MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2023-02-07 to 1 day

「カフカの友と20の物語」

アイザック=バシェヴィス=シンガー著ノーベル賞アメリカ亡命ユダヤ系ポーランド作家カフカの友人だった俳優の語るリアルなカフカ像が面白い表題作”カフカの友”他は全作品アメリカやヨーロッパへ亡命し同化と保守伝統の複雑なユダヤ家庭を描くラビや聖書の…

「一つ半の生命」

ソニー=ラブ=タンシ著コンゴ作家チュツオーラ「やし酒飲み」のエロ・グロ・ゾンビ・バイオレンス版潔い程に西洋伝統小説の基本構造を無視した架空のアフリカ新興国が舞台独裁政権とその抵抗勢力両者を惑溺する絶世の美女兵器開発に鎬を削り最終的に蝿兵器…

「暗夜」

残雪著中国作家6短編集原理不明の不条理寓話1人称形式ながら主人公が最も世界認識に欠けた”信頼できない語り手”何故か説明不可なデジャヴを感じる“阿梅”“ある太陽の日の愁い”“私のあの世界でのこと・・・友へ”“帰り道”“痕”“不思議な木の家”“世外の桃源”(“暗夜”…

「庭・灰」

ダニロ=キシュ著ユダヤ系セルビア作家半自伝幼少期アウシュヴィッツに消えた鉄道員の父その形見”バス・汽船・鉄道・飛行機交通時刻表”戦争で灰と化した故郷の森の家の庭朧な父の記憶を辿り”自身と家族の世界図”を埋めていく幻想的な子供視点と現実的な青年視点…

「リゲーア」

#一日一編2作目トマージ=ディ=ランペドゥーサ著イタリア作家古典愛好家のシチリア没落貴族(著者はヴィスコンティ映画の同題自著「山猫」家紋で有名な元貴族)趣味で歴史的骨董品蒐集する内に徐々に幻想化し人魚伝説のセイレーンが現れて短期間を共に過ごし…

「素粒子」

ミシェル=ウェルベック著フランス作家愛とは無縁のノーベル賞級の分子生物学者性に奔放な日々を送り堕落した国語教師腹違いの兄弟2人成功と失敗真逆の人生しかし2人とも近代西洋文明の齎した”道徳的退廃”と”老い”と”格差”からは逃れられない“素粒子”単位の…

「おしゃべりな家の精」

#一日一編1作目アレクサンドル=グリーン著ロシア作家昔住んでいた鴛鴦夫婦とその友人の航海者が長旅から帰還した話を家に棲む精霊が語るロシア・北欧=スラヴ・ゲルマン的=自然=妖精東西南欧=ローマ的=神話・英雄両文化をミックス昔話風だがオープンエンドな…

「池澤夏樹=個人編纂 世界文学全集 短篇コレクションI」

#一日一編読了記念総書評20短編集アジア・南北中米・アフリカの傑作アンソロジー伝統的西欧文学とは異なる“第三世界”らしい短編が多い有名作家が多く且つ個々人の個性が最大限に活きた短編を選出多種多様多国籍多階級多地域の贅沢な作品群

「面影と連れて」

#一日一編20作目目取真俊著日本(沖縄)作家太平洋戦争で県民の1/4が犠牲になった沖縄近所のおばあちゃんの様に”その時代に何が起きたのか?”を滔々と語る戦争が貧困を生む貧困が差別を生む最近でも辺野古の座り込み抗議が話題になる通り戦後80年が経っても”面…

「星の時」

クラリッセ=リスペクトル著ブラジル作家所謂”白痴”による”意識の流れ”文体の独白(フォークナー「響きと怒り」の白痴に近い)身に起こる不幸を全肯定する残酷なまでの天然難解な語はないが低知能な人間視点の語りのため読みにくい性格の純粋さから文章は儚い…

「ブラームスはお好き」

フランソワーズ=サガン著フランス作家“最後のkissは苦くて切ない煙草のflavorがした”女性デザイナー39歳純愛を捧げる美男子25歳長いこと”友達以上恋人未満”の同年代40歳上〜中流階級の”年の差男女”三角関係の略奪愛の行方スタイリッシュな文体と恋焦がれる…

「猫の首を刎ねる」

#一日一編19作目ガーダ=アル=サンマーン著レバノン作家“東洋のパリ”と呼ばれたベイルートは内戦で瓦礫の山になった原因は宗教とその伝統的価値観の衝突亡命レバノン人共同体さえ”本場のパリ”でも東西文化の差異に苦しみ結婚できないムスリム移民の難しさを…