MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-06-01 to 1 month

「この30年の小説ぜんぶ読んでしゃべって社会が見えた」

高橋源一郎・斎藤美奈子共著 つかさん@book_tsukatsuに紹介頂いた本 現代日本文学に疎いので色々と頷かされた 個人的にも直近15年の芥川賞受賞作は良作が多いと感じたが著者2人も同感らしい 中上健次と大江健三郎が現代に蘇る辺り新時代感がある

「出国」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ピーター=ナザレス著 マレーシア出身ポルトガル領インド直轄市ゴア系ウガンダ作家 狂気のウガンダ大統領アミンが経済独占状態にあるインド系移民を強制出国させる その最後の空港で待つ4時間 ナミビアを流れウガン…

「インド洋を翔けた人類史」

ユーラシアの気候と文化を統べるインド洋 特に中世南インド史を軸に環インド洋の文化と歴史を俯瞰する交流史 インド洋各湾岸都市に散らばる印僑エリートとインド商人 実は第一次・第二次世界大戦で最も動員された兵士もインド帝国出身者 海と陸の結節点なら…

「ムリャンコタ」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ヌワ=セントンゴ著 南アフリカ作家 稀代の大食漢ムリャンコタ 暴飲暴食ゆえ妻に逃げられ村に捨てられ自由を求め放浪へ “幽鬼の国”を経て甦り妻の元へ再服従されるまで チュツオーラ「やし酒飲み」的部族神話だが母…

「確かに月曜日に」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ナディン=ゴーディマ著 ノーベル賞南アフリカ作家 南アフリカ解放戦線ゲリラに加わった一家 運動の過程で一家離散となりダルエスサラームから故国を郷愁する孤独な姉 過去と現在の比較が克明な心理描写を伴い語ら…

「予言者」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ハーマン=チャールズ=ボスマン著 南アフリカ作家 侵略を正当化しようとする白人アフリカーナ予言者 vs アニミズムの価値観で神通力を発揮する黒人先住民予言者 神秘的ヨーロッパ的一神教と呪術的アフリカ的多神教…

「楽園の犬」

アベル=ポッセ著 アルゼンチン作家 “多国籍企業代理人にして最初の奴隷商人” 侵略された新大陸側から見たコロンブス像を現代人が紡ぎ語るマジックリアリズム 迫害されるユダヤ・ムーア・インカ・アステカ・ポルトガル… CIAと資本家に翻弄されたアメリカ帝国…

「グールド魚類画帖」

リチャード=フラナガン著 オーストラリア作家 英国最悪の流刑植民地オーストラリア 況や最南最悪のタスマニア流刑者で元画家グールド その画力から生物調査の仕事を得て魚類を描くが雇用主殺害の疑いで死刑囚へ “魚の絵に死刑囚の面影を感じる設定”で想像を…

「緩やかさ」

ミラン=クンデラ著 チェコ作家 著者初のフランス語執筆作 パリ郊外の古城を訪れた著者 18世紀の騎士と貴婦人の華やかな愛の日々 現代文明が奪った”緩やかさの哲学” 古城・文学・舞踏会・音楽・哲学・歴史… 国際昆虫学会に集う様々な多階級的知識人の放埒な…

「マフェキング・ロード」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ハーマン=チャールズ=ボスマン著 南アフリカ作家 オランダ移民(アフリカーナ)が南ア先住民を内奥へ追い彼等をイギリス帝国がブール戦争で内奥へ追いやった アメリカと違い白人が白人の地を奪う歴史を哄笑とユーモ…

「約束」

デイモン=ガルガット著 南アフリカ作家 ブッカー賞受賞作 ウルフ「灯台へ」同様”自由間接話法”で数年を隔てる4人の葬式の場面を繋ぐ アパルトヘイト前後の南ア現代史の前進の軌跡と遺された課題を個人と一族史で凝縮 個人が如何に法律・政治・文化に左右さ…

「荒涼」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ポーリン=スミス著 南アフリカ作家 荒涼なカルーの大地が舞台の「怒りの葡萄」的短編 不毛の大地で不作となり地主との喧嘩で父は倒れ農場追放に遭うプアホワイトの祖母と子供の放浪とその運命 アパルトヘイトに隠…

「公園」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ジェイムズ=マシューズ著 南アフリカ作家 公園で遊ぼうとする黒人の子供 だがアパルトヘイトがそれを許さない 白人警官は同情し体制に怒りを向けるも衆目を気にして敢えて黒人の子供を脅す 最後に白人の子供の乗る…

「辞書編集者殺し」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ タバン=ロ=リオング著 ウガンダ作家 〜現代アフリカ文学の祖エイモス・チュツオーラに捧ぐ献辞〜 殺された編集者が残した6つのメモ 脱税のために狂人の仮面を被り圧政の言論統制の中で”死んでいく言葉と文化”を憂…

「聖母の贈り物」

ウィリアム=トレヴァー著 アイルランド作家 12短編集 リアリズムながら神話的雰囲気を纏うトレヴァー短編の秘訣は何か? 思うに北欧神話ロキ等”トリックスター”的人物や事件が日常を掻き乱す所にあると思う 人が社会の歯車であると同時に小さな歯車の強さや…

「暗い逢引」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ グギ=ワ=ジオンゴ著 ケニア作家 独立期部族版「ロミオとジュリエット」 キリスト教的牧師の父を持つ少年とアフリカ的民族主義者の父を持つ少女 相容れぬ2人の出自に加え”イスラム的割礼”の文化が更なる亀裂を加え…

「臨終の贈りもの」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ サミュエル=カヒーガ著 ケニア作家 作家のキベラとは実の兄弟 盲目の少女に恋する少年 反対する肺癌で死に際の父 少女は角膜を貰う手術を行うがそれは臨終に名を伏せて贈られた父の眼だった… 恋人と父の眼が重なる…

「精子戦争」

“女は様々&男は凡百” 1日3億個生産 1射精4億個 男性の自慰は精子の新陳代謝 排卵日隠蔽は遺伝戦略 同性愛者ほど子孫を残す ライバル精子排除に最適な亀頭の形状 精子の形は攻撃・防御・特攻・囮役など10種類以上 受精能力を持つ精子は1% 不倫は生存生殖本能 …

「光を灯す男たち」

エマ=ストーネクス著 イギリス作家 “絶海の灯台は誘蛾灯の様に奇妙な人間を引き寄せる…” 100年前の灯台守3人同時失踪事件をモデルに小説執筆の調査をする作家 過去に消えた者と未来に残された者の心理描写が交代進行し“灯台下暗し”のスリル溢れるミステリ風…

「雨」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ グレイス=オゴト著 ケニア作家・BBCアナウンサー・インド航空CA 雨乞の為に人身供犠の人柱に選ばれた美しき部族王女とそれを憂う少年の決死の脱出劇 部族社会をあくまで近代的批判を伴わず客観的視点で描いた優し…

「ナイロビのかかし」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ オビ=エブナ著 ナイジェリア作家 ナイロビの白人地主夫婦は娘をThe Beatlesのライブに送り出す 矢先に付近で修道女が倒れ怪しい黒人が訪れ地主の裏の顔が暴かれ娘が行方不明になり…? 人種差別の齎す疑念が増幅す…

「アラビアン・ナイトメア」

ロバート=アーウィン著 イギリス作家・中世エジプト史研究者 君主カーイトゥベーイの支配する末期ブルジー・マムルーク朝 迫るオスマン帝国の脅威と落日 1人のイギリス商人が帝都カイロに迷い込み「千一夜物語」の語りを体験する 夢と現の交錯する魔都カイ…

「若い男/もうひとりの娘」

アニー=エルノー著 ノーベル賞フランス作家 2中編 “個人的な記憶の根源と疎外集団的抑圧を暴いた勇気と分析的鋭敏さ”を描いた真骨頂 “若い男” 息子ほど歳の離れた若い男に求愛される初老の女のかつてない程の悦楽感 “もうひとりの娘” 著者の誕生前に夭逝し…

「正式に結婚した女」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ アビオセ=ニコル著 ナイジェリア出身シエラレオネ作家・医者 ・シエラレオネ大学副学長 “幸福なアフリカ人キリスト教徒”として欧米紙に紹介された夫婦 部族社会的な夫と西欧化の薫陶を受けた元副妻現正妻の微笑ま…

「コインダイバー」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ シプリアン=エクエンシー著 ナイジェリア作家 シエラレオネとカーボベルデ近海 白人観光客がハイになって海に金を投げる そのお金を拾い外貨獲得で生計を立てる”コインダイバー” 囀るカナリアの陽気さも植民地主義…

「マヌエル・センデロの最後の歌」

アリエル=ドルフマン著 オランダ亡命チリ作家 「トリストラム・シャンディ」を想起する構成 現代日本にも似たピノチェト圧政下 “産まれてくることを拒否し連帯抵抗する胎児たち” 歌手センデロと子宮内のその孫がゼネストを戦い新世紀を”産まれる前から亡命…

「コーヒーと旅」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ アレックス=ラ=グーマ著 南アフリカ作家 アフリカ南部の荒地カルーを五感に訴えふ情景描写と多人種の文化にアパルトヘイトが根付く社会を的確に描写 コーヒー店のドライブスルーの場面を描くだけで南アの複雑な社…

「いちばん親切なこと」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ナディン=ゴーディマ著 ノーベル賞南アフリカ作家 パチンコで鳥を撃ち落とした少女 臨終間際に羽を散らし苦しむ姿を見て自責の念に駆られサンダルで踏み潰して安楽死させる アパルトヘイト極限状態下の弱者の寓意…

「ヘビのやさしいささやき」

一日一編 現代アフリカ文学短編集シリーズ ナディン=ゴーディマ著 ノーベル賞南アフリカ作家 蛇に唆され禁断の果実を食した楽園追放を想起する表題 不具の男は道端の怪我した飛蝗を見つけ似た運命に同情するが…? 弱者への優しい眼差しと徹底した写実主義が…

「生存者の回想」

ドリス=レッシング著 ノーベル賞イギリス作家 SFより近未来チックで大江健三郎「洪水はわが魂に及び」に似た設定 イラン出身ジンバブエ育ちの著者ならではの終末世界観 第三世界諸国(神秘共産主義)vs欧米支配国(物質至上主義) 絶望の世界に希望を潜ませあく…