MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-11-26 to 1 day

「大鴉の死んだ日」

一日一編 アメリカ怪談集 ヘンリー=アルフレッド=ルイス著 カウボーイ→記者→作家を経てインディアン民話を参考に作った法螺話短編 大鴉・熊・鹿・巨人・馴鹿・狐・狼が擬人的寓話で登場 “火酒”を巡り大鴉の珍妙滑稽な冒険が繰り広げられる様は何処か「やし…

「自動車の世界史」

“自動車は国家なり” 国防・運輸・エネルギー・IT・インフラ・派生産業・軍事・芸術・スポーツ… 400兆円市場の世界最大産業にして常に最先端技術が搭載される自動車の歴史 欧州→米国→日本→中国の覇権の変遷 現在世界シェア3割の日本車の歴史 CASEやEVなど自動…

「すべての見えない光」

アンソニー=ドーア著 アメリカ作家 ピュリッツァー賞受賞作 光は速さ 光は重さ 光は物質 故に”全ての光は見えない” 第二次世界大戦下サン・マロ 盲目のフランス少女の感じる”光景” ナチ党ラジオ修理係のドイツ少年の感じる”音声” 迫るノルマンディー上陸作…

「忌まれた家」

一日一編 アメリカ怪談集 ハワード=フィリップス=ラヴクラフト著 クトゥルフ神話創設者にして近代怪奇幻想小説の立役者 歴史が浅いアメリカ独特の科学・宗教・開拓史・先住民・文学をミックスした妙編 宇宙から地殻 過去から未来 時空間に広い設定を当時の…

「古衣裳のロマンス」

一日一編 アメリカ怪談集 ヘンリー=ジェイムズ著 古名家の遺品が鬼気迫る緻密な心理ホラー 古衣裳好きが昂じて結婚式で妹の旦那や遺産にまで手を出す姉だが…? 細部の設定は「ある婦人の肖像」や「ワシントン・スクエア」に似ており大部の本筋は「ねじの回…

「牧師の黒いヴェール」

一日一編 アメリカ怪談集 ナサニエル=ホーソーン著 篤信で敬虔なクリスチャンで有名な街の牧師 しかし彼は常に黒いヴェールで顔を隠し目と顎以外は誰も見たことがないため尊敬と同時に不気味がられてもいた 臨命終時に文字通り墓場まで持ち込んだヴェールに…

「アミナ」

賀淑芳著 マレーシア作家 11短編集 ブミプトラ政策 華僑7%の国の露骨な民族別政策 マレー人国家イスラム社会の更に華僑女性という少数派の日常にて強いられる数多ある国家の枷 マイノリティ・途上国社会・フェミニズム・宗教・性差・教育・人種・国境… 静か…

「ドイツ怪談集」総書評

流石グリム童話やメルヘン話の母国だけあり大人にも子供にも訓戒を揶揄する短編が多い 心理描写が少ない分1話が短くテーマもシンプル 中世ペスト・三十年戦争・世界大戦と全体的に暗い歴史の闇も日常に溶け込み生活に滲み東欧・スイス・ウィーン出身ドイツ語…

「写真」

一日一編 ドイツ怪談集 フランツ=ホーラー著 スイス生まれドイツ育ちの児童作家 僅か5Pながら切迫する恐怖と焦燥を押し付けてくる短編 親の結婚式の写真で知らない謎の男を見つけたので焼増の際に確認すると家族の誰も知らなかった 彼にしか見えない男は写…

「ものいう髑髏」

一日一編 ドイツ怪談集 ヘルベルト=マイヤー著 ブラックユーモア×シニカルコメディ×リアルホラー 死人に口無し髑髏に声有り 飾ってあった偉人の髑髏が喋った! 時にお告げ! 時に説教! 時に教訓! 時に与太話! 時に愚痴り合い! 時に井戸端会議! そして…

「イスラム再訪 下」

ポストコロニアリズム作家らしく帝国主義の功罪や因果を分析 訪問国はいずれもイスラム主義に囚われ近代方できていないと両断 インドネシア:人材投資不足指摘 イラン:イラン革命批判 パキスタン:過剰なインド意識で貧困化 マレーシア:華僑との経済格差とブミ…

「イスラム再訪 上」

ヴァディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著 ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家 前作「イスラム紀行」で訪れたインドネシア・パキスタン・イラン・マレーシアを17年ぶりに再訪 辛口だが観察眼と表現力は舌鋒 小説家らしく個人から政治・経済・社会の…

「ブルーノの問題」

アレクサンダル=ヘモン著 ユーゴスラヴィア出身(現ボスニア)アメリカ作家 8短編集 バイリンガル作家ナボコフの作風を強く想起する様な作品群 本文より註釈や引用が多い”ゾルゲ諜報団” 殺伐とした典型的な共産主義東欧社会を描く”島” 故国喪失者の孤独を濃密…

「人類の深奥に秘められた記憶」

モハメド=ムブガル=サール著 セネガル作家 ゴンクール賞受賞作 半自伝 “仏植民地政策最大の成功国”セネガル 戦前パリを沸かすも文壇から消された黒人作家 ー現代ー セネガルの若手作家は彼を再発見し調べるうち世界史・世界文学史・文化人類学の闇を目の当…

「怪談」

一日一編 ドイツ怪談集 マリー=ルイーゼ=カシュニッツ著 怪談語りが怪談になる 夫ともに当時の世界都市ロンドンで近代文明を目撃する妻 社交界に戯れる中で先日死んだ若い隣人夫妻が何故か脳裏に過る 怪談を語り思い出す中で進その夫妻の跡を辿るように彼…

「三位一体亭」

一日一編 ドイツ怪談集 オスカル=パニッツァ著 イタリア人の父とフランス人の父を持つドイツ人 赤子を望む余り畸形児を産んだグリム童話がある 三位一体”神=父=子” マグダラのマリアを想起する”ユダヤ女” 父親不詳の謎の美少年 世話係の過保護老父 そこに宿…