MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-04-06 to 1 day

「蛇と百合」

ニコス=カザンザキス著オスマン帝国クレタ州(現ギリシア)作家日記形式で愛する女へ綴る叙情詩トルコ独立期と重なるためギリシア神話やキリスト教の礼讃などナショナリズム色が強い“太陽は空を血に染め蛇が百合を喰らう”(イスラム=月が上で太陽が下)(キリス…

「少年」

川端康成著日本ノーベル賞作家文豪の知られざる遺作が没後50年で初文庫化「ベニスに死す」的な川端の独特な美少年愛が炸裂自身の高校〜大学時代の後輩との触れ合いや生活を瑞々しい文章で回顧基本的に川端文学のストーリーは変態的だが文章の淑やかさと情緒…

「LAヴァイス」

トマス=ピンチョン著アメリカ作家映画化原作元カノがピンチでピンチョン!?大富豪と犯罪の温床!?仕方ない…… 行くかクソったれ!!娑婆でシャブってsun of a bitch!Hippie Happy Love&Peace⭐︎dragとdrankでtrapにdrop??麻薬中毒ラリ探偵??ハードボイルドにキメ…

「ギーターンジャリ」

ラビンドラナート=タゴール著ノーベル賞イギリス領インド帝国(欧米以外初)詩人・音楽家・教育者・作家インド・バングラデシュ共通国歌ギータ(歌)アンジャリ(捧げ物)詩に疎い人でも分かる美しく透明な言葉ベンガルの自然で彩る亡き家族に捧ぐ詩の餞詩人イエ…

「掃除婦のための手引き書」

ルシア=ベルリン著アメリカ作家24短編集マンローやサリンジャーの様に不条理に突如幕引きする作品が多いがオチはしっかり掬うアル中や多岐に渡る職務遍歴と壮絶な実体験を踏まえ鋭く言葉を現像する文才は勿論だが経験が文学を生むと思い知らされるそして超…

「ある男の聖書」

高行健著フランス亡命中国ノーベル賞作家・戯曲家・水墨画家母国では全作発禁奇数章:フランス亡命後(おまえ)偶数章:文化大革命期の農村(彼)文革で屈辱を味わい亡命するまでの散文式半自伝国内外での夥しい情事と中国人観毛沢東批判と狂気の同調圧力感“おまえ…

「浮かびあがる」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家徐々にベールを剥ぐ“信頼できない語り手”的ミステリ隣の超大国アメリカ文化と資本の流入カナダの農村も確実に変わりつつあった時代失踪した父の土地遺産に忍び寄るアメリカ人と性的価値観のヒッピー化した男“浮かびあが…

「水の墓碑銘」

パトリシア=ハイスミス著アメリカ作家映画化原作のサスペンス奔放で悪癖な美人妻に悩む誉れ高き地方名士浮気相手を排すため殺人を嘯いて威嚇し遂に本当に溺死を犯してしまう街中が名士の容疑を否定する中で事件を執拗に追う妻愛し合い憎み合う夫婦の心理戦…

「献灯使」

多和田葉子著日本・ドイツ作家全米図書賞受賞4中短編集全て東日本大震災後を揶揄“献灯使”傑作老人が健康で子供が病弱な鎖国ディストピア社会得意の言語遊びやホラーを絡めたSFで短いがリアルな世界“不死の鳥”続編“彼岸”続編“動物たちのバベル”人類絶滅後の動…