MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-12-20 to 1 day

「僥倖」

一日一編 イギリス怪談集 アルジャーノン=ブラックウッド著 スイスとフランスの国境を旅する牧師補 中世スイス英雄叙事詩ヴィルヘルム・テル伝説を想起する絶壁の側に佇む旅籠 恐ろしいお告げを突き付ける“メッセンジャー”の存在 幻視など不思議な体験を経…

「遺言」

一日一編 イギリス怪談集 ジョゼフ=シェリダン=レファニュ著 遺産相続で揉める没落名家 死んだ兄や父への強迫観念から狂気に至る主人は何に怯えていたのか? 不気味な狂犬の殺処分が暗示する未来 それが仮に他愛無い言葉であれ遺言は大きく人の人生を狂わ…

「真っ白いスカンクたちの館」

レイナルド=アレナス著 キューバ作家・詩人 ベンタゴニア5部作2章 視覚的内容的にも並列する語り バティスタ独裁政権→キューバ革命→カストロ共産主義政権 イデオロギーの狭間で揺れる母国で量産される有象無象の弾圧 勝者は蛆わく蠅か? 或いは激臭を放つス…

「夜明け前のセレスティーノ」

レイナルド=アレナス著 キューバ作家・詩人 ベンタゴニア5部作1章 独特なリズム・文体・改行・単語の反復で1人称語りの自意識過剰な青年 キューバの僻村で叫ぶ様に語る言葉が怒涛に連なる夜明け前のイメージの塊 斧(アチャス)を無闇に振り回すような粗暴さ…

「大仏ホテルの幽霊」

カン=ファギル著 韓国作家 朝鮮戦争後の日系洋式”大仏ホテル”には幽霊が棲むという… 宿泊者客のアメリカ作家シャーリィ・ジャクスン ヘイトを受ける華僑青年 アメリカ亡命を望む青年 新米作家の”私” ブロンテ「嵐ヶ丘」に準えた復讐の運命が交わるノンスト…

「イスタンブル・イスタンブル」

ブルハン=ソンメズ著 クルド系トルコ作家 “すべての道は第2のローマに通ず” 東西が交わる美しき古都 その地下で蠢く”山岳トルコ人”クルド人への拷問 イスタンブル版「デカメロン(十日物語)」 医師・床屋・学生・拷問後に拘置された老人 4人の語るイスタンブ…

「逝けるエドワード」

一日一編 イギリス怪談集 リチャード=ミドルトン著 韻文物語集「インゴルズビー物語」著者バラムの子孫 ホラーというより世紀末デカダン的短編 亡き息子を想う余りまだ生きていると思い込みその前提で生活する母 壊れてしまった人間の何を考えているあ分か…