MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

「蹴りたい背中」

綿谷りさ著 芥川賞受賞作(最年少19歳) 孤独な女子高生は同じく友達のいないドルオタの男子校生に惹かれる 学校は孤独を許さず適応を求め同調で洗脳し妥協を強いる “このもの哀しく丸まった無防備な背中を蹴りたい” サガン悲しみよこんにちは」や欅坂46の楽曲がシンクロする気がした

「ペスト」

アルベール=カミュノーベル賞フランス作家 再読(前回は岩波) アルジェリア第2の都市オラン 突然のペスト流行に発狂する人々の不条理を描く代表作 都市封鎖・フェイクニュース・終末論・科学の敗北 小さな牌の醜い奪い合いと短絡的思考 複雑な文明が単細胞の前にかくも脆く崩れ去る皮肉

「北アフリカ・イスラーム主義運動の歴史」

共和国のチュニジア 民主人民共和国のアルジェリア 王国のモロッコ マグリブ3国の近代イスラーム主義運動史概観 観光地化vsアラブの春 西洋派vs原理主義派 世俗vs聖俗 メッカから最も遠く元来ムラービト(修道士)やムワッヒド(唯一神信仰)が国家形成してきた

「リオリエント」

【Orient】東洋/輝く/始動/東に向ける/真珠/適応する 1800年代までインドと中国で世界GDPの66%を擁しアジアが80%を占めた ヨーロッパはアジア経済の切符を買うだけで精一杯ゆえ奴隷制が肥大化した 貿易品比較・生産性・土地制・都市化率を緻密な数字でアジアが勝ると膨大な資料で説明

「中陰の花」

玄侑宗久(僧名)著 2中編 “中陰の花” 芥川賞受賞作 人は死ぬ時に体重が僅かに軽くなる 魂=原子核=幽体移動? 現役臨済宗僧侶が描く生死の間”中陰”の文学的臨死体験朝顔の音” 不倫する男女 女は流産の過去を男は妻帯の現実を隠し合う 2作とも植物の比喩が仏教的 科学と宗教の愛憎なのか?

「出会いはいつも八月」

ガブリエル=ガルシア=マルケスノーベル賞コロンビア作家 未完の遺作 マルケスラテンアメリカ文学であると同時にカリブ文学でもある 晩年の認知症で綻びは多々散見するが魅力的な設定 母の墓がある島に年1で訪れる富裕層中年女性 不倫夫同様に違う男に毎年抱かれるが…?

「太陽の季節」

石原慎太郎著 元東京都知事 5中編 芥川賞受賞作 “太陽の季節” “灰色の教室” “処刑の部屋” “ヨットと少年” “黒い水” 全作とも日本版ビート文学と言える立ち位置 ヨットやボクシングの肉体礼賛と女性に暴力的でマチズモ極まる若さが滾る ギラつく太陽に青春が身も心も焦がされていく作品