MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2022-11-18 to 1 day

「大いなる錯乱」

アミタヴ=ゴーシュ著インド作家気候変動リスクを独自の文学論と絡めて語る世界人口50%が海岸に住み地球温暖化と河口の塩害は悪化中気候文学の先駆け「怒りの葡萄」解説を始め自作を交えて訴える確かにトカルチュクなど最近「人」以外に「物」や「自然」が主…

「東と西」

サルマン=ラシュディ著インド作家9短編集パムクと異なり東西の”混淆と確執”ではなく”分裂と対立”が焦点東・西・東西の3舞台3編でインド亜大陸の風俗と歴史を軸にした多彩な短編魔術的リアリズム「真夜中の子供たち」後日談シェイクスピアピンチョン的博学コ…

「THE LIVES OF ANIMALS」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著ノーベル賞南アフリカ作家過去作「エリザベス・コステロ」の主人公が架空講演で”動物の生命”について語るメタフィクション動物と人間の歴史的関係を菜食主義の著者の分身が多様な学問から検証小説の体だが実質は動植物愛…

「小説読本」

三島由紀夫著小説家のイロハを語る基本的に絵画建築的構造を持つ作品を好んだ三島フロイト的な無意識を徹底排除読み手の想像力を美文で誘導し限定法学的思弁法で完璧主義的な論理性豊富な語彙量と明快な分析上記より二元論に傾きがちな嫌いはあるが当代随一…

「マヤ神話ーチラム・バラムの予言」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著ノーベル賞フランス作家中米に惹かれた若き著者がマヤ語を研究し原点を翻訳南北アメリカに車輪文化はなかっただが驚異的な時間認識と天文学は円環構造とN進法を採用しており宗教的制約で発展が啄まれた可能性もあ…

閻連科全10冊読破記念総書評

出す長編が悉く中国本土で発禁となるため現在は母国より自由度が高い香港で創作と教鞭を取るエロ・グロ・ナンセンスの猥雑な描写の裏に隠れた中国社会の理不尽シュールな寓意に満ちた狂気の世界観”神実主義”荒唐無稽に見えて現実の様な小説ならではの愉悦を…

「丁圧の夢」

閻連科著中国作家貧しい農村”丁圧”老いも若きも高額の政府主導の輸血用売血で一攫千金を目論んだ結果エイズ蔓延る地獄と化した父が手引きし祖父が反対した売血政策に滅びゆく村を孫が見つめる過剰な死が狂気と絶望と哄笑を招く様を皮肉とユーモアで糾弾現代…

リヒャルト=カプシチンスキ全4冊読破記念総書評

7カ国語を解し50の歳月を費やし100の国を歩き27の政変・建国を見た同じ第三世界のポーランド人として第三世界を透徹した分析力と芸術的な文章で案内する私も旅ブログと称した駄文を50カ国ほど書いていたから分かるこのルポ文学は誰にも真似できない 以下個人…

「黒檀」

リヒャルト=カプシチンスキ著ポーランド記者・作家29ルポ集黒檀の様に心身とも逞しく美しい黒人黒人を近代文明視点で白眼視してしまう白人両者を知る著者だから書けたアフリカを知る最短経路の1冊40年に及ぶ指導者から市民までの広範な現地取材を基にサハラ…

「古典文学読本」

三島由紀夫著日本古典文学概説古文漢文の知識は勿論で作文まで出来た三島古典廃止論者に読んで欲しい1冊「雨月物語」「古今集」「源氏物語」「葉隠」「古事記」「曲亭馬琴」「謡曲」「神皇正統記」「新古今和歌集」「五山文学」「近松・西鶴・芭蕉」「和歌漢…

「人民に奉仕する」

閻連科著中国作家毛沢東語録スローガン”人民に奉仕する”これを刻んだ木札を勘合に軍師団長の美人妻が誘惑する“私への奉仕が人民への奉仕だ”性愛に惑溺する妻と炊事班長の男男は妻の斡旋を糧に情事と昇進を約束されたかに見えたが…?“現人神”毛沢東を揶揄し発…