MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-05-28 to 1 day

「トルコ現代史」

帝国から共和国として再出発したトルコ現代史を総括“建国の父”ケマルの西洋化“建国の英雄”イノニュの全方位外交“多党制化”メンデレスとイスラム主義復活“軍政vs民政”オザルの報われない親米“任期中GDP2倍”エルドアンの世俗主義修正とイスラム主義寛容化で彼…

「ジーキル博士とハイド氏」

ロバート=ルイス=スティーブンスン イギリス作家マッドサイエンティスト&多重人格モノの嚆矢性格も顔体も薬で180°変わるお馴染みの話意外なのはハイド氏がチビの醜男な点SNSで複数垢を持つ現代人は多重人格全盛期なのかもしれない関係ないけどhydeさん格…

「幸福は永遠に女だけのものだ」

澁澤龍彦著幸福は女性のもの自来也先生も言ってました考えれば流行は往々にして女子中高生から始まる化粧・出産・授乳確かに大変だが男性より女性しかできない経験は多い問題は男の理解不足福祉国家スウェーデンは世界で最も性に開放的で勤務中SEX休暇も取れ…

「わたしを離さないで」

カズオ=イシグロ著 ノーベル賞イギリス作家「約束のネバーランド」や「すばらしい新世界」を想起する "わたしを離さないで"、、 聞こえてくるカセットテープの歌詞特殊な環境で教育を受ける学生時代を看護師が回顧する なぜ彼らは施設で育てられたのか? 何…

「夜想曲集」

カズオ=イシグロ著 ノーベル賞イギリス作家「日の名残り」が夕方なら本作は夜(ノクターン)の音楽短編5集作風を踏襲しない実に挑戦的な作家ロック歌手に憧れた経験を存分に活用各作品とも違う国が舞台で人種も多様文物・心理とも繊細かつ上品音楽の持つ言葉…

「グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学」

主張に綺麗事が多くガンディー無関係 だが今の日本経済の論点は良く捉えている 輸出入頼みだからコロナでこんな打撃を受ける 欧韓よりマシだが今こそ内需主導の国産国消地産地消 格差拡大に対しガンディーの目指した地域主導型経済で平等を訴える

「赤と黒 下」

スタンダール著 フランス作家 左遷の度に不死鳥の様に蘇るジュリアン 遂に全パリが注目する存在に だが過去の行動が裏目に出て堕落し衝撃の結末へ 史実も交え複雑な二月革命〜七月革命期の社会を精緻 高飛車だが泣き虫 理論家だが情緒的 激情の右往左往が面…

「赤と黒 上」

スタンダール著 フランス作家 7月革命を予言 ナポレオンに憧れ農民から下克上を企むイケメン智略家ジュリアン=ソレル 家庭教師先の妻と不倫し左遷 左遷先の教会で出世を目論むも老人の嫉妬で左遷 最後は社交界1の貴婦人を虜に “ジュリアン”はラテン語で”ユ…

「日の名残り」

カズオ=イシグロ著 ノーベル賞イギリス作家 ブッカー賞受賞作 舞台はソールズベリ 哀愁漂う上品な文体 ナチに加担した没落英国紳士の前主人から米国ヤンキー主人に仕えた古き良き英国執事の回想録 女中と共にお客様のもてなしに捧げた一生 少しずつ黄昏ゆく…

「新しい人生」

オルハン=パムク著 ノーベル賞トルコ作家 題名はダンテ「新生」由来 “禁断の本”に魅せられトルコ全土を別々に旅に出る男女 近代トルコをバス旅に準え欧米化vs保守派を演出 時空間も人物も敢えて曖昧な設定で想像力が必要 トルコ史&文化を知らないと難解 村…

「千霊一霊物語」

アレクサンドル=デュマ著 フランス作家 「三銃士」で知られる著者のホラー小説 「千一夜物語」のオマージュでフランス以外にも欧州地域を舞台に数人が怪談を言い合う 注目は科学と宗教のぶつかる描写 喋る生首に吸血鬼 一方でヴォルタなど近代科学を交えた…

「青い犬の目」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著 ノーベル賞コロンビア作家 死がテーマの超短編11集 幻想文学の要素は少なく「予告された殺人の記録」と同じルポ形式 元ジャーナリストで経歴の同じヘミングウェイの文に近い 考えれば”死”は時間空間と密接に関係する その…

「スペイン=ロマネスクへの旅」

全ページカラー 実はキリスト教時代よりイスラム時代の方が長い州も多いスペイン 特に早くにレコンキスタが始まる北部はロマネスク教会が多い サンチャゴ=デ=コンポステラ巡礼者は必読 バルセロナのロマネスク美術はよく見るとピカソのキュビズムに似てい…

「ドイツの都市と生活文化」

住むならウィーン 旅ならドイツ 自然経済文化歴史文学美術音楽、、 魅力的すぎるドイツ 連邦国家ゆえ都市が個性的なドイツとウィーンを日本文化と比較分析 ドイツの国民性を学べる1冊 30年前で既に残業なし&バカンス6週間 因みにプロフ写真も欧州横断時のベ…

「ロシア その民族とこころ」

ロシア文学は面白い 実はユダヤ人やモンゴル人と多民族が活躍する小説が多い為だ ロシアを自然・文学・生活・都市・歴史・音楽と様々な視点で分析 特に文化面で各界巨匠がどの時代にも断続的に出現しているのは驚異的 独特な文化を持つお隣様国家ロシアを知…

「カメラ・オブスクーラ」

ウラジーミル=ナボコフ著 ロシア作家 虚像と実像を結ぶ機械 即ち”カメラ” “美少女取りが全盲になる”単純な筋書 家庭を捨てロリを選んだ男は金だけ毟られ少女は浮気 正に”恋は盲目” 用済みとなり盲目にされても虚に少女を追い続ける男 人はみな他人の虚実像…

「ご遺体」

イーヴリン=ウォー著 イギリス作家 静かで痛烈なブラックジョークの風刺でアメリカ文化を皮肉る ハリウッド生活から堕落しペット葬儀屋に転落する”元イギリス詩人” VS 葬儀死体の着飾りに嬉々とする中年の”遺体化粧師” 婚約者争奪に負けて逆恨みした遺体化…

「迷宮の将軍」

ガブリエル=ガルシア=マルケス著 ノーベル賞コロンビア作家 南米解放者シモン=ボリバル将軍 夢の中南米統合国家グラン=コロンビアは無念に散る 英雄ゆえの苦悩と孤独 ベネズエラに生まれナポレオンに仕え部下に分離独立され人間不信の迷宮に陥る老境の将軍…

「ハムレット Q1」

ウィリアム=シェイクスピア著 イギリス劇作家 To be or not to be, that is the question... 4大悲劇中で1番名言が多い 以前は海賊版扱いだったが現在Q1は著者の構想に最も近い貴重な資料 デンマーク王位継承の宮廷争い 弟の叛乱で死んだ父王の霊に兄が唆…