MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-02-01 to 1 month

「フランス憲法」

一日一カ国一憲法 世界憲法集 起草年:1791年 起草者:国民議会 修正回数:27回 理念:自由・平等・博愛(=三色旗) 統治体制:大統領共和制 地方自治:強 管轄:司法専門裁判機関 契機:フランス革命 人権保護:強 宗教分離法:ライシテ 特徴:海外県独自法/環境保護法 …

「シャモタ氏の恋人」

一日一編 東欧怪談集 シュテファン=グラビンスキ著 オーストリア=ハンガリー帝国ポーランド作家 “ポーランド古典ホラーの父”による王道デカダンゴシック 社交界最高の美女を愛人に持ち毎晩激しく求め合う冴えない男 当然それは妄想なのだが女の正体は果た…

「韓国憲法」

一日一カ国一憲法 世界憲法集 起草年:1948年 起草者:兪鎮午 修正回数:9回 統治体制:大統領制(任期後弾劾多) 地方自治:弱 管轄:大法院→憲法裁判所(軍事政権で一時廃止後復活) 契機:独立 人権保護:弱→強 特徴:4大義務(国防/納税/教育/勤労) 備考:開発独裁→軍事…

「不思議通り」

一日一編 東欧怪談集 フランシチェク=ミランドラ著 ポーランド詩人 「ハリー・ポッター」に登場する”必要の部屋”を想起する”不思議通り” しかし主人公はハリーと異なり自分に何が必要か分からず発狂してしまう 会話文・疑問符・3点リーダー(…)を多用して不…

「ドイツ憲法」

一日一カ国一憲法 世界憲法集 起草年:1919年ヴァイマル憲法→1952年ボン基本法 起草者:西ドイツ議会 修正回数:51回 理念:ナチ時代の反省 統治体制:連邦制 地方自治:強 管轄:各州各裁判所 契機:敗戦 人権保護:強 特徴:世界初の社会権→州が基本的な法/経済/イン…

「ダンバー」

エドワード=セント=オービン著 イギリス作家 語り直しシェイクスピア名作シリーズ 「リア王」を現代のメディア王に投影した作品 王族が大企業に変わった社会 傲慢な組織が倫理崩壊を内包する点はいつの時代も変わらない 劇が元なので場面ごとのシュールな…

「現代ロシア文学入門」

現代ロシア語作家は多様だ 世界の陸地の1/8を前身のソ連は1/6をも占めた 研究者中心で編纂し未邦訳や稀邦訳の現代ロシア語文学・批評家・作家を徹底紹介 権力の対義語として 独特なアートとして 自然を謳う音楽として 真実を叫ぶルポとして 極端で壮大で多様…

「サラゴサ手稿〜第53日〜トラルバの騎士分団長の物語」

一日一編 東欧怪談集 ヤン=ポトツキ著 ポーランド大貴族・作家・民族学者・旅行家 儂は“マルタ騎士団のドン・キホーテ”! フランスからサンチャゴの聖地へ巡礼するアラゴン言語区内騎士分団長なり! 幽霊も金縛りも十字と剣で斬らば南無三!

「モスカット一族」

アイザック=バシェヴィス=シンガー著 ノーベル賞ユダヤ系アメリカ亡命ポーランド作家 ロシア領〜第二次世界大戦期ワルシャワ市ユダヤ人街 富豪モスカット一族100人4世代サーガの栄枯盛衰 国家と人種 戦争と平和 富と愛 希望と絶望 宗教と倫理 狭間で揺れる…

「カナダ憲法」

一日一カ国一憲法 世界憲法集 起草年:1867年 起草者:ヴィクトリア女王 修正回数:19回 理念:イギリスに有益な諸制度→改正 統治体制:連邦制 地方自治:強 管轄:各裁判所 契機:戦後 人権保護:強 特徴:多文化主義 有効範囲:教育/年金/税制/放送/刑法/平等権/言語…

「ラテンアメリカ怪談集」総書評

半分をボルヘス率いるラプラタ幻想文学が占める “あとがき”が冥府の収録作家による井戸端会議である点も怪談らしい粋な計らい 明確に”生と死”を意識した本家のマジックリアリズム 洒落で滑稽で憂鬱で 優しくて愛おしくて残酷で 書影同様にカラフルでモノクロ…

「ジャカランダ」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 フリオ=ラモン=リベイロ著 ペルー作家 ー“死者の眠る片隅”アヤクーチョにてー ジャカランダ茂る祖国ペルーの屋敷 夢や踊れや花景色 久しい帰省に餞を ジャカランダ 憂鬱を イギリス人とて間違える ジャカランダ 死者と征く …

「アメリカ合衆国憲法」

一日一カ国一憲法 世界憲法集 起草年:1778年 起草者:13植民地各代表 修正回数:6回 理念:個人の権利重視 統治体制:連邦制 地方自治:強 管轄:各裁判所 契機:独立 宗教保護:強 人権保護:強 特徴:三権分立の遵守 有効範囲:軍事/税制/財産権/平等権/貿易 備考: 世…

「トラクトカツィネ」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 カルロス=フエンテス著 メキシコ作家 トラクトカツィネ…1文字だけの手紙 トラクトカツィネ…歩く老婆 トラクトカツィネ…冷気屋敷 トラクトカツィネ…メキシコ皇妃 トラクトカツィネ…カプチン会士地下納骨堂 トラクトカツィネ……

「眠れ」

ヴィクトル=ペレーヴィン著 ロシア作家 10短編集 安部公房+カフカ的な短編 “倉庫Xll番の冒険と生活” “世捨て男と六本指” “中部ロシアにおける人間狼の問題” “ゴスプランの王子さま” “眠れ” “ネパール通信” “ヴェーラ・パーヴロヴナの9番目の夢” “青い火影” …

「騎兵大佐」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 エクトル=アドルフォ=ムレーナ著 アルゼンチン作家 “軍人は修道僧であり独特な臭いを放つ” 巷でとある大佐を見かけた男 戦場で騎兵に騎乗を教える役割の大佐 彼はまた”女性への騎乗”も得意だった その翌日に饐えた悪臭を放…

「ミスター・テイラー」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 アウグスト=モンテローソ著 ホンジュラス出身グアテマラ作家 世界一短い2行の小説「恐竜」で有名な作家 ミイラ取りが首狩りミイラ族に狩られてミイラになる… 辿々しい英語でお土産に野蛮な先住民の首を販売されたミスターの…

「世界憲法概論」

一日一カ国一憲法 世界憲法集 種類:社会主義型憲法or資本主義型憲法 起源:フランス革命とアメリカ独立革命によるブルジョワ保護の制限選挙 制定時期:革命・戦後・国難後に国家基軸として制定されることが多い 管轄司法:憲法裁判所or司法裁判所 基本精神:三権…

一日一カ国一憲法

一日一カ国一憲法 世界憲法集 読書とは無関係だが自公政権が進める憲法改悪に危機感がある HP内容を見ると最大限拡大解釈すれば人権なき奴隷扱いを受けることは確実 小市民の身で何が出来るか自問し10日に渡り「世界憲法集」を読み日本と世界の憲法を比較す…

「大空の陰謀」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 アドルフォ=ビオイ=カサーレス著 アルゼンチン作家 著名作家オカンポの妻でボルヘスの盟友 飛行機テストで墜落したパイロット しかしそこはパラレルワールドだった 現実とは微妙に異なる世界に何度も飛ばされ最期は何が現実…

「文豪ナビ川端康成」

官能小説ほど難しいジャンルはない 格好つけると哲学に下品すぎると下ネタになる 抒情豊かな表意表音混成の日本語という背景もあろうが谷崎と共に世界的に見ても川端ほど多作で官能的な美文の作家は稀有 「雪国」 「眠れる美女」 「古都」 「伊豆の踊り子」 …

「アフガニスタン史」

インド・中国・イラン・パキスタン・ロシア(ソ連)・イギリスと歴代大国の緩衝地帯と係争地であり続けたアフガニスタン 峻険な高山が多言語多部族国家の受難とタリバン政権勃興までの通史を都市と民族の観点から分析 殉死した中村哲医師も大国のエゴに翻弄さ…

「波と暮らして」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 オクタビオ=パス著 ノーベル賞メキシコ詩人・作家・外交官・ジャーナリスト 先日読んだ「鷲か太陽か?」と「池澤夏樹 世界文学全集 短編コレクションI」にも収録 喜怒哀楽を伴い人間の様に振舞う波に恋した男の詩的な言葉の…

「奪われた屋敷」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 フリオ=コルタサル著 アルゼンチン作家・外交官・翻訳家 “何か”に家を奪われ続けていく兄妹 しかし小説内でその理由も論理も語られることはなく定かではない 夢?幻?幽体離脱?楽園追放寓話? 様々な読み方が可能でありその…

「ルル・オン・ザ・ブリッジ」

ポール=オースター著 アメリカ作家 “夢を失った男と夢を掴んでいく女の恋” 映画監督作品の脚本と波乱の制作秘話を俳優が語るインタビューも収録 NYでファンに撃たれキャリアを失ったサックス奏者と女優志望の女 だが出世作の顔見せに男は現れず”夢”の様な結…

「魔法の書」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 エンリケ=アンデルソン=インベル著 アルゼンチン作家 古本屋で解読不能な文字で書かれた古代書を購入した男 実はその本は煩悩を挟まず読み続けることで各国言語に変化し解読可能になる本だった 男は食料・不眠剤・目薬を買…

「断頭遊戯」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 ホセ=レサマ=リマ著 キューバ詩人・作家 中国のとある皇帝に側使えする幻術師 中でもお得意の芸は首を斬っても死なないという”断頭遊戯” 遂にその妖術で帝王と呼ばれるまでに成り上がるが…? 詩人だけあり幻想的な比喩とラ…

「大使たち 下」

”恋人の海外放浪息子を連れ戻す” 話はそれだけだが一人称のみの意識の流れで900Pもの独白が続き万華鏡の様に多様な解釈ができる 年も性別も金も関係ない 稀に“小説”ではなく”人生”を読んでいると錯覚させる本に出会うことがある 本作もその数少ない例であり…

「大使たち 上」

ヘンリー=ジェイムズ著 アメリカ出身イギリス作家 妻子を早くに失い長き孤独を生きてきた55歳の壮年富豪 アメリカにいる愛人の息子を連れ戻すため”大使”としてヨーロッパに渡りその文化と美学に魅了されていく パリで出会う洗練された美に眩み既存の価値観…

「ケリー・ギャングの真実の歴史」

ピーター=ケアリー著 オーストラリア作家 ブッカー賞受賞作 流刑植民地オーストラリア 実在のアイルランド移民ケリーの人生を遺稿の手紙から再現 貧困ゆえの軽罪で家族の庇い逮捕 出獄後も追われやがて義賊の長となり現在は国民的英雄化したギャングピカレ…