MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

Entries from 2021-10-01 to 1 month

「弟よ 愛しき人よ-メモワール」

ジャメイカ=キンケイド著アンティグア=バーブーダ作家セックスとドラッグに溺れHIV感染した実弟を看病した著者の記録隔離医療と差別を受け里にも親にも見捨てられた弟アメリカで働きながら回復を願う著者だが…時代遅れな因習に立ち向かう壮絶なHIV差別の闘…

「自転車泥棒」

呉明益著台湾作家国際ブッカー賞最終候補作太平洋戦争×現代自転車史×家族史×アジア動植物史×台湾史台湾〜東南アジアを駆け抜けた自転車と父が失踪その記憶を辿る旅200冊の参考文献を駆使し戦争に翻弄された兵士・少数民族・象たちの激動の旅疾走する自転車と…

「だれも死なない日」

ジョゼ=サラマーゴ著ノーベル賞ポルトガル作家天国か地獄か?“だれも死なない世界”が日常になる葬儀・生保・医療・介護・政界…死が理だった社会の崩壊とパニック美しく孤独な貴婦人“大鎌と死(モルト)”とチェロ奏者との邂逅これは彼女が不死を願い神話化し眠…

「尼僧とキューピッドの弓」

多和田葉子著日本・ドイツ作家愛欲の天使“キューピッド”ギリシア語名”エロス”現代ドイツ宗教遺産の在り方とは?禁欲の象徴”尼僧修道院”に惹かれる在日本人女性弓道と情欲に生きる富豪のドイツ人男性対照的な2人を軸に聖界と俗会の諸問題を流鏑馬の如く射抜い…

「ガラスの街」

ポール=オースター著アメリカ作家NY3部作の1冊前半はミステリ後半は哲学的虐待で心を壊した男から父を尾行する依頼を受けた私立探偵名を偽り捜査を続ける中で自我も消失していく万華鏡の様に煌めく大都会は明るくても迷う迷路透き通る”ガラスの街”は個人を…

「物語 ナイジェリアの歴史」

将来4億の資源大国を嘱望されるナイジェリア中心の西アフリカ史北部イスラム王朝とビアフラ内戦南部氏族社会の搾取貿易(奴隷→カカオ・パーム油→石油)チョコもリンスも60%ここで生産600年と最も長くヨーロッパに搾取され遂に覚醒し始めた”アフリカの巨人”の実…

「左利きの女」

ペーター=ハントケ著ノーベル賞オーストリア劇作家子供と夫の温かな家庭だが我が道も生きたい主婦は別居を申し出る若者は別れの後にも出会いがあるが壮年には少ないフランス語翻訳の僅かな収入では生きられない器用な左手と不器用な生き様“左利きの女”は気…