吹き荒れ現実とは信…

「優しい暴力の時代」

チョン=イヒョン著 韓国作家 8短編集 軍事政権終焉から戦争なき時代へ 代わりに“優しい暴力の時代”が訪れた SNSの誹謗中傷 貧困ビジネスと過労死 受験戦争 職業戦争 出世戦争 不動産バブルの呪縛 人は身近な人ほど容赦なく傷付ける そして誰もが何時も何処…

「ファウストの館」

一日一編 東欧怪談集 アロイス=イラーセク著 チェコ作家 博士ファウストと悪魔メフィストフェレスの契約が齎す黒魔術伝説がモデルのゲーテ「ファウスト」 プラハ新市街ナスロヴァネフ修道院側”ファウストの館” 錬金術師と悪魔降誕で極貧生活からの脱却を目…

「世界憲法集」総書評

一日一カ国一憲法 世界憲法集 イギリスの様に成文憲法が存在せず慣習法に留まる国家もあるが多くの国で憲法は国家の最高法規だ 憲法とその理念を比較することは国の理念と歴史と未来の在り方を学ぶことでもある 過剰で無責任なグローバル経済に倫理道徳が歪…

「日本国憲法」

一日一カ国一憲法 世界憲法集 起草年:1946年 起草者:GHQ(マッカーサー)→金森徳次郎 修正回数:0回 理念:基本的人権尊重/平和主義/国民主権 統治体制:立憲民主制 地方自治:並 管轄:最高裁判所 契機:敗戦 人権保護:強 特徴:象徴天皇制/戦争放棄 課題:憲法9条論争…

「吸血鬼」

一日一編 東欧怪談集 ヤン=ネルダ著 チェコ詩人・作家・ジャーナリスト ノーベル賞チリ詩人パブロ・ネルーダのPNは彼に肖る “魔都”イスタンブール観光に来た老夫妻 海の美しさに涙する少女 死人ばかり描く画家 ギリシアの船人 フランス人の館 船着時には少…

「エステルハージ博士の事件簿」

アヴラム=ディヴィッドソン著 アメリカ作家 8連作短編集 世界幻想文学大賞受賞作 時は19世紀末スキタイ=パンノニア=トランスバルカニア三重帝国 文・語・医・理・法と諸学を修めた博覧強記のエステルハージ博士が珍事件に挑む! 世界史好きは数々の元ネタ…

「蠅」

一日一編 東欧怪談集 カズミ=ヨネカワ(米川和海)著 日系ポーランド映画大学生 カフカ「変身」を想起する23歳で夭折した文学者夫婦のハイブリッド娘の処女短編 読書の邪魔と蠅を殺した男 直後に隣に悪魔が座っていた その正体は死んだ蠅 そして男も蠅にされる…