MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-05-18 to 1 day

【池澤夏樹 =個人編纂 世界文学全集40作品の感想】

池澤夏樹 世界文学全集40作品の感想 作家・書評家・翻訳家にして、驚異の世界文学通の池澤夏樹。 その個人的ベスト40長編、39短編をまとめた世界文学全集を読み終えた。 「興味あるし読みたいけど、長編は長いし高いし、どれから読めばいいか分からないので…

「苦海浄土」”水俣3部作”読破記念総書評

疫災は即ち人災であるそれを知っていたからカミュは「ペスト」を書いたならばその上位互換の公害病は”国災”といえる海の幸は苦海に変貌し黒い赤子が生を受ける浄土を願い戦い続けた全関係者に捧ぐ詩的鎮魂歌傑作という言葉では形容し足りない“奇跡の書物”と…

「天の魚」

石牟礼道子著“苦海浄土”水俣3部作3章天が魚を恵む豊饒の海街”水俣”水俣病確認から15年また1人と斃れゆく仲間を弔う公害病との長き戦いは文明と人権と国家の正当性を問う社会問題へ福島原発事故と重なるデジャヴそれでも紡ぐ浮かばれぬ魂の記録日本窒素水俣工…

「神々の村」

石牟礼道子著“苦海浄土”水俣3部作2章古き良き”神々の村”vs近代物質的”利権主義者”信じていた国に見放される水俣病患者学生やカンパを巻き込む東京本社ハンスト日本窒素株主総会での社長糾弾若き橋本龍太郎元首相への失望患者と遺族の戦いは続く苦海を素潜り…

「苦海浄土」

石牟礼道子著“苦海浄土”水俣3部作1章熊本県水俣市美しい海と漁師の街日本窒素の工場が水銀を排出し不知火の魚介とそれを食した漁師を死の病に陥れる苦しむ患者決死の工場訴訟群れるマスコミ無知で傲慢な政府同郷出身主婦の著者は憤り事件の救済を待つ市民を…

「TVピープル」

村上春樹著6短編集ゆるホラー短編が多め夢と異世界と過去など現実と非現実の間を往来する長編の足掛け練習にも読めた“TVピープル”“飛行機―あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか”“我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史”“加納クレ…

「カスパー」

ペーター=ハントケ著ノーベル賞オーストリア劇作家記号=言語を0から学ぶ主人公の実験的1人称劇A=B→B=C→故にA=C赤子の様に徐々に言語を獲得していく視点を2段組で描写上段:舞台劇会話下段:主人公心中普段いかに言語を無意識的かつ非論理的に使用し慢心してい…

「音楽家の世界」

クラシック作曲家53人66曲を解説した音楽入門書クラシックはまず単発から複数の楽器の演奏を交響曲を編み出したバッハに始まる政治・絵画・文学の潮流同様に古典派→ロマン派→国民楽派と発展複合的で巨大オペラ群の誕生神話や文学作品とのリンク人生から音楽…

「光の護衛」

チョ=ヘジン著韓国作家9短編集どの短編も素晴らしい全編とも韓国人が主人公ながら舞台や脇役は欧米を中心とする外国人(韓国小説はモダニズムとリアリズムが多いので珍しい)短編ながらウルフ的な多人称での”意識の流れ”で個人が直面する見えない歴史と権力の…

「シルクロード」

スキタイに始まる半農半牧オアシス都市国家形成東:漢と唐の西域経営とイラン文化受容西:ペルシア帝国→イスラム化→トルコ化中世:パックス・タタリカ→ティムール朝近代:ウズベク3ハン国→ロシア化と探検隊地理学・言語学的分析を軸に古代〜現代までシルクロード…