MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-08-01 to 1 day

「蛇の言葉を話した男」

アンドルス=キヴィラフク著エストニア作家“蛇の道は蛇に聞け”蛇に話したい事は実に多い村を守り共生した蛇と蛇語時を経て唯一の蛇語話者となった少年宗教化に抗い鍵と番人を探し蛇神”サラマンドル”に逢う旅へ近代的退廃と古代的郷愁をエストニア史に絡めた…

「疫病神」

莫言著中国ノーベル賞作家11短編集いつも通り著者の体験や共産党のタブーに切り込む農村幻覚的リアリズムがメイン黒孩子・標準語問題・LGBTをいち早く扱った斬新な短編も収録“嫁が飛んだ!”“石臼”“指枷”“月光斬”“普通話”“花藍閣炎上”“宝塔”“命”“母の涙”“疫病…

「土にまみれた旗」

ウィリアム=フォークナー著ノーベル賞アメリカ作家ヨクナパトーファサーガ始まりの書“古き良き南部”南部搾取を美化した北部は星条旗という”土にまみれた旗”を翳したサートリス家とベンボウ家故郷と戦場の暴力を知った帰還爆撃兵の黒人歴史から現代へ向かう…

「黄色い日傘の娘」

ウダイ=プラカーシ著インド作家2000年も続きガンディーすら暗黙せざるを得なかったカースト制度デカン高原の大学を舞台にバラモンとアウトカーストの身分違いの恋黄色い日傘の娘に憧れヒンディー語科に転入するも因習が邪魔をする体制に抗議し駆け落ちした2…

「スムヒの大冒険」

アモス=オズ著イスラエル作家自民族ユダヤは勿論パレスチナ含めた”中東の平和”の提唱者建国直後のエルサレムに住む少年スムヒ中東戦争前のイギリス三枚舌外交に憤る時代祖父がくれた当時貴重な自転車街中を縦横無尽それはヒマラヤ越えとアフリカ縦断に値す…

「ネパール人の暮らしと政治」

世界最強グルカ高山兵英領インド征服に寄与した近代ネパール最近まで摂政ラナ家の牛耳る独裁パンチャーヤト制から民主主義に移行”風刺芸人”ネパール語の痛烈な政治風刺で国政を変えたイギリスなど風刺文化が強い国は政治も逞しいネパール人に根付く政治文化…

「グランドマザーズ」

ドリス=レッシング著ノーベル賞イギリス作家4中短編全て長編並の密度“グランドマザーズ”半サーガ的な幼馴染の泥沼恋愛と破局“ヴィクトリアの運命”黒人少女と上流層の瑞々しい恋“最後の賢者”SF界の民主政vs衆愚政“愛の結晶”第二次大戦援兵の航海〜戦争のリア…

「酸っぱいブドウ/はりねずみ」

ザカリーヤ=ターミル著シリア作家連作短編の2中編ダマスカスを舞台にシリアの日常と伝統の持つ苦悩が伝わってくる街に蔓延る暴力から千一夜物語の伝説まで幅広い空間と多様な人物で喧騒のダマスカスが浮かび上がる構造シリアの政治的混乱や生活苦を寓話で暗…

「ペインティッドバード」

イェジー=コシンスキ著ポーランド作家ペンキを被った鳥は仲間からリンチに遭うという6歳児が目にする悍ましきモノクロの世界膣に瓶を詰め蹴り割り子宮で硝子が砕け散る虱と鼠と蠅が集る肉が御馳走差別強姦輪姦拷問は日常茶飯事ホロコーストはユダヤ虐殺だけ…

「遅咲きの男」

莫言著中国ノーベル賞作家12中短編集落語的な面白さ農村生活がメイン村が急激にIT化する“明眸皓歯”がお勧め“左鎌”“遅咲きの男”“偏屈者”“消えた財布”“モーゼを待ちつつ”“詩人キンシプー”“従弟寧賽葉”“地主の目つき”“大浴場 赤ベッド”“天下太平”“明眸皓歯”“松…

「波」

ヴァージニア=ウルフ著イギリス作家電波重力波熱波光波音波全ての物理運動は波が形作る記憶も電気信号の波繊細に揺り揺られ寄せては心に留まらず引いては世界に留まる夜明けから日没の太陽が眩しい海に打瀬する男女6人の交わる独白美しい自然と潮汐する想い…

「オスカー=ワオの短く凄まじい人生」

ジュノ=ディアス著ドミニカ共和国作家現代最大の独裁者トルヒーヨ漫画アニメ文学RPG神話と英語+西語の混淆する魔術的リアリズム超肥満オタクのピュア童貞処女姦通が趣味の大統領“フク”に呪われた一族の女魔手に抗う3人の女とオタクの”短く凄まじい人生” ピ…

「見えざる神々の島」

ベン=オクリ著ナイジェリア作家“まず初めに光あれ”聖書冒頭の通り往々にして光は”神々しい”時代も国も不明な場所で”見えない存在になった男”“見えない”理由を探す内に”見える”ことの本質を知るあるがままのものそれがものの力我々がそうであると考える全て…

「ガルシア=マルケス 東欧を行く」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著ノーベル賞コロンビア作家元記者の著者による東欧ルポまだベルリンの壁もない1957年抵抗運動を続けるポーランド抵抗を諦めたチェコスロヴァキア東西で通貨価値が10倍あるドイツ今は亡き時代を透徹した文章と観察で記録する

「人間失格」

太宰治著衝撃の半自伝これを書けたが最後もう著者が死ぬイメージ以外が浮かばないし実際直後に自殺した幼少より自分を隠し道化てきた著者麻薬・酒・借金・自殺・情慾・賭博読後に気付けば自分とは対極の人間のはずなのに同情し世間へと憤怒する自分がいたそ…

「ぼくらが女性を愛する理由」

ミルチャ=カルタレスク著ルーマニア作家“どうして女性はこんなにも愛おしいのだろうか?”その仕草も唇も乳房も心も我々は愛してやまない女性に感じる心境を繊細に丁寧に描く連作短編日常に潜む小さな愛とすれ違いの物語共産党支配下の愛を謳うクンデラ作品…

「高地文明」

culture(文明)ラテン語源でcultura(耕す)アマゾン河に文明圏は生れていないインダス文明も大河でなくモンスーンの降雨が文明源メキシコアンデスチベットエチオピア作地面積が少ない高地文明は農業技術で補ったコーヒーや馬鈴薯など100品種の開発に成功した”…