MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

「静寂の荒野」

ダイアン=クック著
アメリカ作家
ブッカー賞最終候補
環境破壊で人類生存圏が都市のみとなった近未来
”未知の荒野”に自然治癒を求める都市病患者の娘とその母のサバイバル記録
自然も動物も人間も情け容赦ない世界
特に資源と経済の欠如がそれらを助長することを改めて考えさせられる

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「ロンドその他の三面記事」

ジャン=マリ=ギュスターヴ=ル=クレジオ著
ノーベル賞フランス作家
11短編集
文明批判が主軸
“ロンド”
“モロク”
“脱走者”
“アリアーヌ”
“オロール荘”
“アンヌの遊び”
“気ままな生活”
“越境手引人”
“泥棒よ…泥棒よ…お前の生活はどんなもの?”
オルランド
ダヴィド”

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この辺りで著者は「調書」以来の作品スタイルを変えていく

従来の近代文明に辟易した若年男性の主人公から少年少女・老人・外国人にシフト

詩的音楽的作家→絵画映画的作風もミックス

南仏ニース中心の作品世界→世界各国のグローバルな舞台を題材に

いずれにせよ近現代文明批判は根底に潜んでいる

マーガレット=アトウッド全29冊読破記念総書評

長編・短編・詩・評論・芸術・科学・古典・SF・環境・フェミ…
多才かつ全て一級品
ブッカー賞も2度受賞
個人的にも存命の現代作家の頂点と思っている
母国カナダと隣の超大国アメリカの近未来を透徹する”サバイバルの作家”
絶版も多いが推奨したい作家

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以下個人的ランキング

1.「昏き目の暗殺者」
2.「誓願
3.「侍女の物語
4.「獄中シェイクスピア劇団」
5.「洪水の年」
6.「またの名をグレイス」
7.「キャッツアイ」
8.「ペネロピアド」
9.「食べられる女」
10.「寝盗る女」
11.「オリクスとクレイク」
12.「浮かび上がる」
13.「負債と報い」

14.「テント」
15.「ダンシングガールズ」
16.「良い骨たち+簡単な殺人」
17.「死者との交渉」
18.「スザナ・ムーディーの日記」
19.「パワーポリティクス」
20.「サークルゲーム
21.「カンバセーション」
22.「青ひげの卵」
23.「ほんとうの物語」

評論

マーガレット・アトウッドのサバイバル」
マーガレット・アトウッド論」

「このサンドイッチ マヨネーズ忘れてる/ハプワース16 1924年」

ジェローム=デビッド=サリンジャー
アメリカ作家
8短編1中編集
ホールデンが主人公の前半6短編が見所
“ハプワース16 1924年
100Pの手紙に7歳児が書いたとは思えぬ世界文学・宗教・文化論の書き散らし
最も著者らしくない哲学的作品

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収録作
“マディソン・アヴェニューのはずれでのささいな抵抗”
“ぼくはちょっとおかしい”
“最後の休暇の最後の日”
“フランスにて”
“このサンドイッチ マヨネーズ忘れてる”
“他人”
“若者たち”
“ロイス・タゲットのロングデビュー”
“ハプワース16 1924年

「死者との交渉」

マーガレット=アトウッド著
カナダ作家
ケンブリッジ大学エンプソン講演で語った”作家と著作論”
当代随一の世界的作家たる社会への義務感と読者への問い掛け
冥界へ降り帰還するギリシア神話の死者の英雄アエネイアス
歴史神話を引き合いに英米カナダ文学や詩の可能性と伝統を論じる

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「現れる存在-脳と身体と世界の再統合」

哲学は自然科学や脳科学の発展で新たなステージを迎えている
とりわけ人工知能の”認知科学”分野で特に再注目を浴びている
ロボットやAIが人間的思考を如何に情報処理し感情化・理論化させるかを分析
AI時代にも”現れる存在”を受け入れる倫理道徳的準備が必要だ

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「アメリカの鳥」

メアリー=マッカーシー
アメリカ作家
拝啓Peter
君はこの本の主人公で作者自身
Paris-Roma-NYを飛ぶ”渡り鳥”
私と君は似てるね
母は音楽が得意だし学生時代にベトナム戦争の傷跡も見たし「永遠平和のために」も読んだよ
いつか話してみたいな
きっと仲良くなれると思うんだ
またね

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池澤夏樹の主人公ピーターへの素敵な手紙形式の書評を真似した笑

サリンジャー
ケルアック
モリスン
アメリカ青年文学の名作は”逃げる男と戦う女”が特徴
しかし本書は例外的に”戦う男”が主人公
56ヶ国を歩いた学生時代に彼と同じ事を思索した過去があるし政治への関心も高い
だから彼にとても共感した

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