MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-06-03 to 1 day

「中国の歴史3 ファーストエンペラーの遺産」

ー時は紀元前ー蒙恬蒙武王翦桓騎呂不韋昌文君李牧「キングダム」でお馴染みだが全員実在の人物そして始皇帝嬴政“中華(中夏)統一”僅か15年の秦が中国史上最長440年の漢を生んだローマと異なり以後2000年を紡ぐ始皇帝の遺産”中華”2大帝国の実像

「サイラス=マーナー」

ジョージ=エリオット著 イギリス女性作家ヴィクトリア朝を代表する作家人間にも神にも運命にも裏切られ故郷を離れ細々と機織り生活を営むサイラス金貨を眺めが生き甲斐その小さな幸せも失った埋められぬ孤独者は生め捨てられた孤児と出会う愛と幸せの意味を…

「JR上野駅公園口」

柳美里著2020年度全米図書賞受賞悲しい話だっただが現実だホームレス誰もが目を背け誰もが目を凝らす日本に物乞いはいない誰も与えないからだ悩めるとは幸せだ彼等は悩む事も許されない友も職も家も失った東日本大震災故郷も失った今日もJR上野駅公園口は人…

「板垣退助」

“板垣死すとも自由は死せず”板垣退助幼名:猪之助軍師として日光を救い土佐名士として征韓論を訴え洋行としてユゴーやスペンサーに学び論客として自由民権運動を起こし政党として大衆を率い大臣として大隈と組んだ初志貫徹の生き様は正に猪突猛進!猪突猛進!…

「夢の中の夢」

アントニオ=タブッキ著 イタリア作家エーコやカルヴィーノに並ぶ現代イタリア作家ローマ人やイタリア人中心に各界巨匠の一生・業績を一夜の夢に詰め込んだ夢の夢による夢のための短編集夢は現代文学最大のテーマ偉人達が見たであろう夢を想像するのが楽しい…

「ハリネズミの願い」

トーン=テレヘン著ロシア系オランダ作家兼医者内気で優しいハリネズミの願いは誕生日を機に他の動物と仲良くなることでも背中の針を怖がられたらどうしよう、、?何度も想像しては落ち込む日々温かな語りと情緒と個性豊かな動物達を最大限に活かして可愛さ…

「アラビアの夜の種族 III」

古川日出男著無敵の騎兵団マムルークvs最強の近代軍ナポレオンなす術なく散るマムルーク意外と読書人なナポレオンに”災厄の書”は届くのか?一方”アラビアの夜の種族”達は交叉し佳境を迎えるそしてナポレオンの前に立ちはだかる男の正体とは?推理大賞受賞作…

「アラビアの夜の種族 II」

古川日出男著迫り来るナポレオン智将アイユーブは「千一夜物語」よろしく不思議なアラビア奇譚の作成に取り掛かる蟒蛇神降臨魔術師アーダムその孤児ファラー・サフィアーンの剣術修行貴重なイスラム化直後のエジプト期木乃伊や錬金術も登場そしてアラビアの…

「アラビアの夜の種族 I」

古川日出男著オスマン帝国ミスル州都カイロ(アル=カーヒラ)1798.7.19 ピラミッドの戦いナポレオン=ボナパルト立つ近代兵器に震える政府の平和交渉策は史上空前の書物”災厄の書”贈呈での撤退勧告咄嗟の嘘だが無ければ作れ果たして完成は間に合うのか?千夜…

「侍女の物語」

マーガレット=アトウッド著カナダ作家少子化対策で女性がエリートの生殖マシン”侍女”となったギレアデ共和国彼女は脱出を試みるが…?女性には愛も文字も夢も与えられない”リアル過ぎるSF小説”権力と性は目でも数字でも測れないアトウッド特有の”盲目”概念が…

「アフリカの小さな国」

象牙海岸”Côte d'Ivoire”即ちコートジボワールダホメ王国と共に奴隷貿易と金・象牙輸出で繁栄した黒人国家移民先ハイチのブードゥー教を生んだ豊かな西アフリカで1年暮らした著者のルポ西・中部アフリカは地球の歩き方も未発刊の正に秘境途上国の男権社会が…

「かもめのジョナサン」

リチャード=バック著 アメリカ作家食うためではなく飛ぶために生きる孤陋のかもめジョナサンやがて異常者として群れを追放されるやがて世界最速のかもめとなり再び仲間と尊敬を集めていくサン=テグジュペリ宜しく飛行家経験が力強い表現を生む効率優先の資…

「賢者ナータン」

ゴットホルト=エフライム=レッシング著ドイツ思想家 18世紀の教劇アイユーブ朝サラディン治世3宗教の聖地イェルサレム現代中東と真逆に宗教優劣論を不毛と捉えた賢者ナータンスルタンユダヤ富豪テンプル騎士団3宗教の権威が集い語る17世紀に既にオリエンタ…

「遅い男」

ジョン=マクスウェル=クッツェー著ノーベル賞南アフリカ作家1行目に事故で片脚になる老人義足を拒み人妻の担当看護婦に恋し家族含め貢ぐ鈍く頑固な”Slow Man”肉体欠損と心理陥没若さと老い怪老婆の闖入難しい介護文学を移民や言語学など絡めた写実主義老い…

「昏き目の暗殺者 下」

マーガレット=アトウッド著 カナダ作家ヒトラー加担やストライキと釦工場破産と政略結婚に翻弄されるブルジョワ一族夫にかかる父の暗殺疑惑事故か自殺か?彼女の子の父は誰か?鍵は妹の遺した同題のSF小説イシグロの挑戦的作風ドストエフスキーの復讐劇バル…

「昏き目の暗殺者 上」

マーガレット=アトウッド著 カナダ作家 ブッカー賞&ハメット賞受賞作ノーベル賞最有力候補SF×現代カナダ史×ミステリ×ハードボイルド×恋愛×フェミニズム×戦争×サーガこれほど欲張りながら圧倒的完成度回想+記事+登場人物の小説+その小説の考察の複眼視点は正…

「アステカとインカ」

“黄金郷”エルドラード当時ヨーロッパより遥かに先進的文明を誇ったアステカとインカ両大国の王vs黄金狂と化したコンキスタドールとの闘争史カリブ海諸国に黄金が尽きたと見るや血眼で新大陸を這う”金の亡者たち”数十に及ぶ副王や総督と現地国王を地図上で操…

「悪霊 別巻”スタヴローギンの告白”異稿」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家個人的にドストエフスキー史上最高傑作と感じたしかし内容が余りに反社会的すぎて長らく検閲で削除・省略・書換と封印されてきた別巻では全体解説と検閲前の3バージョンの告白を掲載“怪人物”ス…

「悪霊 3」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家灰燼と化す街堕ちる人々急転直下で全ては”終わり”へ向かう登場人物の1/3が死ぬ衝撃反革命小説として個人と集団の心理を浮彫りにする“1割の主が9割の豚を支配すればいい”気高い思想も進歩の文明…

「悪霊 2」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家役者と欺瞞が揃いカーニバルの狂宴へ“サド的退廃カリスマ”スタブローギン“愛国者”シャートフ“至高の自殺志願者”キリーロフ“無政府主義者集団”5人組“救済僧”チーホン“孤陋の語り手”ヴェルホヴェ…

「悪霊 1」

フョードル=ミハイロヴィッチ=ドストエフスキー著 ロシア作家神の対義語は悪霊4大長編で最も壮大かつ恐怖的“もはや小説ではなく予言書”現代のテロもポピュリズムも想起させる帝政ロシア末期燻る政治矛盾過剰な革命と弾圧430Pでレーニンの封印列車の如く漸…

「幻獣の話」

100年前まで龍も麒麟も実在の生物と考えられていた“獣”の字は”毛物”起源で狩猟民族の名残り信仰と想像力が幻獣を生んだが宗教が自然を邪眼視し精霊は悪魔と化した基本は合成系の幻獣が多い因みに現在の科学力では恐竜の創生には300年ペガサスは2000年が必要…

「知っておきたい名字と家紋」

名字は東西日本で違う家紋は職・一族・身分を表現“藤”が付くと藤原系田中は村の有力者伊藤(東)は伊勢藤原氏東北は関東入植者で名字が近似鈴木は静岡で5%で熊野信仰佐藤は秋田と山形で7%織田平上総介信長与える側の天皇家に姓はない家紋普及は源頼朝の家来から

「虫めづる姫君 堤中納言物語」

作者不詳“風の谷のナウシカ”を生んだ表題作堤中納言物語より平安〜鎌倉期の十人十色恋の短編集男女が明確に別空間で生活し電話もメールもない時代不便ながらも当時ならではの告白や逢瀬で昔の色恋沙汰を情緒豊かに描く良くも悪くも訳が現代的すぎて古典の情…

「人生が変わる宇宙講座」

宇宙の生成と仕組みを初心者向けに解説この手の本は多いが基本物理法則と主要元素に1項目設けて身近さを醸している点で秀逸誕生と同時に消える反物質や反粒子“Uni”ではなく”Multi”なverse渦巻銀河”ネビュラ(星雲)”重力以外に反応しないダークマター手軽な宇…

「宝島」

ロバート=ルイス=スティーブンスン著 イギリス作家宝の地図・鸚鵡・眼帯・義足・酒・カリブ海、、YO-HO-HO...!と鼻唄が聞こえてきそうな海賊物語の古典残忍な船長冷静な医師島残しで野生化した元船員個性的なキャラと正確な地理・航海知識とスピード感のあ…

「物語 カタルーニャの歴史」

かのジョージ=オーウェルが謳った「カタロニア賛歌」“毛むくじゃら伯”ギフレ“征服王”ジャウマ2世地中海の覇者となった中世から大西洋の覇者のスペインへと統合しかし尚も独自性を保ち続けピカソやガウディを生んだ現代地中海と歩んだ”知られざる強国”の実…

「法医昆虫学者の事件簿」

“死体につく虫が犯人を告げる”地球は水でも猿でもなく虫の惑星全生物種の6割が昆虫内1.5割がハエ目つまり”死体の分解者”アメリカでは既に法廷や犯罪捜査で実用化され死亡時刻を1分単位で判定可能人体と体液の腐敗過程や蛆(蠅の幼虫)の成長を実事件を元にグロ…

「ナルニア国物語7 最後の戦い」

クライブ=ステープルス=ルイス著 イギリス作家キリスト教義に則ったナルニアにも終末論がある大円団続きだった前作が嘘かのようにナルニア滅亡が描かれる主要国・主要キャラ全登場アスランになりすまし国家転覆を図る猿彼を排してもアスランの権威と信頼は…

「ナルニア国物語6 銀の椅子」

クライブ=ステープルス=ルイス著 イギリス作家本巻は地底探検がメイン印を手掛りにカスピアン王の息子リリアンを救出せよ!改心したユースティス冷静かつ大胆な蛙パドルグラム巨人の国から地底の海へのダークな冒険銀の椅子と”地下の女王”と果たしうる約束…