MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-03-27 to 1 day

アリス=マンロー全9冊読破記念総書評

作家の才能は短編で測れる短編一筋50年”現代のチェーホフ”ノーベル賞受賞理由はシンプルに”短編の名手”“長編の息抜き扱い”だった短編の地位を覆した最小限かつ多義的な表現で長編並みの密度・深さ・鋭さ・日常・時空間を現出小説の本質と醍醐味を凝縮した作…

「ピアノ・レッスン」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家15短編集知人との束の間デートの緊張感“乗せてくれてありがとう”白血病の級友を皆で見送る“蝶の日”平凡な教え子と教師の瞬間的な感動“ピアノ・レッスン”死んだふりで揶揄う祖母と孫が催眠術士の術中に嵌り驚きの結末…

「イラクサ」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家9短編集悪戯で書いた悪友との恋文が人生を激変させる“恋占い”闘癌生活の虚無の中の甘いひと夏の恋“浮橋”親と従兄弟の禁じられた秘密”家に伝わる家具”訳アリ初恋男性との再会“イラクサ”認知症の妻を前に胡乱な浮気夫“…

「ディア・ライフ」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家14短編集“愛しき人生”の集大成に餞として書かれた引退作人生の理不尽に翻弄される女性達が登場堅い医者に徐々に惹かれる女教師の「高慢と偏見」的”アムンゼン”女性と帰還兵の放浪を描く”列車”人生は許しの連続と語る”…

「善き女の愛」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家8短編集全編がホラー&サスペンス調題名・キャラ・表現の全てを心地よく裏切ってくる毒吐き老女の介護人が葛藤や苛立ちから意外なラストを迎える”善き女の愛”幸せ絶頂からの転落“コルテス島”意識持ち胎児が母を嫌味に…

「小説のように」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家10短編集著者入門にお薦め自分の人生と酷似した短編と女性に出会う“小説のように”殺人者同士がバーで動機を語り巧みに感情移入させる”遊離基”実在のロシア女性初の数学者&のち小説家ソフィア・コワレフスカヤの人生を…

「ジュリエット」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家8短編集現代版モーパッサン「女の一生」の”ジュリエット3部作”が目玉1部:駆け落ちの少女→2部:夫との死別→3部:母と娘と仕事著者には珍しい透視能力の話”パワー”一途に外国人の初恋相手を待つ先の悲劇“トリック”知る事…

「木星の月」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家11短編集著者に縁の南部カナダ某町が舞台各短編の人格・心情・自然が共通する緩い連作短編形式田舎ならではの小規模な閉鎖性・血縁との交流・階級意識・家庭の陰翳を描くと思いきや最後の”木星の月”で宇宙規模に町を…

「林檎の木の下で」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家12連作短編集スコットランドからカナダへと移住した著者の祖先を辿る3世紀に渡る旅大西洋航海から定住農地開拓から牧場経営近代化の波と寂れていく故郷の自然と動物そして著者アリス誕生血族の全てを見てきた”林檎の…

「愛の深まり」

アリス=マンロー著ノーベル賞カナダ作家11短編集表題作”愛の深まり”が凄まじい完成度僅か35Pながらカットバック&フラッシュバックを多用更に幼年〜更年の時空に奥行きを持たせ”愛の深み”を日常から演出これはもう”短編小説”というより”走馬灯そのもの”を見…

「中国思想史」

神話・呪術・ト占・漢字と独特な文明時に呉越同舟し時に四面楚歌し時に三国無双の”中国思想史”思想家争奪戦の春秋戦国時代斉の臨淄に集う”稷下の学”諸子百家の争鳴を経て孔子の儒学独壇場儒・仏・道の混淆と分派宋学→明学→清学では儒学ベースに古典研究が進…