MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-05-25 to 1 day

「恥辱」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著 ノーベル賞南アフリカ作家 ブッカー賞2度目の受賞作 犯罪率世界一”異常が正常”の南ア全社会問題を扱う 教授が生徒に手を出し田舎へ追放 娘は黒人にレイプされるも受容し結婚妊娠 英詩との連動や作中のレイプ加被害者の白…

「無垢の博物館 下」

オルハン=パムク著 ノーベル賞トルコ作家 “純情な不倫とは無垢な恋愛である” 会社経営も妻も捨ててまで夢見た美少女 だが男の滑稽さに幻滅し冷たく遇らい劇作家と結婚して彼は金蔓パトロン扱いを受ける 思い出に縋る様に彼女の所有物を収集し肉欲を満たす男…

「無垢の博物館 上」

オルハン=パムク著 ノーベル賞トルコ作家 イスタンブール実在の”無垢の博物館”が舞台 結婚間近の男が偶然にも18才の遠縁の美少女に恋し不倫を始める 結婚も延期し経営者の地位も交遊も徐々に失う “東西の十字路”トルコならではの東洋貞操観念vs西洋快楽主義…

「詩という仕事について」

ホルヘ=ルイス=ボルヘス著 アルゼンチン作家 ”お詩事”の真髄が分かる講義集 古今東西たくさんの詩と詩人を紹介し詩の果たす役割を分析 古英語やロマンス語など古典詩までつらつら暗唱出来るのが凄い これほど該博な人間が理屈ではなく感情任せに語る辺り言…

「夷狄を待ちながら」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著 ノーベル賞南アフリカ作家 とある帝国vs蛮族の睨み合い 「タタール人の砂漠」同様いつか襲われると怯えるが夷狄はこない 敵である夷狄文明の遺跡研究者が虐待された夷狄の少女を庇い反逆罪に 暴力・拷問・差別に便乗する…

「アガタ/声」

マルグリット=デュラス&ジャン=コクトー著 フランス作家 実験的な2著者2作品を収録 "アガタ" 記憶内で語り合う兄妹の近親相姦を植民地と宗主国の関係に準え愛憎晴れぬまま泥沼な関係を象徴 "声" 一方的な長電話という世に珍しき登場人物1人の作品 別れ話…

「方法序説」

ルネ=デカルト著 フランス思想家・数学者 “我思う故に我あり” 先人の哲学では真理に至らないと考えたデカルト そこで”神”から全く新しい”機械論”を提唱 懐疑論で科学の絶対条件の検証と疑問の徹底追及する必要を説き理性と悟性で証明していく 座標概念や演…

「鉄の時代」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著 ノーベル賞南アフリカ作家 アパルトヘイトは単純な黒人vs白人の構図ではない 古代ギリシアに因む”鉄の時代” 孤独な白人老女と黒人ホームレスの共生 白人の同情など現実はより複雑 作中ギリシア・ローマの単語が異常に多…

「カルタゴ興亡史」

ハリポタのフォークスは赤い Phoenix(不死鳥)の語源はPhoenicia(赤) 当時の高級貿易品目に因んだ神 即ちフェニキア人 アフリカ大陸一周や新大陸到達も噂される通商航海民族 700年の興亡はハンニバルやスキピオは勿論アルキメデス等も絡む ローマが最も恐れた…

「ニクソンとキッシンジャー」

現実主義外交大統領ニクソン×IQ200ユダヤ外交官キッシンジャー 日本に核所有を勧めベトナムから退き中国に接近しソ連と妥協し印パを操る だが大国主義に感け第三世界台頭を見破れずソ連や東欧への対応に苦慮 トランプ政権が主張する世界の警察官の限界を既に…

「三つの物語」

ギュスターヴ=フローベール著 フランス作家 近代の「素朴な人」 中世の「聖ジュリアン伝」 古代の「フェイディアス王」 現地調査と文体削減が徹底的な近代小説の祖 時代・地域・文化の違う3作をリアルかつテンポ良く捌く手際が凄い 鬼滅・鋼錬と同じで無駄…

「完全な真空」

スタニスワフ=レム著 ポーランドSF作家 完全な真空=空理空論の意 架空の本の架空の書評集 虚構を処理できる人間ほど頭がいい 即ち想像力の有無 株価予測やメンタリズム等もその例 言語も数学も全て人間が創造し記号化した概念 正にフィクション(虚構) 読後…

「ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか」

内村鑑三著 日本批評家・思想家 “天皇不敬罪の西洋かぶれ” 戦前日本の”代表的キリスト者”内村鑑三への揶揄 だが苦学で渡ったアメリカの酷な人種差別の中で牧師だけは施してくれた 明治期の移民・人種・宗教問題を実体験に基づく説得力で語る キリスト教改宗…

「マイケル=K」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著 ノーベル賞南アフリカ作家 母を失い都会のケープタウンから田舎へ迫害を逃がれ続ける 差別・暴力・貧困・内戦 絶望的状況だが主人公は最低限の衣食住があればと現実を受け入れる 西洋的な勧善懲悪話の死に様主義と異なり…

「カンボジア戦記」

“礼儀正しく鶏も殺せない少年” 数十年後2割以上の国民を虐殺した 名をポル=ポト ベトナム戦争の巻込事故で始まったカンボジア内戦〜和平までジャーナリストが分析 シハヌーク国王 ヘン=サムリン首相 フン=セン首相 クメール帝国再興は夢破れ東南アジア最…

「ファインマンさんの流儀」

アインシュタイン以後最大の物理学者リチャード=ファインマン デカルト宜しく全て自前で理論を立てしかも新発見 物理学がマクロ古典力学からミクロ量子力学に齎らした革命 ひも理論から超流動にクォークまで “分野の垣根を超えた20世紀最後のノーベル賞学者…

「白の闇」

ジョゼ=サラマーゴ著 ノーベル賞ポルトガル作家 “明日もし全人類が失明したら?” 秩序道徳経済の崩壊と暴力的現実 “白の闇”襲来と共に人間の醜聞が露呈 起承転はサラッと流し結までが長い典型的カフカ調+南米幻想文学の要素 真の盲目は御魂にあり 天災より…

「オリヴィエ=ベカイユの死」

エミール=ゾラ著 フランス作家 長編が得意な自然主義文豪の短編集 構成もオチも絶妙で仏文学にしては平易 死の臨死体験“オリヴィエ=ベカイユの死” 地縛霊の悲劇“呪われた家” 結婚の本質に迫る“ナンタス” 精力が齎す皮肉“シャーブル氏の貝” 才能の一発屋vs…

「統計分布を知れば世界が分かる」

統計分布で知る真のデータ”FACTFULNESS” 中央に平均が集中する”正規分布” 多数vs少数の格差を露にする”冪乗分布” 変数確立で密度を表し特徴は早めのピークと長い衰退”対数正規分布” 統計の用途・種類・実用例を解説 不規則的な複雑系と規則的な統計を塩梅よ…

「植物知識」

牧野富太郎著 戦前後日本を代表する”日本植物学の父” 古歌や文化も混えて草花と果実を紹介 苦学ながら植物へ愛を捧げた人生 林檎もバナナも食べれる部分は全部皮 シャクヤクや水仙など日本の花の名前は本当に中国由来が多いと実感 もちろん花弁や受粉など植…

「ゴリオ爺さん」

オノレ=ド=バルザック著 フランス作家 頑固パパな娘溺愛ゴリオ爺さん 社交界デビュー大学生 父を金蔓にする美人姉妹 マウント取りたがる貴族 現代でもあるあるなキャラが多く喜劇の普遍性を感じる 人は”悲劇のヒロイン”を演じたがる 逆説的だがその悲劇の…

「ハーメルンの笛吹男」

正に歴史ミステリー 1248.6.26 ハーメルン市にて130子女失踪 グリム童話”ハーメルンの笛吹男” 笛吹男は鼠退治で雇われたが報酬をケチられ逆襲で神隠し だが奇妙にも史実と伝説の一致がある 東方植民・技術移民亡命・都市人口爆発、、? 中世ドイツ大衆文化か…

「死の家の記録」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家 “死の家” 強制収容所の生活記録 反逆罪でシベリア流刑という自身の経験を基に執筆 劇を愉しみ労働に勤む一時代前のショーシャンク ムスリムやユダヤに貴族から農民までロシアの多民族・弾圧社…