MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-08-01 to 1 month

「酸っぱいブドウ/はりねずみ」

ザカリーヤ=ターミル著シリア作家連作短編の2中編ダマスカスを舞台にシリアの日常と伝統の持つ苦悩が伝わってくる街に蔓延る暴力から千一夜物語の伝説まで幅広い空間と多様な人物で喧騒のダマスカスが浮かび上がる構造シリアの政治的混乱や生活苦を寓話で暗…

「ペインティッドバード」

イェジー=コシンスキ著ポーランド作家ペンキを被った鳥は仲間からリンチに遭うという6歳児が目にする悍ましきモノクロの世界膣に瓶を詰め蹴り割り子宮で硝子が砕け散る虱と鼠と蠅が集る肉が御馳走差別強姦輪姦拷問は日常茶飯事ホロコーストはユダヤ虐殺だけ…

「遅咲きの男」

莫言著中国ノーベル賞作家12中短編集落語的な面白さ農村生活がメイン村が急激にIT化する“明眸皓歯”がお勧め“左鎌”“遅咲きの男”“偏屈者”“消えた財布”“モーゼを待ちつつ”“詩人キンシプー”“従弟寧賽葉”“地主の目つき”“大浴場 赤ベッド”“天下太平”“明眸皓歯”“松…

「波」

ヴァージニア=ウルフ著イギリス作家電波重力波熱波光波音波全ての物理運動は波が形作る記憶も電気信号の波繊細に揺り揺られ寄せては心に留まらず引いては世界に留まる夜明けから日没の太陽が眩しい海に打瀬する男女6人の交わる独白美しい自然と潮汐する想い…

「オスカー=ワオの短く凄まじい人生」

ジュノ=ディアス著ドミニカ共和国作家現代最大の独裁者トルヒーヨ漫画アニメ文学RPG神話と英語+西語の混淆する魔術的リアリズム超肥満オタクのピュア童貞処女姦通が趣味の大統領“フク”に呪われた一族の女魔手に抗う3人の女とオタクの”短く凄まじい人生” ピ…

「見えざる神々の島」

ベン=オクリ著ナイジェリア作家“まず初めに光あれ”聖書冒頭の通り往々にして光は”神々しい”時代も国も不明な場所で”見えない存在になった男”“見えない”理由を探す内に”見える”ことの本質を知るあるがままのものそれがものの力我々がそうであると考える全て…

「ガルシア=マルケス 東欧を行く」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著ノーベル賞コロンビア作家元記者の著者による東欧ルポまだベルリンの壁もない1957年抵抗運動を続けるポーランド抵抗を諦めたチェコスロヴァキア東西で通貨価値が10倍あるドイツ今は亡き時代を透徹した文章と観察で記録する

「人間失格」

太宰治著衝撃の半自伝これを書けたが最後もう著者が死ぬイメージ以外が浮かばないし実際直後に自殺した幼少より自分を隠し道化てきた著者麻薬・酒・借金・自殺・情慾・賭博読後に気付けば自分とは対極の人間のはずなのに同情し世間へと憤怒する自分がいたそ…

「ぼくらが女性を愛する理由」

ミルチャ=カルタレスク著ルーマニア作家“どうして女性はこんなにも愛おしいのだろうか?”その仕草も唇も乳房も心も我々は愛してやまない女性に感じる心境を繊細に丁寧に描く連作短編日常に潜む小さな愛とすれ違いの物語共産党支配下の愛を謳うクンデラ作品…

「高地文明」

culture(文明)ラテン語源でcultura(耕す)アマゾン河に文明圏は生れていないインダス文明も大河でなくモンスーンの降雨が文明源メキシコアンデスチベットエチオピア作地面積が少ない高地文明は農業技術で補ったコーヒーや馬鈴薯など100品種の開発に成功した”…