MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-05-28 to 1 day

「ミゲルストリート」

ヴィディアダハル=スラヤプラサド=ナイポール著ノーベル賞トリニダード=トバゴ作家スペイン領→イギリス領→印僑入植と陽気なカリブ海小国のインド人スラム街社会”ミゲル=ストリート”豊かだが機械的で息苦しい日本と逆な貧しさの中の夢や希望「星の王子様…

「ボートの三人男〜もちろん犬も〜」

ジェローム=K=ジェローム著 イギリス作家ヴィクトリア朝末期のユーモア小説“働きすぎの僕らには休養が必要だ!”鬱の主人公はほぼ現代人のそれロンドン〜オックスフォードをテムズ川を往復するだけの話英国紳士風のお上品なジョーク満載テムズ流域名所・文…

「横山大観」

富士山画や朦朧体で知られる”日本画の巨匠”横山大観東大卒後に西洋・中国・インドの絵画を学び独自の日本画を確立した近代の巨匠水戸藩士の尊皇攘夷志士として”西洋の衝撃”に触れた青年時代タゴールやヒトラーとも関わった老境岡倉天心に学び近代日本美術に…

「西太后」

中国史上で女帝は僅か3人中でも最長47年間も支配した”慈禧太后”こと”西太后”冷徹なまでに合理的現領土・制度・思想・文化・軍閥は彼女の時代に完成彼女さえ知れば共産党も全て理解可能正に国母康有為・同治帝・袁世凱・光緒帝と曲者達を睡蓮政治で論う没後4…

「アラビアンナイトの中の女奴隷」

イスラム女性は不自由か?否厳しい戒律も全て女性を守る為マムルーク朝建国者シャジャル=アッドゥッルは女奴隷イスラム史は奴隷建国者が非常に多い“奴隷”も西洋と異なり本来”若者”や”被扶養者”を指す語大衆文学「千一夜物語」は撥剌な女奴隷が多く活躍する

「白い病」

カレル=チャペック著 チェコ作家造語“ロボット”生みの親のチェコ作家の戯曲50歳で罹患し必ず死に至る”白い病”唯一ワクチン調合に成功した医者が戦争を”正義”と疑わぬ独裁者に提案する交換条件は”平和”医療従事者を国民を嘲笑う状況はコロナ時代と紙一重疫病…

「ボヴァリー夫人」

ギュスターヴ=フローベール著 フランス作家“19世紀の傑作”の地位を恣にする不倫破滅小説充分に裕福な家庭を持つ夫人だが刺激を求め不倫と借金に溺れゆく欲も愛も財も一線越えれば狂気の野心に変貌する徹底的な写実情景を600Pで描く浮気予備軍の彼氏/彼女に…

「東欧怪談集」

ノーベル賞作家アンドリッチ(ユーゴ)やバシェヴィス(イディッシュ)など錚々たる東欧作家の短編26集グロテスクかつ森茂る暗澹な東欧世界をドラキュラが亡霊がファウストが舞い呪い嗤う世界観・オチ・テンポなど怪談は最も作家のセンスが問われるジャンル“読め…

「忘れられた巨人」

カズオ=イシグロ著 ノーベル賞イギリス作家アーサー王伝説前後のファンタジーサクソン人のピクト人&ケルト人支配以前吐息で記憶を奪う竜退治とドラクエ的世界で子供に再会を求め旅する老夫婦旅の中で記憶と忘却の霧が晴れていくコナン君曰く真実はいつも1…

「ヘンリー=ライクロフトの私記」

ジョージ=ギッシング著 イギリス作家イギリス四季折々と共に数々の金言が光る珠玉のエッセイオックスフォード大学優等生ながら転落人生を送り小説家で大器晩成した春夏秋冬に擬え近代文明に毒された都市を憂い田舎を賛美する大英帝国全盛期の知識人の世界観…

「ヴェニスの商人」

ウィリアム=シェイクスピア著 イギリス劇作家実は同時代の先輩劇作家クリストファー=マーロウ「マルタ島のユダヤ人」を換骨奪胎彼の作品の特徴は脇役の存在感俳優ありきの劇ならでは有名なユダヤ高利貸しシャイロックは当時の人種差別を想起し著者もそこに…

「永楽帝」

習近平の政治は永楽帝に近い邪魔者は簒奪と粛清陸と海の道の国際貿易文字統制の永楽大典西欧に100年と100倍先行した鄭和の南海遠征即位後に家臣を殲滅した洪武帝即位前に一族を殲滅した永楽帝僅か4年の建文帝時代華夷秩序の理想と現実近代中国を8割完成させ…

「満洲事変 戦争と外交と」

1915.5.9 二十一ヶ条要求1931.9.18 満洲事変1937.7.7 盧溝橋事件1937.12.13 南京大虐殺中国の4大国恥記念日恥辱の始まり満洲事変の真実を外交文書+列強+中国+日本軍から探る日中戦争までは統治を拡大できた日本の外交的勝利だが引き際を見誤り連合軍と全面戦…

「神話と歴史叙述」

歴史の前段階は神話神話好きは歴史好きが多い従って神話を解けば文明の起源が分かる古今東西権力者は神の子孫を名乗り地位を正当化したが日本も同じ古代において歴史は勝者のみ書き残す古事記と日本書紀から命(尊)の文化継承と天皇誕生を考察日本史と日本語…

「江戸・東京水道史」

関東平野は広い1000前まで利根川流域まで殆どが沼沢地だった井の頭・池袋・新橋・田町・豊洲…東京の地名は水場由来が実に多い“水の都”江戸は当時世界多130万人都市明治の近代浄水場導入大正の関東大震災戦後の高層ビル水道網常に最高水準で市民の生活を支え…

「つつましい英雄」

マリオ=バルガス=リョサ著ノーベル賞ペルー作家歴史的偉人だけでないゴミ収集業者も学校の先生も世界は”つつましい英雄”が築く“彼らを蔑ろにしては国は滅びる”奇数章:脅迫に奮闘する起業家偶数章:親不孝息子から遺産を守る老社長リマとプウラを舞台に2話が…

「レヴィ=ストロース」

稀代のユダヤ系人類学者レヴィ=ストロース熱帯観察を経て物事をパーツに分解し比較する構造主義に至る悲しき熱帯野生の思考交叉いとこ婚隣接社会の類似神話トーテミズム批判構造言語学西洋は未開と嘲笑する社会が実は極めて有機的構造と論破し”西洋の未開”…

「食はイスタンブルにあり」

世界3大料理トルコ料理を歴史と調理法で解説君府の由来エステンボリン(その街へ)の如き食い倒れ天国オスマン朝その調味料に憧れ西欧は大航海時代に不十分な食提供はスルタンの馘に関わる元コックの大宰相キョプリュリュ=メフメト=パシャ貧民給食イマーレッ…

「ペルシア帝国」

アレクサンドロス帝国30年ペルシア帝国1000年四大文明の3つを初統一した実力は伊達じゃない欧米が持ち上げるペルシア戦争も田舎のデモ程度ローマもイスラムもペルシア式多民族統治の導入で成功ハカーマニシュ朝1/4アルシャク・サーサーン朝3/4現実主義国家イ…

「脂肪の塊/ロンドリ姉妹」

ギー=ド=モーパッサン著 フランス作家大絶賛の処女作”脂肪の塊”が目玉“聖水係の男”“冷たいココはいかが”“脂肪の塊”普仏戦争のドイツ占領兵の暴挙“マドモワゼル・フィフィ”ユダヤ人の狡猾さ“ローズ”有能メイドの正体“雨傘”“散歩”“ロンドリ姉妹”姉妹略奪の果…

「オルラ/オリーブ園」

ギー=ド=モーパッサン著 フランス作家男女の恋愛・性愛の違いが焦点の短編集当時タブーな離婚や機械的妊娠を積極的に扱うフェミ二ズムも垣間見える“ラテン語問題”自由愛“オルラ”孤独愛“離婚”性愛“オトー父子”家族愛“ボワテル”人種愛“港”近親愛“オリーブ園”…

「日本銀行と政治」

政府・銀行・発券・物価安定を司る日本銀行政府からの独立性が悲願だが平成では逆行速水優→福井俊彦→白川方明→黒田春彦デフレ難の平成は金融緩和不足と見るアベノミクス以前から日本経済はボロボロ金融政策は健闘したがやはり人口減少が原因で効果帳消しにな…

「オイディプス王」

ソフォクレス著 古代ギリシア劇作家アイスキュロスやエウリピデスと並ぶギリシア3大悲劇作家年に1度の劇大会で18/30優勝12/30準優勝の圧倒的実力父を殺し母と交わり盲目を選ぶ新潮文庫版も読んだがこちらの方が現代的で解説は来歴に留まる2500年前と思えない…

「すごい物理学入門」

相対性理論+量子力学+熱力学で宇宙物理学の謎に迫る簡潔でコンパクトな1冊反跳型の宇宙膨張ビッグバンと縮小ビッグクランチの関係性中性子と陽子の先の10種のクォークと星間物質の最新研究最近ボーアやアインシュタインの凄さが理解できる様になってきた気が…

「イスラームから見た世界史」

高校世界史の5割がヨーロッパ3割が中国だが有史〜1850の世界GDPはインド・中国・イスラームで8割を占めた“イスラームから見た世界史”が欠落している個人救済のキリスト教社会救済のイスラーム教派・経済・王朝のイスラーム世界を概観特に成立〜正統カリフに…

「真夜中の子供たち 下」

サルマン=ラシュディ著 インド作家超能力者ゆえ迫害や記憶喪失に遭う”真夜中の子供たち”聖書や千一夜物語にペルシア神話の引用も散見されインドの多様性を表現前半は反英闘争中心後半はパディー政権批判勉強して臨んだが難し過ぎたので再挑戦したい

「真夜中の子供たち 上」

サルマン=ラシュディ著 インド作家 ブッカー賞の中のブッカー賞"Best of ブッカー賞"に選出反イスラムの別著で暗殺予告もされている「百年の孤独」以来の衝撃と謳われた親子孫3代の一族絵巻1947.8.15 印パ分離独立その1時間以内に生まれた超能力者”真夜中の…

「ゼロからわかるインド神話」

インド神話入門インド共和国正式国名バーラタ共和国マハー(偉大)バーラタ(バーラタ族)“マハ(偉大)トマ(魂)”ガンディー神は総数3億に上るがマハーバーラタとラーマーヤナが軸次世代は米vs中vs印が覇権を争うABC三国志時代が来ると予想A(merica)B(harata)C(hin…

「老いぼれグリンゴ」

カルロス=フエンテス著 メキシコ作家メキシコ革命が舞台の反米小説“グリンゴ”はアメリカ人への蔑称主人公は”悪魔の辞典”で有名な失踪した米作家アンブローズ=ビアス革命家ビリャと将軍と米国女性の複眼露骨なメキシコ侵略と反米革命の過程が描かれる死と生…

「うたかたの日々」

ボリス=ヴィアン著 フランス作家シュールレアリスム文学サルトル実存主義が散見する水道から鰻が出たりドアの肩がキスしたり不思議な”超現実空間”に最初こそ戸惑うが慣れれば漫画の様に読める内容はカップルの出会いから女性の肺に睡蓮が育つ病に侵される話…