MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-02-01 to 1 day

「大空の陰謀」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 アドルフォ=ビオイ=カサーレス著 アルゼンチン作家 著名作家オカンポの妻でボルヘスの盟友 飛行機テストで墜落したパイロット しかしそこはパラレルワールドだった 現実とは微妙に異なる世界に何度も飛ばされ最期は何が現実…

「文豪ナビ川端康成」

官能小説ほど難しいジャンルはない 格好つけると哲学に下品すぎると下ネタになる 抒情豊かな表意表音混成の日本語という背景もあろうが谷崎と共に世界的に見ても川端ほど多作で官能的な美文の作家は稀有 「雪国」 「眠れる美女」 「古都」 「伊豆の踊り子」 …

「アフガニスタン史」

インド・中国・イラン・パキスタン・ロシア(ソ連)・イギリスと歴代大国の緩衝地帯と係争地であり続けたアフガニスタン 峻険な高山が多言語多部族国家の受難とタリバン政権勃興までの通史を都市と民族の観点から分析 殉死した中村哲医師も大国のエゴに翻弄さ…

「波と暮らして」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 オクタビオ=パス著 ノーベル賞メキシコ詩人・作家・外交官・ジャーナリスト 先日読んだ「鷲か太陽か?」と「池澤夏樹 世界文学全集 短編コレクションI」にも収録 喜怒哀楽を伴い人間の様に振舞う波に恋した男の詩的な言葉の…

「奪われた屋敷」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 フリオ=コルタサル著 アルゼンチン作家・外交官・翻訳家 “何か”に家を奪われ続けていく兄妹 しかし小説内でその理由も論理も語られることはなく定かではない 夢?幻?幽体離脱?楽園追放寓話? 様々な読み方が可能でありその…

「ルル・オン・ザ・ブリッジ」

ポール=オースター著 アメリカ作家 “夢を失った男と夢を掴んでいく女の恋” 映画監督作品の脚本と波乱の制作秘話を俳優が語るインタビューも収録 NYでファンに撃たれキャリアを失ったサックス奏者と女優志望の女 だが出世作の顔見せに男は現れず”夢”の様な結…

「魔法の書」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 エンリケ=アンデルソン=インベル著 アルゼンチン作家 古本屋で解読不能な文字で書かれた古代書を購入した男 実はその本は煩悩を挟まず読み続けることで各国言語に変化し解読可能になる本だった 男は食料・不眠剤・目薬を買…

「断頭遊戯」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 ホセ=レサマ=リマ著 キューバ詩人・作家 中国のとある皇帝に側使えする幻術師 中でもお得意の芸は首を斬っても死なないという”断頭遊戯” 遂にその妖術で帝王と呼ばれるまでに成り上がるが…? 詩人だけあり幻想的な比喩とラ…

「大使たち 下」

”恋人の海外放浪息子を連れ戻す” 話はそれだけだが一人称のみの意識の流れで900Pもの独白が続き万華鏡の様に多様な解釈ができる 年も性別も金も関係ない 稀に“小説”ではなく”人生”を読んでいると錯覚させる本に出会うことがある 本作もその数少ない例であり…

「大使たち 上」

ヘンリー=ジェイムズ著 アメリカ出身イギリス作家 妻子を早くに失い長き孤独を生きてきた55歳の壮年富豪 アメリカにいる愛人の息子を連れ戻すため”大使”としてヨーロッパに渡りその文化と美学に魅了されていく パリで出会う洗練された美に眩み既存の価値観…

「ケリー・ギャングの真実の歴史」

ピーター=ケアリー著 オーストラリア作家 ブッカー賞受賞作 流刑植民地オーストラリア 実在のアイルランド移民ケリーの人生を遺稿の手紙から再現 貧困ゆえの軽罪で家族の庇い逮捕 出獄後も追われやがて義賊の長となり現在は国民的英雄化したギャングピカレ…

「花のことば辞典」

四季を彩る花と草木の言葉たち 古来より詩に詠まれ季語となり衣食住や医薬祭祀にも遍く利用されてきた 虞美人草(ひなげし) 木通(あけび) 躑躅(つつじ) 杜若(かきつばた) 銀杏(いちょう) 侘助(わびすけ) 白詰草(クローバー) 蘇鉄(そてつ) … 名前の由来や歴史…

「愛のパレード」

セルヒオ=ピトル著 メキシコ作家 主人公の歴史家がある殺人事件の真実を追う擬似推理小説 世界初の社会主義革命国にして2度の大戦の大量亡命者受容で壁画運動が開花したメキシコ ゲリラ・芸術家・富豪・亡命者・記者… 有象無象の曲者と虚実不明の証言は混沌…

「極北の秘教」

ハルドール=ラクスネス著 ノーベル賞アイスランド作家 イタリア主教宇宙論×アイスランド叙事詩「サガ」×ヨーロッパ錬金術×東アジア密教×シンドバッドの冒険×天地創造×宇宙人=? 極北から北回帰線まで… 世界宗教文化とアイスランドと世界の真理の”極北”を求…

「吸血鬼」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 マヌエル=ムヒカ=ライネス著 アルゼンチン作家 吸血鬼の映画を撮るため本場ルーマニアまで向かい鋭い犬歯など吸血鬼の諸特徴を持つ男爵を抜擢した映画監督 しかし実は彼は本物の吸血鬼だった 美貌の主役女優と現場は奇怪な…

「ポルフィリア・ベルナルの日記」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 シルビナ=オカンポ著 アルゼンチン作家 夫と同じく世界的作家ビオイ=カサーレスの妻 賢くて優しい秀才少女 だが彼女の書き溜めた日記は悲劇ばかり予言する怨嗟に満ちたものだった… 利発ゆえ孤独に追い込まる強迫観念の描写…

「インド思想史」

世界で最も独特かつ複雑な宗教国インド 各時代の南北東西インド思想の誕生と発展を分析した通史 バラモン教→ヒンドゥー教への深化の流れと仏教の盛衰 南インド文化の開花とイスラム教の侵入 ムガル帝国以後の諸新宗教 インド独立前後の反帝国主義・著名人功…

「リダ・サルの鏡」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 ミゲル=アンヘル=アストゥリアス著 ノーベル賞グアテマラ作家 男に儚く恋焦がれ続ける女はある条件を引き換えに”おまじない”をかけるが…? 先住民の文化を交えたマジックリアリズム短編 ラストで鏡に閉じ込めらる女性は先住…

「リヴァイアサン」

ポール=オースター著 アメリカ作家 全米に130ある自由の女神を爆破する犯人は友人だった 精悍な彼は何故テロリストに堕ちたのか? 衝撃を受けた作家の男は密かに記憶と記録を辿ることで真相の深層を暴き出そうとする 人間の”内に見られる弱さ”と”外に見せる…

「円環の廃墟」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 ホルヘ=ルイス=ボルヘス著 アルゼンチン作家 瞬間の中の廃墟=永遠の中の廃墟? 夢幻=自我=現実? 流浪の魔術師は1人の人間を創造(労働)し想像(睡眠)する使命を持つ その構造は“メビウスの輪”或いは”ウロボロスの蛇”若く…

「彼方で」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 オラシオ=キローガ著 ウルグアイ作家 短編ばかりを書いた とある心中した恋人2人の幽霊版「ロミオとジュリエット」 短いながら主人公を深堀りしつつ余韻も残す 余計な修飾語がなく文章自体が引き締まっていて美しい ホラー短…

「火の雨」

一日一編 ラテンアメリカ怪談集 レオポルド=ルゴーネス著 アルゼンチン作家・詩人 ニカラグア詩人ルベン・ダリオが発掘→社会主義者→ファシズム傾倒→糾弾→自殺 「旧約聖書”創世記”」ソドムとゴモラの様に火の雨に包まれる街 唯一生き残った獅子と1人の男の視…

「内面からの報告書」

ポール=オースター著 アメリカ作家 人生の深層心理を地下エレベーターの様に降る内面報告 “原点の原典”エジソンとホームズ “ユダヤ系アメリカ人”であることへの問い 学生運動の記憶 脚本家の仕事 元妻で国際ブッカー賞作家リディア・デイヴィスへの手紙 集…

「冬の日誌」

ポール=オースター著 アメリカ作家 非常に細部まで再現したノンフィクション半自伝前半 限界まで記憶を遡れる5歳から大学生 大学退学から世界放浪の旅 そして作家として活躍するまでの”人生の冬期の日誌” 物語や小説構造を意識した作品ではなく記憶の整理が…