MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-04-29 to 1 day

「アメリカ合衆国の膨張」

独立後80年で国土を10倍に膨張させた合衆国 自由貿易の北部vs奴隷労働者擁護の南部の南北戦争 この膨張を可能にしたのが移民 華僑とスコッチの移民の死体と低賃金が完成させた大陸横断鉄道 しかし完成写真に両者はいない 移民・人種差別を置き去りにアメリカ…

「物語 ストラスブールの歴史」

ドイツ司教カトリック都市 ノーベル賞14人輩出のフランス学術都市 両国領土を3度も交代したため戦後EU思想が萌芽した街 アルザス=ロレーヌが中心都市”EUの議会”ストラスブール ライン川を沿いの岩塩と炭鉱豊富な交通の要衝 独仏間の様相はドーデ「最後の授…

「アメリカとフランスの革命」

50年の内に南北中米がほぼ独立し西欧で近代化が進む”環大西洋革命” アメリカ独立&フランス革命は同じ理念を抱き連動した アメリカ独立13州は南北中部で事情が異なり初めから多民族・多宗教で既に帝国主義が垣間見える “流血と自由”・”革新と停滞”は欧州を塗…

「不道徳な経済学」

世界中で売買春・麻薬・転売の合法化ブームが最近著しい “自由ほど不自由なものも平等ほど不平等なものもない” NIKEは工場の児童労働を非難され撤退したが失業した児童たちは売買春や物乞いに従事せざるを得なくなった 一見は不道徳に見えるビジネスも実は市…

「進化の設計」

生命誕生〜人類登場までの進化のメカニズムを航空学者が考察 航空学者だけあり鳥とその祖先の翼竜・始祖鳥への考察が一級 「わけあって絶滅しました」の文庫版みたいな面白さ それこそ足の生えた蛇である恐竜が全滅したように進化って意外と蛇足が多い

「火星の人類学者」

脳神経難病患者のNFドキュメンタリー サヴァン・自閉症・アスペルガー 盲目から視力を得たが鮮烈すぎる世界に眩み再び失明を選ぶ者 1970年以降の記憶が蓄積不可な”最後のヒッピー” 色盲ゆえの天才画家 感情が理解不能な”火星の人類学者” 難病患者達の感覚・…

「物語 フィンランドの歴史」

正式国名“スオミ”ことフィンランド 600年スウェーデン領 100年ロシア領 独立100周年 戦場続きのスウェーデン時代 寛容なロシア時代 善戦した世界大戦 ナチスに加担し敗戦国で再出発した戦後 優秀な人材・柔軟な外交・現実的な福祉政策 学び多し福祉先進国フ…

「新世紀の世界と日本」

ソ連崩壊後の現代史と日本現代史 冷戦終結=ソ連崩壊ではない 中国台頭やEU発足と”文明の衝突”以上に文化圏が交錯”する現代 多極的かつ複雑な国際経済を鳥瞰する必要がありシリーズで最も執筆が難しい印象 やはり池上彰の新書ではなくこういう教科書や学術書…

「族長の秋」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著 ノーベル賞コロンビア作家 360Pで6段落のみ 会話も括弧がなく物語の連続性を慮る重厚な構造 中南米の架空国家大統領 120とも230とも噂される年齢 虐殺など絶対的な権力を持つはずの独裁者 仮面の下の孤独と猜疑心の果てに…

「世界大戦と現代文化の開幕」

“短期決戦”のはずだった“現代の三十年戦争”第一次大戦と戦間期 敵国ドイツ語ゆえ”ソールズベリ”に改名したハンバーグ 戦勝国の三国協商より躍進する敗戦国ドイツ 虚像の“永遠の繁栄” 悲願なはずの民族自決と独立に苦悩する東欧 歪んだ民主主義からファシズム…

「酒が語る日本史」

儀式など神酒に始まり田楽と共に祭祀化した酒 やがて盃を交わすなど宮廷儀式に至り江戸時代で庶民化して酒に合う”肴”の寿司・鍋文化が発展 信長に”酒か刀か?”と迫られた光秀 酒と女に溺れ政治を疎かにした伊藤博文 文化としての酒はもちろん時代身分多彩な…

「洞窟の偶像」

澁澤龍彦著 現代作家の評論集 シュールレアリスムや三島由紀夫など現代作家と現代文学の潮流を分析 “革命の国”フランスと”自由の国”アメリカの自由闊達な思想 エロス文学を許容する表現や検閲を飛び越える背景がありだからこそ戦後はアメリカとフランスに傑…

「ムッシュー=アンチピリンの宣言 ダダ宣言集」

トリスタン=ツァラ著 ルーマニア出身フランス人にしてダダイズム提唱者の思想論 “ダダ”の名称に意味はない 第一次大戦で崩れた近代欧米の理性主義を否定する反現代芸術 中原中也など日本でも支持がある この一角からブルトンの超現実主義が生まれた

「自立へ向かうアジア」

独立・統一前後の中国とインド史 “ハンニバルのアルプス越えなど遠足に等しい”と言わせしめた共産党の長征 今の習近平体制からは想像もつかない苦難の道だった “植民地インドの三流指導者”にして”世界史上最大の偉人”ガンディー たった1人で大英帝国を震撼さ…

「アラバスタの壺/女王の瞳」

レオポルド=ルゴーネス著 アルゼンチン作家 ボルヘス絶賛のラプラタ幻想文学詩人ルゴーネスの短編18集 ヒエログリフから動物学や宇宙論に神話やイスラムまでの博学を誇る 国連文化委員を務めるも社会主義とファシズムに傾倒し自殺 SFにも現実世界にも感じる…

「地中海世界 ギリシア・ローマの歴史」

ギリシアとローマを地中海世界として連動させる野心的な本 アルプスなど後ろが急峻な山で波が穏やかな地中海は多くの民族が海洋交易に進出 商業貿易国家ほど商人の発言力が強く貴族政・民主政になるが一方で債務奴隷も横行し市民より奴隷が多い状況も生まれた

「アルケミスト」

錬金術を信じる少年の夢探しの旅 子供が夢を見れない国はクソだと思う 子供は大人を見て育つ 今の大人は子供がなりたい職業1位がYouTuberなんてと溜息を着く でも毎日ダルそうに仕事から帰ってんの見たらそりゃ楽しそうに生きてるYouTuberの大人に憧れるわな…

「人類が消えた世界」

人類滅亡NFSF 人類が突如消えたら世界はどうなるか? タンガニーカ大地溝帯湖 朝鮮戦争停戦地区 プラごみ海域 ドーバー海峡 アパラチア石炭鉱山 カッパドキア地下都市 パナマ運河 イギリス化学農園 結論:やはり自然は元通りでどんな都市も緑・氷河・砂漠に包…

「アジアと欧米世界」

近代世界システム論と国際貿易史 川北さんの本は経済史が奥深い アヘン戦争まで圧倒的だった清 伝来直後は世界一の鉄砲生産国だった日本 平和かつ豊か故の鎖国 だが幕府は清の敗北を知り迅速かつ狡猾に比較的対等な条約を結んだ お陰で領土割譲も侵略もなく…

「30の都市からみる日本史」

火山列島で複雑かつ豊かな地形を持つ日本には個性的な都市が多い この狭い国土に多く独自の地方分権が成立した国はドイツやイタリアなど限定的 日本史から見て都市文化が生まれたのが戦国時代で最も花開くのは江戸時代 想像以上に古代にも近代にも多くの国際…

「ヴィクトリア女王」

世界の1/4を支配した大英帝国の象徴ヴィクトリア女王 日記から生の言葉を引用しており議会への口出しやビスマルクとの駆引と人間味や逞しさが分かる ヴィルヘルム2世・ニコライ2世などヨーロッパ王室の母でもある 没後10年で孫たちが世界大戦が始めるとは夢…

「知れば知るほど面白いツタンカーメンと古代エジプト王朝」

父イクナートンの神官排除策で怨みを買い夭逝したファラオ史上最弱のツタンカーメン 墓がしょぼ過ぎて歴代で唯一盗掘を免れた 実はエジプトよりピラミッドが多いスーダン 進攻時ファラオ宣言でエジプト支配を正当化したアレクサンドロス大王

「大モンゴルの時代」

宋の純白磁器 イランの青モザイク陶器 “海の道”は別名”陶磁の道” ユーラシア経済圏が陶器+磁器=陶磁器を可能にした”闘わない最強軍団”モンゴル そしてトルコ・イスラーム化するモンゴル後継国家 中央アジアは土着のシャーマン信仰と相通ずる神秘主義のイスラ…

「馬の世界史」

100年前の主要交通手段は馬車 馬は軍事・農耕・交通と家畜化に最も成功した動物 その機動力から馬=船に準えられ海神と同時に馬神のポセイドン 確かにペガサスはポセイドンとメドゥーサの子 駿馬産地の西域から覇を唱えた秦 アラブ馬で拡大したウマイヤ朝 近…

「西ヨーロッパ世界の形成」

農耕家畜・騎士・城・教会・教育・商業・開墾・家族観・衣服 民族移動以外の政治史を中世西洋の”モノ”で語る大胆な試み 地方領主の分権的封建制の一極集中型の政治より個人大衆共存型社会を分析重視する中世史の方が理解が深まる 貴族や農民の生活が目に浮か…

「華やかな食物誌」

澁澤龍彦著 前半は欧米食文化史 後半は美術史と旅行記回想 燕の巣・竜の臓物・水銀 古来より人間はグルメ 食べては吐いてを繰り返したローマ人 料理でウィーン会議を優位に持ち込んだタレーラン 不死鳥を食べたいと言い淫事と暴食を繰り返したローマ少年皇帝…

「物語 現代経済学」

“アルフレッド=ノーベル記念スウェーデン銀行経済学賞” 本来ノーベル経済学賞は彼の遺言にはなくスウェーデン国立銀行の支援記念に作られたオマケに過ぎない賞 シカゴ学派などアメリカ有名学者一辺倒の現代経済学へ多様性導入の警鐘を鳴らす ハイエクやサミ…

「だまされた女/すげかえられた首」

トーマス=マン著 ノーベル賞ドイツ作家 段落びっしりの文体と性の哲学分析が光る 前編は老女の後編は幼女の性への覚醒がテーマ 家が立つ金額で古典文献を徹底研究し創作する点が高評価の源 官能ネタと相性がいいのかインドが舞台の後編のヒンドゥー神話・哲…

「長靴をはいた猫」

シャルル=ペロー著 フランス作家 澁澤龍彦訳 童話は残酷で性的で悲劇が多い でないと子供への教訓や戒めにならないから 赤頭巾も食われて終わり 人魚姫も人間になった姿が不気味とフラれて終わり 意外と有名作が多い著者 ・親指太郎 ・シンデレラ ・長靴を…

「すごい物理学講義」

邦題が残念だが良著 ミレトス学派原子論〜現代の時空間概念の変遷を考察 “時間とは燃焼” 火のない所に煙は立たぬ 煙から蝋燭は生まれぬ 確かにE(熱量)=m(質量)c(光速)*2 燃焼が時間を生むならビッグバンで宇宙が始まり現在もその熱運動継続で膨張し最後に燃…