MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-11-01 to 1 month

「夏子の冒険」

三島由紀夫著戦後北海道で熊討伐に燃える男と彼の野生の魅力に夢中になるお嬢様「ゴールデンカムイ」×フォークナー「熊」的展開(?)修道僧になりかけていた箱入り娘が東京→函館→アイヌの森を駆け巡る冒険へ!心配な彼女の家族との追いかけっこ開始!更に熊と…

ファン=ガブリエル=バスケス全4冊読破記念総書評

エベリオ・ロセーロと共に新世代コロンビアを代表する“第2のガボ”硬質で時間軸が往来する文体と政治を糾弾する社会派リアリズムはリョサを思わせる“アメリカの庭”中南米に燻る親米や反米を多彩な角度から描く歴史と異文化が主軸の重厚なサスペンスとミステリ…

「密告者」

ファン=ガブリエル=バスケス著コロンビア作家友をナチ党に売った著名学者告解する裏切られた友と一族学者の性癖を暴露し論う元愛人と痴女父の真実を探り本を出す学者の息子過去と現在と未来信頼と裏切り家族と友人名誉と没落5者5様の”密告者”密告者の密告…

「愉楽」

閻連科著中国作家盲聾唖者と身体障害者が多い僻村”受活”が舞台の魔術的リアリズム狂気の2大”村起こし”で脱貧困を狙う・レーニンの遺体を購入し記念館に祀る・障害者限定の魔術的な”超絶技能者サーカス団”差別用語を敢えて使い陰に陽に人民公社・共産主義・反…

「サッカー戦争」

リヒャルト=カプシチンスキ著ポーランド記者・作家コンゴ・中米・アルジェリア・タンザニア・ナイジェリア・ガーナの27政変のルポサッカー試合の勝敗が戦争に発展格差社会の中南米では庶民が愛国心を確認する唯一の場がサッカー(日本で言えば=オタク?)日…

「シャドウ・ラインズ」

アミタヴ=ゴーシュ著インド作家印パ独立紛争は1千万単位の住民交換と数百万の移民や難民を出したロンドン・ダッカ・カルカッタの3都市3世代の中流層市民が見た現実を描く家族・祖国・財産・宗教の分断と離別独立の夜明けが生み出した見えない境界線”シャド…

「夜会服」

三島由紀夫著華族出身・容姿端麗・スポーツ万能・学問堪能・語学堪能・金持ち・コネ持ちの完璧夫欧州要人とのパーティーが好きな母2人の板挟みになる妻派手嫌いの夫と母に確執が生まれ三角関係で悩む妻近代的地位を持ちながら近代への抵抗感を持つジレンマを…

「戦争は女の顔をしていない」

スヴェトラーナ=アレクシェーヴィッチ著ノーベル賞ベラルーシ作家再読神話も歴史も戦争も主役は殆ど常に男女も当然に戦争に人生を左右されるが”女の顔”は隠されてきた看護婦家事女医娼婦狙撃兵通信係戦車兵母娘教師etc…戦争は極めて政治的な行為である 著作…

「刑罰」

フェルディナント=フォン=シーラッハ著ドイツ作家・弁護士12短編集刑を受けるのは限られた人間だけしかし全ての人間が罰に苛まれるだから金儲けのための免罪符の憤慨したルターは宗教改革を始めた歴史を反省したドイツの法律は厳しい一方で犯罪率も高い平…

「クーデタ」

ジョン=アップダイク著アメリカ作家時は冷戦舞台はサハラ架空国家クシュ体制はイスラム社会主義主役はアメリカで学びクーデタで凱旋した大統領“アメリカ化する第三世界”の葛藤・堕落・繁栄を敢えてアメリカ人が描く斬新な構図現在なら”覇権を狙う中国と日本…

「貧者の息子」

ムルド=フェラウン著アルジェリア作家著者の半自伝にして国民的古典文学部族村カビリーの貧農ながら立志して教師になったメンラドしかしフランス文明の野蛮さとカビリーの後進性に葛藤する非アラブ・非ベルベル・非フランスの言語と文化をカビリー語の豊か…

「文章読本」

三島由紀夫著視聴覚芸術=男性:論理的→政治経済用語や四六駢儷体心理情緒的芸術=女性:感情的→世界最古の随筆「枕草子」や女性神話日本語には韻文芸術の伝統がなく明治以降の翻訳で導入古文美学に陶酔する三島は嘆く一方で自作にも積極的に東洋西洋の伝統を汲…

「軽蔑」

アルベルト=モラヴィア著イタリア作家ゴダール映画原作カミュやサルトルに数十年も先駆けて近代の性と生の不条理を問う映画脚本執筆中の男は妻との倦怠期に突入し妻の”軽蔑”を招く程に…地味だが機微の夫婦の心情変化と派手な脚本「オデュッセウス」の対比が…

「マイトレイ」

ミルチャ=エリアーデ著ルーマニア作家・宗教史学者インド留学に基づく半自伝風土病を患い療養のためベンガルの名家に居候そこで一目惚れした褐色の美少女マイトレイ宗教も文化も異なる2人の愛は許されざる禁忌だった…男の独白のみで女の心理描写を敢えて隠…

「嫉妬/事件」

アニー=エルノー著ノーベル賞フランス作家2中編“嫉妬”離別後の男性に嫉妬しストーカー化する女性傍目には狂人でも当人は純愛五条先生の言う通り愛ほど強い呪いはない“事件”中絶違法時代に優秀な女学生が堕胎の決意をするまで壮絶な肉体的&精神的葛藤と重圧…

「野原」

ローベルト=ゼーターラー著オーストリア作家29連作短編集田舎に生きた30人前後の職業年齢性別も雑多の平凡な人生死者が生き様と死に様を語る形式で人生を振り返っていく切り取られた恋に勉強に仕事の些細な日常ご近所同士で味わい深い余韻を残す静かで暖か…

「破滅者」

トーマス=ベルンハルト著オーストリア作家2中編音楽の造詣が深い著者の大家への内省的随想“ヴィトゲンシュタインの甥”「論理哲学論考」で有名な学者の甥で一流の隻腕ピアニストへ捧ぐ狂想曲“破滅者”カナダのピアニストで”ゴルトベルク変奏曲”の作曲者グレン…

「硬きこと水のごとし」

閻連科著中国作家ゲバラやナポレオン宜しく革命家は性欲もお盛んらしい時は毛沢東扇動の文化大革命〜江青ら4人組逮捕自称革命家の青年と少女は共産主義の英雄を讃える一方で秘密の地下トンネルを通じ秘部と乳房を弄り逢瀬を重ねる破壊の連鎖を産む革命の醜悪…

「カルカッタ染色体」

アミタヴ=ゴーシュ著インド作家医学×ミステリ×マジックリアリズムNY国際水利委員会職員カルカッタで失踪した同僚のIDを辿る鍵は1902年ノーベル医学賞受賞者が奇跡的に発見したマラリア感染経路現代アメリカと近代インド&エジプトの話が交代進行謎の染色体の…