MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-04-29 to 1 day

「かぜの科学」

平均で一生の内1年分200回罹り治療と欠勤での経済損失は年間10兆円とされる風邪 風邪は病名だがウィルスは200種以上存在し未だ特効薬はない 細菌は単細胞生物だがウィルスは無生物の分子で細胞をすり抜け直接DNAやミトコンドリアに訴えかける 結論:やはり手…

「野性の呼び声」

ジャック=ロンドン著 イギリス作家 温室育ちの飼い犬バックがゴールドラッシュを契機にアラスカで橇引きとなり野性を覚醒させていく話 最初は犬を棍棒で殴るなど金発掘に狂う”野蛮な文明人”の下で橇を引くが才を買われリーダー犬となり自然に帰る ダイナミ…

「へんに進化してしまったいきもの」

“残念な動物シリーズ”等この手の進化・絶滅した動物図鑑が流行している昨今 生物学は基本理論はダーウィン進化論や分類と難しくないが地球に数億種といる生物の生態となると途方もない とっつき易い図鑑タイプで進化の理由と動物の生態が分かる本なのでオス…

「文学効能辞典」

“文学は戦争の対義語たり得るか?” これは大袈裟だが大学時代そんな論文を書いたことがある 文学は問題解決の方法を提示する意味で正に悩みへの”書方箋”になる 該著は辞典形式で海外有名文学の古典を中心に”〇〇な時に読む本”を項目別に紹介 文学の社会的意…

「黒猫/モルグ街の殺人」

エドガー=アラン=ポー著 アメリカ作家 人間の持つ最も論理的な感情”恐怖” 本能的な愛や憎悪と異なり理由もなく恐怖は感じえない その意味で理解不能に見える”狂気”を”恐怖”として解読していく推理小説は人間の論理分析と言える “恐怖の作家”ポーがまた同時…

「西洋占星術史」

“獅子座の人は今日ハッピーな1日が待っているでしょう!” 4千年前から科学全盛期の今日まで変わらず人気な星占い “バビロニアの知恵”で星座と12&60進法が誕生 東洋で呪術に西洋で魔術に発展した占星術 月水金=女神(ヴィーナス等) 火木土日=男神(マルス等) …

「書物の破壊の世界史」

本好きには唆る”書物破壊史” 歴史と共に書物は増える しかし今日その99%が存在しない 異端・嫉妬・災害・戦争・検閲、、 人類は様々な理由で書物を破壊してきた ”本を燃やす者は人も燃やす” アレクサンドリアもバグダードも長安も図書館消滅以降2度と歴史に…

「復讐者たち」

“ー法も裁判も国家なくして叶わないー” ナチスを裁くには”復讐者”にならねばならない 地獄の果てまで捜して殺す イスラエルがパレスチナに築壁と弾圧を始めて半世紀経つ これは“現代のホロコースト”ではないのか? 文豪エミール=ゾラなら今のユダヤをこう皮…

「羊飼いの指輪〜ファンタジーの練習帳〜」

ジャンニ=ロダーリ著 イタリア短編ファンタジー作家 20の短編ファンタジーの書き出しに全く違う各々3つのオチを用意 結末へどう繋ぐにせよ物語はやはり書き出しで決まるものと実感 正に短編の練習帳 ファンタジーのしかも短編という最難関を構成を違和感な…

「リーマンショック=コンフィデンシャル 下」

“神の見えざる濡れ手に粟” 自由市場を過信し過剰投資した結果バブルが掌から溢れ弾ける リーマン破産AIGメリル倒産 誰もが融資を戸惑う中FRBと三菱UFJが1兆円規模で救済 自己中な幹部を余所に大恐慌は止まらない 以後アメリカ経済の主役はITのGAFAに移行

「リーマンショック=コンフィデンシャル 上」

金融マン必読 リーマンショックの真実に迫るノンフィクション “金ピカ時代の再来” 空前の繁栄を謳歌するウォール街5大投資銀行と名門銀行 巨額貯金&投資で誰もが審査なく借金可能なサブプライムローン しかし密かにリーマンの株価が謎の暴落を始め、、?

「絵のない絵本」

ハンス=クリスチャン=アンデルセン著 デンマーク作家 「人魚姫」等デンマークを代表する童話作家 近代とはいえまだ江戸っ子の識字率の方が高かった時代に絵のない絵本は珍しくない 月が世界各地を見守っておりインド中国ヨーロッパとほっこり話を展開 地味…

「火花」

又吉直樹著 芥川賞受賞作 小説&映画のW鑑賞 お笑い芸人の映画なのに最後まで笑えない笑わせてくれない 客を笑わせて自分が笑うのは堪える 芸人の理想を追う師匠と茶の間受けの芸風を選んだ弟子 芸人という職業の光と闇を火花と夜空のコントラストで余す事な…

「帝国と国民」

帝国主義と国民国家の中庸を探る文明システム論 ネグリやハートなど最新気鋭の研究者からスルタン=ガリエフに明治文豪の手紙まで著者の博学さに舌を巻く 20年前発行だが「歴史の終わり」や「文明の衝突」を論破し現代情勢まで的中させている 抽象的になりが…

「椿姫」

デュマ=フィス著 フランス作家 「三銃士」で有名なアレクサンドル=デュマの実子 ヴェルディ作曲のオペラも有名 男と金に派手だが愛み無知な高級娼婦 女に初で強情だが純情な少年 愛し合う程に過去が血縁が嫉妬が邪魔しすれ違う2人 運命に抗い必死に生きて…

「ロビン=フッドの愉快な冒険」

ハワード=パイル著 アメリカ作家 中世イングランド騎士道伝説をアメリカ人パイルが近代に編集した冒険譚 弓の名人にして弱気を助け悪を挫く義賊の親玉ロビン=フッドが部下や王家も巻き込んで冒険!! 所謂アウトロー話は同時代中国の「水滸伝」にも見られる…

「箱舟の航海日誌」

ケネス=ウォーカー著 イギリス作家 ノアの箱舟 聖書中の大洪水を避けるべく各種動物とノアが箱舟で大量絶滅から生き延びる話 その箱舟航海中の闇を想像力豊かに描く ほんわか動物がたくさん登場して和やかなスタートを切るが徐々に自己生存の為の知謀と残虐…

「食の宝庫キルギス」

キルギスと中央アジアの食文化史を100Pで解説 中央アジア名物料理と言えばピラフ・アイラン・ナン、、 キルギスは高原と牧草に恵まれ中央アジア随一の農牧文化を誇る シルクロードに位置し食文化の融合が進んでいるゆえ料理も多彩 特に相棒の馬のチーズや馬…

「秘密の花園」

フランソワ=バーネット著 イギリス作家 “孤独” 人間が最も耐え難いものだ インドで親と使用人が全滅した世間知らずの少女メアリ イギリスの親戚の下で出会う優しき使用人達と一家の恥扱いされる少年コリンに出会い成長していく 2人が育んだ”秘密の花園”は小…

「歴史でわかる科学入門」

平易な文でコンパクトにまとめた科学史入門書 古代メソポタミア占星術から現代IT技術まで科学6000年の歩みを著述 古代は概説に留まり近代西洋のウェイトが圧倒的に高いが偉人と現象解説のバランスが良い フックやボイルにファラデーなど隠れた偉人の丁寧な解…

「盗まれた細菌/初めての飛行機」

ハーバート=ジョージ=ウェルズ著 イギリスSF作家 “SF小説の父” 現代はITやAIなど”見えない科学”の革命時代だった しかし100年前は戦車や核爆弾と”見える科学”重化学工業革命の時代 人々は科学の未来に想像を膨らませた ウェルズの短編SFは想像力豊かで理論…

「ねむり姫」

澁澤龍彦著 平安〜江戸の古典説話を現代風ラブコメに短編化 所々で生と死や近親相姦などのシンボルとモチーフが潜む タイムスリップや妖奇譚はボルヘスやバルガス=リョサに似ている 掲載の短編は以下の通り 「ねむり姫」 「狐媚記」 「ぼろんじ」 「夢ちが…

「30の都市からよむ世界史」

古今東西世界史の都市30+αを紹介 初級レベルの知識を丁寧に解説 世界の都市には豊かなドラマがある そして掲載都市の内30/37を既に訪問済みだった、、笑 最近”日本史と絡めて読む世界史”的な本が流行りですが相乗効果を感じないので世界史は世界史で勉強した…

「マダム=エドワルダ/目玉の話」

ジョルジュ=バタイユ著 フランス作家 三島由紀夫が彼の著作を読み葛藤から自殺を決意したという ヘミングウェイを模したシュールレアリスム的文体 レイプ・球形嗜好症・失禁趣味・破壊的自慰、、! エロスの先に神を見る 下ネタとエロティシズムの違いは何…

「SYNC」

非線形科学と複雑系の生む不思議な調和を科学的に分析 調和を求めてあらゆる事物は同期現象に収斂していく 自然・経済・物理・心理・乃木坂! どんな無秩序も最終的にはシンクロニシティ♬ きっと誰だって誰だってあるだろう♪ 、、と天上天下唯我独尊マイノリ…

「詩学」

アリストテレス著 悲喜劇創作論 “畏れと憐み”を模倣した物語が悲喜劇 私見だが古代ギリシアはペルシア史の一部に過ぎず過大評価ゆえ世界史指導要領の半分で十分 しかしアリストテレスは別格 論理的かつ実学的 為にイスラム世界で最も尊敬されその研究がヨー…

「破壊する創造者-ウィルスがヒトを進化させた-」

遺伝子の割合はDNA=1.5%:ウィルスは=43% 99%は人畜無害で寧ろ有益 また異種配合・共生・獲得形質を動植物に働きかけ自然淘汰が何万倍も加速 細胞内もDNAもウィルスが主役 次世代の“ウィルス共生進化論” HIVがヒトの健康に不可欠な日が来るかもしれない

「唐草物語」

澁澤龍彦著 澁澤龍彦の古今東西不思議話エッセイ集 ティムールの船上遊戯が妙話 既に全盲隻脚短命の身の彼はカスティーリャ王国外交官クラビホとチェスで賭けをする 勝ったクラビホがヨーロッパ侵攻から目を背けるために明遠征を唆したが無理が祟り途上で没…

「ダーウィン以来」

スティーブン=ジェイ=グールド著 現代進化生物学の旗手 人種差別・進化論誕生秘話・性淘汰・大絶滅・古生物学・脳進化史 進化論は即ち生物の歴史 古代文字解読に似た険しい化石解読 そして現代に存在する生物たちの逞しさと美しさと知恵 "ダーウィン以来"…

「二十一世紀の資本主義」

スミス・マルクス・ケインズ・シュンペーター理論を130Pに纏め未来推測をする 中立的ゆえ筆者の主張が明快でないが資本主義はそれ程に複雑なのだと改めて感じる 指令型社会主義は無理と結論付けているが最近のITやAIの勃興と中国型資本主義台頭を見ると新時…