MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-02-28 to 1 day

「東スラヴ人の歌」

一日一編 東欧怪談集 リュドミラ=ペトルシェフスカヤ著 ロシア作家 4連作短編 “母の挨拶” “新開発地区” “手” “小さなアパートで” 戦争に駆り出され妻と生き別れた男と女のその後の人生を提示する ロシア人なのか? 東スラヴ人なのか? 巨大国家ソ連の人民ア…

「夢」

一日一編 東欧怪談集 ジブ=アイ=ミハエスク著 ルーマニア作家 ロシア革命の最中に夢を見る男 生き別れた妻とのたくさんの思い出が溢れ出る夢 それは過去としての記憶 それは現在としての夢幻 それは未来としての希望 思い溢れる言葉がどこまで夢でどこまで…

「アウターダーク」

コーマック=マッカーシー著 アメリカ作家 南部ゴシックに農村版カフカ的不条理も感じさせる深淵な世界 極貧下で兄と妹は近親相関に救いを求めた 生まれ落ちた赤子を沼に捨てた兄 妹は赤子を探しに単身放浪し兄はその後を追う 暴力・逃走・追跡… 極限状態の…

「一万二千頭の牛」

一日一編 東欧怪談集 ミルチャ=エリアーデ著 ルーマニア作家・宗教学者 あれは皇帝の時計… “あちらの世界”には六千頭の牛の最高級ステーキ… これも皇帝の時計… “こちらの世界”にも六千頭の牛の最高級ステーキ… “分たれた反転世界”で占めて一万二千頭の牛の…

「恐るべき緑」

ベンハミン=ラバトゥッツ著 オランダ系チリ作家 5連作短編集 国際ブッカー賞最終候補 “21世紀のボルヘス現る” 無限の感性と質量 詩や物語と量子力学は親和性が高い “プロメテウスの火”を齎した近代科学の偉人と偉業が芋蔓式に羅列 人類発展を命題とする科学…

「賃労働と資本/賃金・価格・利潤」

カール=マルクス著 ドイツ経済学者 世界と日本で今こそ最も読まれるべき経済学者マルクス 資本蓄積が賃金に分配されない 労働者が働く程に貧困で格差拡大 利潤を追求する程に競争原理が加速し賃金の罠が価格転嫁に繋がらない 新聞投稿記事のため「資本論」…

「吸血鬼」

一日一編 東欧怪談集 ペトロ=ミト=アンドレエフスキ著 マケドニア作家・詩人 某農場主の葬儀の日から村に現れ始めた吸血鬼 怯懦の人々は”吸血鬼が視える男”に対峙を依頼し遂に夜の闇で銃殺に成功する しかし殺害現場には吸血鬼の死体はなく代わりに”ある人…

「ルカレヴィチ エフロシニア」

一日一編 東欧怪談集 ミロラド=パヴィッチ著 セルビア作家 「ハザール辞典」抜粋 昔々ドブロヴニク地主貴族ゲタルディチ・クルゥホラディチ家に生まれルッカーリ家に嫁ぎしユダヤ族あり 追放の浮き身に遭いドラキュラに甘美な死を求めて懇願せし 乳と蜜の国…

「この星でいちばん美しい愛の物語」

チンギス=アイトマートフ著 キルギス作家 “最も美しい愛の物語”とは何だろう? 思うに誰も触れない2人だけの国(スピッツ「ロビンソン」)を築く愛だと思う 村も家柄も男前の許嫁も財産も全て捨てた美女と気弱な男の駆け落ち 唯一その胸中を知る友人の語りも…

「象牙の女」

一日一編 東欧怪談集 イヴォ=アンドリッチ著 ノーベル賞ユーゴスラヴィア作家 中国人から購入した女が彫られた象牙をポケットに大事にしまう男 すると突如”象牙の女”がベッドの上に現れ誘惑を始める カルシウムで出来た彼女 即ち”本物の愛や善”を拒んだ男を…

「バビロンの男」

一日一編 東欧怪談集 アイザック=バシェヴィス=シンガー著 ノーベル賞ユダヤ系アメリカ亡命ポーランド作家 バビロン捕囚に始まるディアスポラ ユダヤ人にして”バビロンの男”は世界で異文化儀式を転々と行う内に死者との交信が可能となるが…? ユダヤ神話と…

「幻影の書」

ポール=オースター著 アメリカ作家 無声映画俳優が謎の失踪を遂げて半世紀… 家族を失った寂寞の大学講師の処方箋となった俳優と映画 彼の妻から手紙が届き俳優の生存が知らされ彼の仕事を総括した本を書き始める 小説内映画脚本・小説内伝記・現実の恋愛… …