MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-09-20 to 1 day

「貝に続く場所にて」

石沢麻衣著 芥川賞受賞作 東日本大震災から9年 コロナ禍の大学都市ゲッティンゲン 同じく東北の大学で美術専攻で震災後行方不明になった友人の霊が私の元に現れる プルーストは紅茶にマドレーヌ(貝殻)を浸して記憶を確かめた 本作も東北と震災の”貝に続く場…

「われらが歌う時 下」

リチャード=パワーズ著 アメリカ作家 刹那で永遠で科学で理論で感情で知性で文化で芸術である音楽 音楽は無力で美しい だからこそ政治と金に利用される 個の人間の運命でしかないミクロな家族史から奴隷制に端を発すマクロなアメリカ史の闇への鎮魂歌 成長…

「われらが歌う時 上」

リチャード=パワーズ著 アメリカ作家 黒人×ユダヤ人2世代50年のサーガ 公民権運動で恋に落ちたマイノリティ同士の父母 人種に苦しむ子供達 父:物理学者 母:歌手 兄:天才歌手 弟:ピアニスト 妹:音楽家→黒人運動家 その歌声は全米を揺るがした 2度と戻らない…

「砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選」

24短編集 イスラエル作家・民話アンソロジー ノーベル賞作家からアラブ系イスラエル作家まで収録 戦後に世界各国から知的水準の高い移住者が集まったため聖書伝説や民話を含む非常に国際色豊かな作品が目白押し 個別の作者と作品紹介も充実しており素晴らし…

「父親になる男」

一日一編 20世紀アメリカ文学短編選 ソール=ベロー著 妻が妊娠しもうすぐ父親になる男 買い出し中すれ違う男の子を見て自身も父となる実感と仕事や家庭の不可測な未来を想像する 帰宅するや対照的に能天気な妻の仕草や言動に苛ついてしまう 心情と行動の一…