MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2024-02-19 to 1 day

「オスカーとルシンダ」

ピーター=ケアリー著 オーストラリア作家 ブッカー賞受賞作 ヴィクトリア朝オックスフォード 流刑植民地期シドニー 2国で交錯する恋とギャンブルに賭ける男女 学生→牧師のオスカー 孤児→ガラス工場経営者のルシンダ 教会・大学・資本家・家族… 植民地に投資…

「グリオの夜」

カマ=シウォール=カマンダ著 ルクセンブルク亡命コンゴ民主共和国(旧ザイール)作家 35短編集 ザイールの民話マジックリアリズムを「千一夜物語」シェヘラザード役のグリオが語る夜話 チュツオーラ「やし酒飲み」やゼウス神とほぼ同じ話がアフリカにも存在…

「蛙」

一日一編 東欧怪談集 チャート=ゲーザ著 ハンガリー作家・医者・音楽評論家 第一次世界大戦時モルヒネ中毒で妻を銃殺後に自殺 蛙は大嫌いだ どの動物も好きだが蛙は吐気がする 最も死を想起する動物なのだ 尤も恐らく理由は別にある 歯と髪を持つ蛙を斬殺し…

「親密な手紙」

大江健三郎著 日本ノーベル賞作家 世界の作家で最も尊敬する大江さん 知を守って血を去く 知を盛って恥を生く 知を持って地を征く 難解で複雑な作品世界は読者に対し”親密”とは言えない だが手紙には本心が顕れる ならば親密な手紙で吐露する言葉は真を突く…

「ドーディ」

一日一編 東欧怪談集 カリンティ=フリジェシュ著 ハンガリー作家 病床児ドーディを訪ねる死神 まず死神に魂を差し出し両親を拒否する 次に手を差し出して身体を明け渡す準備をする 最後に目・耳・鼻・口・髪を差し出し命を吹き込む するとあら不思議 “もう1…

「大江健三郎論」

執筆時32歳と自分の現年齢に近いが最も遠く感じる作品… 「万延元年のフットボール」 →”作品としての最高傑作” 執筆時74歳と自分の現年齢に遠いが最も近く感じる作品… 「水死」 →”作家としての最高傑作” 逝去された今だからこそ概論可能な”戦後民主主義者”の…

「静寂」

一日一編 東欧怪談集 ヤーン=レンチョ著 スロヴァキア作家 “静寂” ……………………………… 静寂は死であり生だ ……………………………… 静寂は人間に似ている ……………………………… 何もかもが聴こえない ……………………………… ゆえに全てが聞こえる ………………………………

「ポーランドのボクサー」

エドゥアルド=ハルフォン著 グアテマラ亡命アラブ出身ユダヤ系ポーランド作家 12連作短編集 “ユダヤ人とは何か?” “オートフィクションは如何に書かれるべきか?” “ノマド民族の音楽・文学・美術はどう受け止めるべきか?” ユダヤの歴史的真実と小説的虚実…

「この世の終わり」

一日一編 東欧怪談集 ヨゼフ=プシカーシ著 スロヴァキア作家・テレビドラマ脚本家 駅のホームで列車を待っていた男 物乞いに突如”この世の終わり”を告げられる 彼が強烈な痙攣を始めると男も幻覚に苦悶し始める 男が周りの人に起こされた時には物乞いは既に…