MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-04-29 to 1 day

「ラテンアメリカ文明の興亡」

先史〜現代まで中南米史を網羅 実は最も植民地化激戦区で故に海賊が跋扈したカリブ海 拡大の過程がアメリカの西漸運動に激似のブラジル インカ滅亡と大西洋奴隷貿易の分析 革命や近代独立史の英雄 ラテンアメリカ史がヨーロッパと一心同体で進んできたことが…

「成熟のイスラーム社会」

1侯国からスルタン戴くイスラーム盟主になったオスマン帝国 1教団から軍事王朝国家になったサファヴィー朝を活写 題名通り政治史は簡潔に社会経済文化に焦点 この時代の文化が今のイスラーム世界の直接的な遺産 特にサファヴィー朝2代皇帝タフマースブと王…

「世界の経済がひと目でわかる地図帳」

NYが映画産業中心地だったがWASP独占状態を嫌い晴天で流行りの西部劇ロケに絶好なハリウッドにイタリア&ユダヤ系が移住し発展 アメリカと時差が12時間で被らず昼夜交代で管理可能なためインドはIT産業が発展 経済は地理や地政学が生む 経営者こそ地理を学ぶ…

「狂気の愛」

アンドレ=ブルトン著 フランス批評家 シュールレアリスム(超現実主義)の泰斗ブルトンの文化芸術論 フロイトの象徴主義的心理学 マルクスの理想主義的唯物論 2大思想は現実を越える”無意識の想像”を生む その先に人間の本音=”狂気の愛”がある 漫画やVRなど…

「エロスの解剖」

澁澤龍彦著 古今東西エロティシズム分析 単細胞生物も細胞分裂時に性行為の抱擁を見せる 考えれば大量消費社会の現代はセックスシンボルに溢れ実際に物欲が性欲を勝るのか先進国は後進国より出生率が低い フロイト曰く”人間の根源は性欲” 動物のそれが昇華し…

「三菱・三井・住友 三代財閥が分かる本」

日本GDPの1/4を占める3大財閥 明治維新から台頭した”組織の三菱”60兆円 呉服屋時代から既に革新的だった”人の三井”45兆円 銅精製から台頭した世界最古の財閥”結束の住友”30兆円 中小企業が強い日本だが商社など先兵財閥柄開拓してこそ 因みに韓国は75%が財閥

「マクニール世界史講義」

「疫病と世界史」も著したマクニール著 「世界史」で有名な著者の理科的分析を交えた世界史 講義式なので読みやすい 近代世界システムを軸に病原菌や地理生化学から世界史を斬る 「銃・病原菌・鉄」で分かる通りもはや歴史は文系より理系の方が文明論の謎を…

「”妖精・天使”眠れないほど面白い辞典」

錬金術・神話・古代呪術儀式という変態的な趣味がある人にオススメ 欧米文学を読んでいると宗教や神話からのオマージュや引用非常に多いと分かる ピクシー ペガサス エルフ 堕天使 ミカエル ヨルムンガルド マンガ・ゲームのネタになることも多く面白いかも

「マンガ”坂本龍馬”伝!」

マンガだが硬派な一冊で他の英雄も多く登場 龍馬の妙はそのバランス感覚と裏方に徹する姿勢 薩長同盟仲介 大政奉還仲介 海援隊の実力主義 内乱より団結こそ維新の源 大政奉還直後暗殺だが生きていれば脱亜入欧派は確実で苦楽を共にした西郷など征韓論派とは…

「青い麦」

シドニー=ガブリエル=コレット著 フランス作家 美少年・幼馴染み・人妻の三角関係の恋 思春期の心理と植物の繊細で鮮やかな描写がコートダジュールを彷彿とさせる フランス文学には娼婦人妻ロリコンが鉄板で同年代の恋愛がない 当時の女性は婚前交渉も恋愛…

「宇宙についての基礎知識」

150Pで宇宙の基礎を解説する名著 水星や金星など太陽に近い惑星ほど熱も重力も強いので鉱物惑星になり熱い 土星や木星など遠いとガス惑星になり寒い 宇宙を考える上で”密度”と”重力”と”スペクトル”がやはり重要と分かる 最後の章では大陸移動説や地球生命の…

「地図で読む日本の歴史」

古代から現代まで主に政治と戦争の地図で見ていく日本史 日本は起伏が激しい山地を持ち河川が多いため地方分権が成立しやすくしかも強い やはり群雄割拠の観応の擾乱〜江戸幕府成立までが面白い そして日本にはこんなに城や藩が多かったのかと改めて痛感 手…

「よく分かるエジプト神話」

エジプトに行くので神話の勉強 現在のイスラムは一神教だがエジプトは元来異文化寛容な多神教 その寛容さから神話内で矛盾する伝説がある程 生命力の強い蛙やフンコロガシやスカラベが神 上下エジプトでオシリス信仰のヘリオポリス神話とラー信仰のヘルモポ…

「ビリー=バッド」

ハーマン=メルヴィル著 アメリカ作家 船員だった経験を武器に海洋冒険小説を手がけた著者 身も心もイケメン船員”ハンサムセイラー”ことビリー しかし船上という法と国家の及ばない地で鞭打ちや虐待を目にし執行者を殺害 随所にキリスト教倫理観が垣間見え哲…

「文明」

西洋が近代で覇権を取れた理由を6つに定めて解説 競争:国家管理→民間主導 科学:産業革命→武器・戦争の激化 医学:死者激減→人口爆発 所有権:近代法律→所有権・私有財産権 労働:効率追求機械化→社会主義 消費:大量消費社会

「猫とともに去りぬ」

ジャンニ=ロダーリ著 イタリア児童文学作家おとぎ話の短編16集猫になりたくてなる辞めたくて辞める魚になって街を水害から救う子供が夢を見れない世界に強く反対する著者子供は国の宝です子供は自由でなんぼ“なりたい自分になっていいんだよ”

「物語 イスラエルの歴史」

「物語 イスラエルの歴史」イスラエルの地理歴史を軸にユダヤ通史を解説乳と蜜の豊かなパレスティナ“ユダヤ”と”イスラエル”の違い初めはパレスティナではなくウガンダにホームランド案があったローマ・ビザンツ時代の方がイスラム時代より著述が多いがある意…

「ポールとヴィルジニー」

ベルナルダン=ド=サン=ピエール著 フランス作家 蘭領→仏領→英領と変遷した仏領時代モーリシャスが舞台の恋愛文学 ポール(Paulo)とヴィルジニー(Virgin)の通りキリスト教的文学 ルソーと親密なだけあり自然&キリスト教崇拝が強い 愛し合う幼なじみを悲劇が…

「肉体の悪魔」

レーモン=ラディゲ著 フランス作家 20歳で夭折した早熟の天才の実体験に基づく 少年と若妻の不倫話 よくある話でオイディプスコンプレックスの典型 だが不埒な話でも深く共感させてしまう文体は流石の一言 フランス文学は台詞と会話が少ない 逆に心理描写が…

「第二次世界大戦から米ソ対立へ」

第二次世界大戦中の原爆投下・虐殺・破壊 その裏にある狡猾な外交の駆け引き 結果的に圧倒的大国のアメリカと戦争の立役者ソ連に譲歩が集中し対立して冷戦が蠢く 二極化する東西陣営と胎動する第三世界の国際情勢が面白い 複雑な戦後史を冷戦ベースでよく纏…

「緑の家 下」

マリオ=バルガス=リョサ著 ノーベル賞ペルー作家 インディオと言う理由で強制改宗のため皮肉にも修道院で清貧な生活の後に貧困から娼婦に身を堕とさざるを得ない少女 娼館”緑の家”とそこに縋る少女と迫害する神父たち 賊に襲われ恋愛と結婚を経て次世代の…

「緑の家 上」

マリオ=バルガス=リョサ著 ノーベル賞ペルー作家 祖国ペルーを舞台に5つの時間軸と2つの空間軸で40年に渡って描く叙事詩的小説 砂漠の娼館”緑の家” 石器時代水準のインディオ棲まう集落 密林の中の修道院 喧騒と欺瞞の首都リマ 初期リョサの作品は挑戦的手…

「ひとさらい」

ジュール=シュペルヴィエル著 フランス作家 孤児引取に精を出す慈善的な元大佐の紳士 しかしその実は幼女性愛志向が不気味に点滅する優しさと”人攫い”の一面 妻と子供との距離の取り方に葛藤し最後は、、! 優しく面倒見のいい面と怪しく読めない大佐が同棲…

「異体字の世界」

始皇帝の小篆〜許慎の説文解字〜康熙帝の康熙辞典と漢字は発展した 日本も漢字文化圏として多大な影響を受ける 英語を国語にしようとしていた森有礼 理由は同音同意語が多く漢字の統一化が難儀だったから “邉”だけで30種 陸軍学校は独自文字を勝手に教育 欧…

「恐るべき子供たち」

ジャン=コクトー著 フランス作家 自身のアヘン中毒治療期間の17日で書き上げた小説 1つ屋根の下の相部屋に住む相思相愛の若き姉弟 だが弟に恋人ができて嫉妬した姉が残酷な恋人迫害を始める 弟はこの近親相姦の縛りに苦しみアヘン自殺 それを見て姉はピス…

「オンディーヌ」

ジャン=ジロドゥ著 フランス国民的劇作家 ドイツ通が昂じてフケーの「ウンディーネ」をアレンジしたのが本著 アンビバレントに悲喜劇の両面を持つ 純な人間と初心な水の精の禁断の愛がテーマ 2人のすれ違いが人類文明と自然環境を象徴しており環境破壊を警…

「賭博者」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家 世界文学最高峰の心理分析×賭博のリアルが実に相性が良い 嫉妬・色欲・傲慢 人間の内なる醜さを描くのが常套手段だが珍しく滑稽さも伺える ルーレットの様に廻る賭博者たちの滑稽な姿が見所 著…

「イスラーム世界の興隆」

特に中世エジプトに詳しい 僅か1世紀足らずでスペイン〜インドを征し1400年後の現在まで続く“中世最大の奇跡”イスラーム爆誕 君主の大半が奴隷出身 信仰に民族は問わない 貧者救済は義務 異教にも寛容 教科書では王朝名の暗記で終わるが実はドラマの多い英雄…

「応仁の乱」

戦国時代の幕開けとされる応仁の乱 その割にイマイチ全貌が掴めない 時はまだ仏教が勢力を持つ頃で大和国僧2人の派閥争いに端を発する やがて将軍後継争いと細川vs山名の経済覇権闘争で京都は炎禍に散る 文字通り京都が燃え尽きると同時に地方の守護が力を増…

「アルテミオ・クルスの死」

カルロス=フエンテス著 メキシコ作家 南米文学ブームの火付け役 メキシコ史激動期に成金になった男が死の淵に走馬灯で人生を回顧 特徴はスペイン語動詞の特徴でもある”語り手の時制” “わし”一人称=現在形 “お前”二人称=未来形 ”彼”三人称=過去形 歴代メキシ…